耐量子計算機暗号に関わる国内動向

DIR SOC Quarterly vol.10 2025 winter 掲載

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2025年01月28日

  • デジタルソリューション研究開発部 松井 直己

◆現在よく用いられるRSA暗号や楕円曲線暗号は十分な計算能力を持つ量子コンピュータによって効率よく攻撃できることが知られている。そのため、未来の通信の安全性を確保するために、耐量子計算機暗号が求められている。

◆現時点で存在している量子コンピュータの計算能力では現代暗号を破ることはできない。しかし、将来的に暗号を破れる程度の計算能力を持つ量子コンピュータが登場すると想定し、今から暗号化されたデータなどを集め、実用化されたタイミングで解読を試みるハーベスト攻撃の存在が指摘されている。そのため、現在使われている暗号から耐量子計算機暗号へは早い段階で移行することが望ましい。

◆既に各国政府や大手IT企業を中心に耐量子計算機暗号への移行が検討され、日本ではCRYPTRECや日本銀行、金融庁によって耐量子計算機暗号についての調査や対応が進められている。金融庁は2024年7月18日に「預金取扱金融機関の耐量子計算機暗号への対応に関する検討会」を実施し、同年11月26日に検討会報告書を公表した。

◆2030年代半ばには耐量子計算機暗号を利用可能な状態とすることが望ましいとされているため、今から少しずつリスクや課題についての理解を深め、移行への事前準備を行うことが重要である。

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