保険業界のデジタル戦略をサポートする「DXプラットフォーム(通称:insNext)」をクラウドネイティブなアーキテクチャで構築

スミセイ情報システム株式会社様

住友生命グループのスミセイ情報システム株式会社は、保険業界のデジタル戦略をサポートするためのクラウドネイティブなプラットフォームをアマゾン ウェブ サービス(以下「AWS」)上に構築。本プラットフォームは、大和総研と共同開発を行い、金融機関の利用を想定した高いセキュリティを兼ね備えつつ、将来的なお客様の増加やサービスの機能追加などにも迅速、柔軟な対応を可能としている。

お客様の課題

保険商品開発の高速化とデジタルチャネルへの柔軟な対応が課題

スミセイ情報システム株式会社
インフラソリューション部
部長 川端 琢己 様

スミセイ情報システム株式会社は、1971年に住友生命保険相互会社の情報システム子会社として設立された。住友生命のグループ会社で培ったノウハウをもとに、内外販のシナジー効果を発揮し、「お客様と共に‟これまでも”そして‟この先も”ずっと寄り添えるパートナー企業」として、保険業界を中心としたグループ外の事業会社へも情報サービスを提供している。また、現在はお客様のデジタル戦略を支援するべく人材育成と新たなサービス開発にも取り組んでいる。
保険業界においては、ライフスタイルや個人の価値観に合わせた商品・保障の提供が求められており、すでに国内外の多くの企業が各社のデジタル戦略に沿った取り組みを加速させている状況であった。
こうした背景のもと、保険商品開発の高速化や販売チャネルへの柔軟な対応を実現する「DXプラットフォーム(通称:insNext)」の構築を検討し始めたという。

「保険業界では商品の同質化が進んでおり、よりパーソナライズされた商品とともに、お客様との接点となるデジタルチャネルを含めた販路設計が求められています。本プロジェクトでは、第一段階として商品開発を高速化し、各種デジタルチャネルに対して多様な保険商品サービスを素早く提供可能にするプラットフォームを開発することをターゲットとしました。また、毎年保険商品を開発・提供するために、システムが複雑化・肥大化しがちである現状を踏まえ、長く利用いただいてもお客様へ価値を提供するスピードを損なわないプラットフォームであるよう、柔軟で拡張性に優れたシステムであることを特に重視しました。」(川端氏)

川端氏によると、コロナ禍においてお客様ごとに異なる価値観がクローズアップされたことも、改めて今回のプラットフォームの必要性を認識するきっかけとなったという。

選定の経緯

パブリッククラウドプラットフォームの豊富な開発、運用知見を有し、相手の立場・状況に沿って柔軟な支援が可能な大和総研を共同開発パートナーとして選定

スミセイ情報システム株式会社は、アプリケーション開発のPoCでの利用や、開発環境としてすでにAWSを利用しており、マイクロサービスの実行・管理等の十分な実績があるAWSのマネージドサービス(Amazon ECS, AWS Fargate, AWSのCodeシリーズなど)を高く評価していた。今回、insNextの構築にあたっては、先に挙げた高い柔軟性と拡張性を満たすため、基盤のクラウドとしてAWSを選択している。
また、同社では、本プロジェクトの遂行にあたり、クラウドネイティブなアプリケーション及びプラットフォームの開発・運用について、大和証券グループや事業会社向けの豊富な実績を評価しプラットフォームの共同開発パートナーとして、大和総研を選定した。

「このinsNextの構築は当社として挑戦的なプロジェクトであったため、構築初期段階からクラウド領域の先駆者であるパートナーと共同で、検討を進める方針としていました。我々が目指すことに対して一を聞いて十を知るところが秀でており、柔軟かつスピーディーに対応いただける大和総研にご支援を依頼しました。」(川端氏)
川端氏によると、insNext構築プロジェクトの開始直後から、大和総研との取り組みに手応えを感じていたという。

「大和総研は、本プロジェクトの当初から保険業界や当社の特性の理解に努め、我々の立場に立ってどのように進めるのがベストであるのかを当社メンバーと一緒に検討を重ねてくれました。その上で提案されたソリューションは当社の考えに非常に合致したものでした。また、この一連のやり取りをスピード感もって進めてもらえたことや、実際にプロジェクトにアサインされたメンバーのスキルの高さにも満足しています。」(川端氏)

ソリューション

金融業界に求められるセキュリティレベルを熟知した大和総研とのディスカッションによりクラウドネイティブかつモダンなアーキテクチャプラットフォームを実現

スミセイ情報システム株式会社
インフラソリューション部
東日本基盤開発グループ長
亀井 裕之 様

insNextは金融機関での利用を想定したため、マイクロサービス特有のセキュリティ対策や、シフトレフト(セキュリティに関わるテストの工程を前倒しして行うこと)・DevSecOpsを意識した環境構成など、特にセキュリティは重点的に検討・対策を実施した。

