
AI/MLプラットフォーム「Dataiku」によるAML(マネーロンダリング防止)対応と幅広いデータ活用で業務効率化が加速
株式会社マネースクエア様
株式会社マネースクエア(以下「マネースクエア」)は、データ分析・活用において、限られたリソースや既存システムの制約から、高度な分析や多様なデータ利活用に課題を抱えていた。
こうした課題を解決するために、大和総研と連携し、AI/MLプラットフォーム「Dataiku」を活用したAML(マネーロンダリング防止)システム導入プロジェクトを推進。PoC(概念実証)を経てAML対策を確立するとともに、顧客クラスタリングやマーケティング分析の分野でも成果をあげている。
本稿では、両社のキーパーソンによる対談を通じて、導入の背景・課題、提案内容、PoCの進め方、成果および今後の展望を紹介する。
導入ソリューション
導入前の課題と背景
限られたリソースの中で切迫するAML対応
マネースクエアは、限られたリソースでSQLを中心とした手作業によるデータ抽出・加工を行っており、高度な分析や多様なデータ利活用が進まず、業務上の課題となっていた。特に金融庁や日本証券業協会(以下、日証協)のガイドラインに対応したAML対策のうち、「取引モニタリング」のシステム化は課題だったが、システム選定は難航していた。また、顧客クラスタリングやマーケティング分析、VOC(Voice of Customer)分析などのビジネス分析の効率化も急務となっていた。
株式会社マネースクエア
取締役 IT部長 兼 マーケティング部長
伊奈 正剛様
「金融庁や日証協のガイドラインに基づく不正アクセスの検知が必要で、様々なAMLやモニタリング製品を検証しましたが、コスト面や会社規模の事情で合致するものがありませんでした。そのため、自社開発も検討していた状況です。
また導入前、社員の約3分の1に対してデータベース教育を実施し、SQLの習得や直接アクセスできる環境の整備を進めていました。専門的な分析はデータチームに任せつつ、簡単な分析は一般社員が担当できる体制を目指していた背景もあります。」(伊奈様)
株式会社大和総研
システムコンサルティング第三部 副部長
本間 剛
「マネースクエア様の課題やご要望を踏まえ、まずAML対応が必要であるという点を重視しました。ちょうどDataikuを当社で確認したところ、AML対応が可能なテンプレートも用意されていることがわかり、これならニーズに合致すると考えました。加えて、AML対応だけでなく幅広いデータ利活用を見据えたAI/MLプラットフォームとしてDataikuを提案しました。
マネースクエア様にはプログラミングスキルの高い方も多いのですが、一般社員の方にも活用しやすい、Dataikuのノーコード/ローコード環境は適合性が高いという点も提案した理由の一つでした。」(本間)
ソリューション
幅広い業務対応を見据えたDataikuの提案
Dataikuは、AML対策の基盤として優れており、金融庁のガイドラインへの対応に加えて、顧客分析やマーケティング分析など多彩な業務ニーズを包括的に支援できるプラットフォームだ。また、組織全体のデータ活用力向上を見据え、ノーコード/ローコードとプログラミングを融合した環境を提供することで、人材育成への貢献も目指した。
「DataikuにはAML/CFT(テロ資金供与対策)機能を実装することができ、マネーロンダリング・テロ資金供与防止の要件を満たしています。
加えて、マーケティング分析やVOC分析、計数集計など多岐にわたる業務に活用できるのが強みです。ノーコード/ローコードとプログラミングのハイブリッド環境により、多様な分析ニーズに柔軟に対応できるほか、人材育成も促進できると考えています。
データベースへの直接接続やPythonによるカスタムロジックの組み込みも可能で、実用性の高さを備えています。」(本間)
株式会社大和総研
企業システム事業本部
クラウドソリューション部 次長
齋藤 泰幸
「マネースクエア様は内製力が非常に高く、ITの視点から具体的な情報を伺うことができました。そのため、『こうすれば可能です』といった提案を迅速に行うことができ、大変助かりました。具体的には、データベースの構造やデータの種類、件数などの詳細を把握し、加えて業務上の要件や制約についても深く理解するプロセスを経ています。
マネースクエア様の高いITリテラシーには深く感銘を受けており、私たちもその姿勢に刺激を受けながら、より良い成果を目指してプロジェクトに取り組みました。」(齋藤)
PoC(概念実証)の実施
緊密な連携で進めたPoCと経営層の高評価
PoCはマネースクエアが主体となって進められ、大和総研は技術的な支援を行った。AMLの振る舞い検知を中心に検証しつつ、ログインや入出金のモニタリングに取り組んだ。技術的な難しさやデータ準備の負荷もあったが、マネースクエアと大和総研、Dataiku社の密な連携で課題を解決している。
株式会社マネースクエア
IT部運用・管理課 課長
工藤 智之様
「PoCの目標は、金融庁や日証協のガイドラインに準拠した『振る舞い検知』ができるかどうかでした。
ログインのモニタリングは自社で構築し、入出金の機械学習部分は大和総研さんの支援を受けて進めました。
比較的少ない工数で、導入可能と判断できました。」(工藤様)
株式会社マネースクエア
プロダクト統括部 部長代理
神田 諭様
