2024年11月21日
- 実質GDP成長率見通し:24年度+0.5%、25年度+1.4%:本予測のメインシナリオにおける実質GDP成長率は24年度+0.5%、25年度+1.4%(暦年ベースでは24年▲0.2%、25年+1.6%)と見込む。24年7-9月期に2四半期連続で前年比プラスとなった実質賃金(1人あたり実質雇用者報酬)は、最低賃金や公務員給与の大幅引き上げ、春闘での高水準の賃上げ継続などにより、同+1%前後で推移するだろう。賃上げと価格転嫁の循環により、CPI上昇率の基調は同+2%程度の見込みだ。家計の所得環境の改善や政府の経済対策、インバウンド需要の増加、高水準の家計貯蓄、シリコンサイクル(世界の半導体市況)の回復などが日本経済を下支えしたり、押し上げたりするとみている。ただし、米トランプ次期政権の政策など海外を中心に景気の下振れリスクには警戒が必要で、円高が進行する可能性もある。
- 日銀の金融政策:日銀は経済・物価・金融情勢を注視しつつ、25年1-3月期に短期金利を0.50%に引き上げ、その後は半年に一度程度のペースで0.25%ptの追加利上げを行うと想定している。予測期間を通じて緩和的な金融環境が維持されるだろう。ただし、円安の急進などでCPI上昇率が目標の2%を大幅に上回る可能性が高まれば、日銀は追加利上げを前倒しで実施するとみられる。
- 論点①:生産性向上を中心とした地方創生を:過去10年にわたり進められた「地方創生」では、成果指標の割合が当初の9割から4割に低下し、国による検証サイクルの確立も不十分だった。地方経済の底上げを目指すのであれば、地方の経済規模拡大と所得向上を上位のKPIと位置付けて重視すべきだ。東京圏と地方で生産性の格差が大きい分野は非製造業で、地域差はあるものの、資本装備率の向上やソフトウェア投資、集積の経済が重要となる。各地域内での波及効果が大きく、潜在需要も見込める産業の育成も効果的で、近畿における一般機械や、東北の情報・通信機器などが有望だろう。なお、生産性の高い東京圏への人口純流入が止まっても経済が下押しされる効果は小さい。地方創生の効果が十分に発現すれば、実質GDPを14%程度押し上げることも可能と試算される。
- 論点②:地域特性を踏まえた少子化対策:若年女性人口の東京圏への移動による出生率の押し下げ幅は20年度までの10年間で0.004と、全国の出生率低下幅の1割未満の寄与にとどまる。東京圏の被保険者(正社員等として働く女性)の出生率は主な人口の流出元である東北などと大差がなく、仕事と子育ての両立という課題が残るためだ。全国の出生率を高めるには、東京圏だけでなく各地域で住民が希望する結婚や出産の実現を阻む要因を解消する必要がある。近年の被保険者出生率の上昇幅は、3世代同居比率や近居比率との関係性がうかがえ、親族間の「互助のケア」と行政による「公助のケア」を両輪で強化する必要があろう。近年の被扶養者(配偶者等の扶養に入る女性)の出生率の低下幅は、所得の低い地域で特に大きい。在宅育児支援により追加的給付を行うほか、地方の生産性向上に向けた取り組みも被扶養者出生率の低下に歯止めをかける一助になろう。
【主な前提条件】
(1)名目公共投資:24年度+3.9%、25年度+1.1%
(2)為替レート:24年度153.1円/㌦、25年度154.7円/㌦
(3)原油価格(WTI):24年度73.9ドル/バレル、25年度69.4ドル/バレル
(4)米国実質GDP成長率(暦年):24年+2.7%、25年+2.2%