「シフトレフト・DevSecOpsの実現のために、インフラチームはアプリケーションチームと密に連携をして進める必要がありましたが、大和総研から適切にアドバイスを頂き、スムーズに議論を進めることができました。」(亀井氏)

また、採用するセキュリティの技術・サービスとその組み合わせ、セキュリティレベルについては繰り返し議論を重ねて決定している。

株式会社大和総研
コーポレートシステム部
森田 大二郎 上席課長代理

「セキュリティの技術・サービスの選定・組み合わせは非常に難しい面がありました。例えばSOCでの監視が可能なサービスであるという前提条件があったため、教科書通りの構成で進めるのではなく、実際の現場・要件にあわせてお客様との議論を通じアーキテクチャ検討を進めました。」(森田)

「結果として、セキュリティについては金融機関の利用を想定し十分な環境を準備できたと捉えていますが、セキュリティ機能の充足とコストのバランスについては、今後の利用状況等を鑑みて、引き続き検討していく必要があると考えています。」(亀井氏)

また、クラウドネイティブな基盤でのアプリケーション開発においては、今回新たにアーキテクチャの検討や自動化などにも取り組んでいる。

スミセイ情報システム株式会社
保険金融本部 Next Creation戦略部
デジタル推進グループ長
笹岡 良太 様

「保険商品や販売チャネルの追加に素早く対応することでお客様へ価値提供ができるよう、拡張性が高く迅速にリリースできるアーキテクチャを検討し、マイクロサービスによる拡張性とCI/CDによる自動化を目指しました。クラウドを利用したサービス開発においては、これまで以上にアプリケーション領域とインフラ領域の垣根がなく、両者の知識を補完しながらサービスや基盤の設計を進めていくことが求められましたが、この点について、大和総研はアプリケーション領域まで踏み込んで設計要素を協議し進めてくれたため、考慮漏れなくスムーズに開発を進めることができました。」(笹岡氏)

株式会社大和総研
コーポレートシステム部
光原 圭祐 次長

「CI/CDについてはアプリケーションのみでなくインフラコードまで含めた自動化を実現しました。CI/CDは運用していく中で改善を繰り返す要素も多分にありますので、インフラチームとアプリケーションチームの関係者とのすり合わせを繰り返しながら、アジャイル的に構築を進めました。苦労した点ではありますが、最終的にうまくいったと感じています。」(光原)

大和総研は長年、金融業界に携わってきた実績があるからこそ、求められるセキュリティレベルをしっかりと理解した上で、クラウドネイティブでモダンなアーキテクチャに取り組まれたいというご要望に伴走することができている。

ソリューションの成果

複数プロジェクトへの横展開や内製化の取り組みを実現

insNextは2022年8月にリリースされた。

「当社として今までクラウドネイティブなアプリケーションが稼働するプラットフォームを保有していなかったため、今回そのベースとなる環境ができたこと自体が大きな成果と捉えています。insNextは今後の当社のデジタル戦略の中核を担うものであり、全社への展開を進めていきたいと考えています。」(亀井氏)

「今回の取り組みで、クラウドネイティブなアーキテクチャの拡張性の高さ、リリースの容易さは実証することができました。アーキテクチャや自動化基盤については、ナレッジを社内に展開し、すでに別案件でも同一のアーキテクチャを採用して案件を遂行中です。」(笹岡氏)

また、同社は、プロジェクト計画当初より掲げていた「プロジェクト遂行を通じたデジタル人材育成」の目標について、今後の育成にも繋がる良い形で達成できた。

「構築初期の要件検討や設計段階では、当社メンバーの理解向上を目的として大和総研に勉強会の要素も含んだ支援をお願いしました。失敗が許されない本番環境は大和総研に、テスト環境は当社メンバーが構築するにあたり、週次でより実践的なレクチャーを開催頂きました。実際に手を動かす経験とレクチャーのおかげで、より一層理解を深めることが出来ました。」(亀井氏)

大和総研は同社の目標に対して、構築の初期段階から意識した取り組みを行い、結果として同社内の複数プロジェクトへの横展開や内製化の取り組みに大きな貢献を果たした。

今後の展望

insNextは様々なアーキテクチャが稼働するプラットフォームとして基盤拡大を予定

構築したinsNextは今回採用したクラウドネイティブアーキテクチャのみならず、様々なアーキテクチャが稼働するプラットフォームとして、さらなる基盤の拡大が予定されている。

「大和総研には、今後も継続してプラットフォームサービス構築の知見を活かし、開発、運用面の共同検討と、サービス提供型システムでの相互連携について期待しています。また技術面ではサーバレスやローコード開発の活用による効率化など、更なるAWSの活用に向けて一緒に取り組んでいくことも期待しています。」(笹岡氏)

大和総研は今後も最新技術の検討・適用によるinsNextの発展に向けた取り組みを支援していく。

※部署名・役職名はインタビュー当時のものです。

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