「私はマーケティング活用分野を担当しました。最初に取り組んだのは、私が手元で行っていた分析の自動化と、その結果を社員に展開する仕組みづくりです。
特に機械学習や生成AIを用いた分析は属人化しがちだったのですが、今回、クラウド上でバージョン管理やドキュメント自動生成によって、分析フローやデータの意味合いを組織内で共通認識できるようになりました。
PoCの段階で、技術的に運用が開始できることも確認でき、『これはいける』と確信したことを覚えています。」(神田様)
「マネースクエア様固有の業務要件、システム構成を踏まえ、AML対策の具体的なルール設定をどう実現するかについて、両社で繰り返し議論しました。
最終的にはDataikuの特徴である、ノーコード/ローコードとPythonによるハイブリッド構成がベストであると判断し、実装のご支援を経て技術課題の解決に至りました。」(齋藤)
株式会社大和総研
プロダクトソリューション部 課長代理
データサイエンティスト
星 ひかる
「マネースクエア様がデモ段階で既に使い勝手を実感されていたため、標準機能だけでなく深い技術的な提案も行いました。時にはDataiku社とも直接連携しつつ、課題解決を図りました。」(星)
役員デモでは、PoCの成果が高く評価され、Dataikuの汎用性と将来性が経営層にも理解された。
「役員デモでは、目標としたAML対策が早期に実現可能となったことや、内製で大規模な構築が可能な点に驚きの声がありました。海外の豊富な導入事例も評価され、他社とは異なるアプローチに対する期待も高まりました。」(伊奈様)
PoC成果と運用開始後の業務効率
AML対応とマーケティング分析の両面で得た具体的成果
PoCを経て導入されたDataikuは、AML対応を確実に進めるとともに、業務データ分析の効率化に大きく寄与している。自動化や可視化の進展により、分析の質が向上し、現場の負担軽減と迅速な意思決定が可能となった。
「PoCで検証したAML対策の仕組みは、本番運用開始後も順調に稼働しています。特に法務部門ではガイドライン対応が十分にできていなかったこともあり、これまで1~2ヶ月に一度、状況をヒアリングされ、法務部門とIT部門の双方がなかなか苦しい思いをしていた部分がありました。
しかし、Dataikuの導入によってスコアや運用状況を具体的に示せるようになり、課題が一気に解消されました。法務部門とともに、その効果をしっかり実感できたと考えています。」(工藤様)
「以前は、機械学習による分析データの作成や集計を月に一度程度まとめて実施し、その都度会議で共有していました。
Dataiku導入後は、差分データを自動で格納・管理できるようになり、現場メンバーにもクエリの実行方法をセットで共有できるので、ほぼリアルタイムで分析結果を現場に届けられる環境が整いつつあります。」(神田様)
「金融業界ではガイドラインの変化への対応が常に求められ、従来のSI構築では多額のコストと長期の検証期間が必要でした。しかし、Dataikuの導入によりある程度内製化し自社で運用できる環境を整えたことで、これらのプロセスを大幅に短縮できました。
また、データ分析の高度化と見える化も進み、マーケティング分野ではエビデンスベースの施策推進が可能となっています。専門家に依存していた分析もシステム導入で自動化され、複数の分析を並行して進められる環境が整い、現場への迅速な情報提供が実現しました。」(伊奈様)
さらに、洗練された画面デザインや直感的な操作性もDataikuの魅力の一つであり、「触ってみたい」「使いたい」と思わせるユーザー体験が現場のデータ活用促進を後押ししているという声もあがっている。
「これまでETLツールもいろいろ使ってきましたが、Dataikuは画面のセンスが良いなと感じます。
Dataikuは『触ってみたい』『使いやすそう』と思わせるデザインで、メンバーも積極的に手に取ってくれました。不格好なツールだとどうしても触りたくなくなりますが、Dataikuはそういう意味でも非常に受け入れやすかったです。」(伊奈様)
「当社の若手のメンバーもDataikuのUIを気に入っていて、初見でも触れてみたくなる、実際に触っていて楽しいという声が多く聞かれます。
使いやすさやデザインが、裾野を広げる要因になっていると感じています。」(星)
今後の展望
さらなるデータ活用拡大と技術進化への期待
マネースクエアと大和総研は、Dataikuを基盤としたAML対策の成功を踏まえ、今後はさらにデータ活用の幅を広げ、技術進化を取り入れながら業務効率化と競争力強化を推進していく方針を示している。
「今回のDataiku導入を通じて得た成果をもとに、当社ではAML対応だけでなく、マーケティング分析や顧客行動解析など幅広い分野でのデータ活用を加速させていきたいと考えています。
事業が拡大し分析対象も増加する中で、この分野の自動化・見える化・高度化は他社にはない強みになると期待しています。まだバリューと呼べるレベルまで達していませんが、基盤は確実に整いつつあり、AI技術の進展にも柔軟に対応し、より高度で効率的な業務運営を目指していきます。」(伊奈様)
大和総研では今後も、多様なビジネスニーズに応えられるよう、Dataikuの機能強化や新たなAI技術の導入支援に取り組み、お客様の成長に伴う課題に対して、最適なソリューションを提供し、柔軟かつ迅速に対応していきます。
※Dataikuは、Dataiku, SASの登録商標です。




