プロジェクト事例:生成AIを活用したお客様応対履歴の自動登録
大和証券株式会社
大和総研では、生成AI技術を用いて、大和証券のCRMシステム(顧客情報管理システム)(以下「CRMシステム」)における通話でのお客様応対履歴の自動登録機能を、アマゾン ウェブ サービス(以下「AWS」)上に構築した。
課題
営業事務におけるお客様応対履歴登録の作業負荷と品質
大和証券では、日々、営業員やコンタクトセンターのオペレーターがお客様との電話応対を行っている。お客様との面談時の会話内容をCRMシステムへ登録することは重要な業務である一方、手作業での会話内容登録には時間がかかるという課題があった。また、手作業での入力では情報の欠落や担当者による登録内容のばらつき、誤字脱字等のリスクもあった。
従来も通話録音データのテキスト化は行われていたが、会話のままで要約はされていない状態であったため、上司がお客様応対の内容に応じた指示を行う場合において、確認に時間がかかる状態であった。
これらの課題を解決するため、生成AIと音声認識技術を組み合わせ、営業事務の作業負荷軽減および登録内容の品質向上に取り組むこととなった。
ソリューション
通話録音データをテキスト化し、生成AIで要約
本プロジェクトでは、通話録音データを利用して、お客様との応対履歴を自動登録する機能を構築した。生成AIと音声認識機能はもちろんのこと、既存の通話録音データ作成機能に影響を与えないような非同期処理の構築についても、積極的にAWSが提供するマネージドサービスを採用した。
CRMシステムの利用者である営業員あるいはコンタクトセンターのオペレーターは、画面上の要約ボタンを押下することで、お客様との通話内容を要約するためのリクエストが送られる。
通話録音データのテキスト化は、Amazon Transcribe(※1)で行い、テキストデータの要約はAmazon Bedrock(※2)のAIモデルを用いた。要約完了後は、Microsoft Teamsでチャットを送ることで、営業事務へ要約完了を知らせる機能を構築した。こちらの処理には数分かかるため、メッセージキューサービスのAmazon SQS(※3)やサーバーレスのコード実行サービスであるAWS Lambda(※4)を用いることで、非同期処理を実現した。
一般的に、テキスト化の精度を向上させるには、専門用語の辞書登録など、定期的なチューニング作業が必要である。しかし、本プロジェクトで採用したAmazon Transcribeは、初期段階から精度が高く、チューニングに割く時間を削減することが可能である。また、Amazon Bedrockを用いた要約については、利用者とディスカッションを重ね、プロンプトを試行錯誤することで、品質を向上させた。
(※1)AWSが提供する、フルマネージドな音声の自動文字起こしサービス
(※2)AWSが提供する、複数の基盤モデルへのアクセスや、生成AIアプリ構築に必要な機能を提供するフルマネージドサービス
(※3)AWSが提供する、フルマネージド型メッセージキューサービス
(※4)AWSが提供する、イベント駆動型のサーバレスコンピューティングサービス
プロジェクトの成果と今後の展望
記録業務の効率化から始まる、お客様満足度向上の新たな一歩
プロジェクトの成果として、プロジェクトリーダーの山村は次のように語る。
大和総研
リテールフロントシステム部
シニアアプリケーション・アーキテクト
山村 累梨子
「今回構築した機能をご利用いただくことで、記録業務にかかる時間を短縮することができ、コンサルティング内容の検討や顧客接点の増加など、お客様満足度の向上に向けた活動により多くの時間を充てられると期待しています。また、生成AIによる高品質な要約を蓄積できるようになったことで、要約データを分析し、新たな営業・マーケティング戦略の立案など、より抜本的な改革にも貢献できるのではないかと考えています。」(山村)
大和総研は、本プロジェクトで得た知見と技術を最大限に活用し、大和証券グループのみならず、幅広い業界における生成AIの活用を積極的に提案することで、ビジネスの革新を一層加速させていく。




