
プロジェクト事例:AWSを中心としたマルチクラウド構成で実現した銀行ソリューション(SONAR-IC)の更改
大和総研プロジェクト
大和総研では、金融機関が投資信託を販売するためのソリューションをSONARシリーズパッケージとして提供している。これらは、これまで自社が管理するオンプレミスの基盤を利用してきた。今回、大和総研では、一般投資家が投資信託の購入を金融機関の窓口などを通さずに直接行えるインターネット取引システム(以下、SONAR-IC)を、アマゾン ウェブ サービス(以下「AWS」)を中心としたマルチクラウドで更改し、フルクラウドのシステムとして生まれ変わらせた。
課題
システムリソース共有の課題に直面
大和総研が提供するSONARシリーズパッケージは、リリース以来、投資信託窓販サービスソリューションとして多くの金融機関にご利用いただいている。オンプレミス上で構築していたSONAR-ICでは、メモリやCPUなどのシステムリソースを利用会社間で共有する仕組みとなっていたため、各利用会社に応じたリソース設定が難しく、また、利用する金融機関が増減する際には、リソースへの影響確認が必要となるなど、システムリソースの管理について課題があった。そこで数年に一度のOS更改のタイミングと併せて、パブリッククラウドを活用してクラウドシフトを行うことにより課題の解決を図った。
ソリューション
AWSを中心とするマルチクラウド構成で機能を再配置、クラウドメリットを享受
オンプレミスからパブリッククラウドに移行するにあたって、そのメリットを最大限享受するために単純に機能を移行(リフト)するのではなく、積極的にAWSが提供するマネージドサービスを活用することを念頭においた機能配置を行った。
移行前のシステムでは、一般投資家からインターネットを介した売買注文を受けつけるために、Webサーバを構築していたが、更改後は、AWSのCloudFront(※1)を活用することとした。アプリケーションサーバは、AWSで運用管理を行うマネージドのコンテナサービスである Amazon Elastic Container Service(Amazon ECS、以下ECS)(※2)と AWS Fargate(※3)(以下Fargate)を利用した。利用する金融機関ごとにコンテナは独立させ、それぞれが干渉しない構成とした。また、データベースは、当社のクラウド共通基盤の運用基盤やネットワークを最大限活用しながら、マルチクラウド構成で構築した。
(※1)AWSが提供するマネージメント型の動画などのコンテンツを配信できるコンテンツデリバリネットワーク(CDN)サービス
(※2)AWSが提供する完全マネージメント型コンテナオーケストレーションサービス
(※3)AWSが提供するコンテナ向けサーバレスコンピューティングエンジン
プロジェクトの成果
利用各社のリソース管理は柔軟に、また保守・運用にかかる管理効率も大幅に向上
プロジェクト成果について、プロジェクトでインフラ設計/開発を担当した大和総研の下川は以下を挙げる。
大和総研
システムインフラ設計部
ITインフラ・アーキテクト
下川 信彦
「今回のプロジェクトでは、クラウドシフトの方針を掲げ、AWSが提供するマネージドサービスへの乗り換えを積極的に行っています。ECSとFargateの活用によって、24時間365日のサービス提供を容易としサービスの利便性も向上できました。同時に、当初の課題であった各利用金融機関に応じたシステムリソース配分も実現し、ECSによりこれまでかかっていたリソース管理にかかる負荷を大幅に削減できました。」(下川)
今回のプロジェクトでクラウド活用に関するプロフェッショナルとして支援した2024 Japan AWS All Certifications Engineerの岸田は、モダナイゼーションへの取り組みについて以下を挙げる。
大和総研
金融フロントシステム部
アプリケーション・アーキテクト
岸田 遼
「アーキテクチャだけでなく、開発手法もモダナイズを図りました。開発やテスト、デプロイの自動化であるCI/CDを実現するためにAWS Codeシリーズを採用し、またTerraform(※4)を活用して積極的にIaC(ITインフラ構築・運用のコード化)に取り組みました。これらにより、アプリケーションやインフラの保守業務についても、作業にかかる負荷を低減でき、効率化、開発スピードの向上につながっています。」(岸田)
(※4)HashiCorp社が提供するインフラストラクチャ構成をコードとして管理するツール
今後の展望
お客様のエンゲージメント向上のため、最適なテクノロジーを採用
今後の展望について、今回のプロジェクトで開発リーダーを務めた高嶋は下記のように語る。
大和総研
金融フロントシステム部
シニアアプリケーション
アーキテクト
高嶋 和希
「特定のプラットフォームやプロダクトに縛られることなく、最適なアーキテクチャを選択できるのが大和総研の強みです。今回のプロジェクトでもAWSのECSやFargateといったマネージドサービスを中心に据えながら、AWSを中心としたマルチクラウドを採用しています。我々の強みを生かしながら、クラウド活用のメリットをお客様へ還元するべく、今後、証券取引システムソリューションである「Financial Plateシリーズ」もオンプレミスからクラウドへ移行していく計画です。」(高嶋)
今後も大和総研のプロフェッショナルが、クラウドを活用した最善、最適なソリューションを提供していく。