なるほど金融 バーゼルⅢの初歩Q&A(Kindle版)
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定価:
380円(税別)
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著者:
大和総研 鈴木 利光
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発行:
2015年8月13日 88P
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発行所:
大和総研 調査本部
内容
2013年3月末から、バーゼルⅢの適用が始まりました。バーゼルⅢ(規制)という用語をなんとなく聞いたことがある人は多いと思いますが、その内容は複雑であり、金融関係以外の人にはとっつきにくいものだと思われます。
とはいえ、経済において大きな役割を果たしている銀行が、どのようなルールに従って行動しているのかを理解することは、とても大事なことです。大手銀行が発行する劣後債の変化を例に挙げましょう。劣後債とは、一般の債権者よりも債務弁済の順位が劣る社債です。2014年3月以降、大手銀行が「新型劣後債」と呼ばれるものを発行するようになりました。従来のバーゼルⅡにおいても、一部の劣後債は資本として認められていました。しかし、バーゼルⅢでは、劣後債が資本として認められるためには、バーゼルⅡとは異なり、発行した銀行の信用状態が悪化した場合に債券の元本削減(ヘアカット)又は普通株への転換がされるという特約を付ける必要があります。新型劣後債は、従来の劣後債とは異なり、このような特約を備えることを条件にバーゼルⅢの資本として認められることから「新型」と呼ばれているのです。大手銀行の新型劣後債は、資本市場において大きな話題となっています。とりわけ、償還期限のない新型劣後債は、歴史的な低金利環境において高い利回りを求める投資家にとっては魅力的な投資対象となっているようです。このように、大手銀行の新型劣後債の特徴的な商品性は、バーゼルⅢにそのルーツを有しています。
こうした大手銀行が発行する劣後債の変化は、自己資本比率の分子(自己資本)の質の向上に関わるものであり、バーゼルⅢのほんの一端にすぎません。このほかにも、バーゼルⅢでは、新たに、銀行が過大にレバレッジをかけることを抑制する基準や、危機時の預金流出への対応力の強化(流動性の高い資産の保有)を求める基準なども導入されており、複数の基準を横断的に理解しなければなりません。
そこで、このシリーズでは、金融関係以外の人にもバーゼルⅢの実態を横断的に理解できるように、その仕組みを可能な限りわかりやすく解説します。
目次
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Q1
「バーゼルⅢ」とは?
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Q2
バーゼル規制の変遷は?
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Q3
バーゼルⅠはなぜ導入された?
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Q4
バーゼルⅡではどのような見直しがされた?
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Q5
バーゼルⅡにおける信用リスク計測の精緻化とは?
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Q6
バーゼル2.5ではどのような見直しがされた?
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Q7
バーゼルⅢではどのような見直しがされた?
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Q8
バーゼルⅢのスケジュールは? ~今後実施される項目と実施スケジュール~
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Q9
バーゼルⅢでは、自己資本の質はどのように向上している?
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Q10
バーゼルⅢでは、自己資本の水準はどのように引き上げられている?
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Q11
「資本保全バッファー」とは?
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Q12
「カウンターシクリカル資本バッファー」とは?
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Q13
「ベイルイン」とは?
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Q14
「レバレッジ比率」とは?
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Q15
「流動性カバレッジ比率」とは?
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Q16
「安定調達比率」とは?
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Q17
「システム上重要な銀行へのサーチャージ」とは?
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Q18
「国内基準行向けバーゼルⅢ」とは?
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Q19
国内外の大手銀行は、バーゼルⅢをどれだけ遵守できている?
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Q20
現在、バーゼル規制ではどのような見直しが検討されている?
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Q21
銀行勘定の金利リスク(IRRBB)、資本賦課される?
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参考文献
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著者紹介