第217回日本経済予測を発表

安定性を増す内需と下振れリスクが高まる外需①少子化対策、②「L字カーブ」、③米銀行不安、を検証 実質GDP: 2023年度+1.5%、2024年度+1.2%(暦年ベース 2023年+1.3%、2024年+1.4%)名目GDP: 2023年度+4.0%、2024年度+2.1%

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2023年05月23日

改訂レポートのお知らせ

第217回日本経済予測は、2023年6月8日に第217回日本経済予測(改訂版)を発表しております。


  1. 実質GDP成長率見通し:23年度+1.5%、24年度+1.2%:本予測のメインシナリオにおける実質GDP成長率は23年度+1.5%、24年度+1.2%(暦年ベースでは23年+1.3%、24年+1.4%)と見込む。経済活動の正常化や春闘での大幅な賃上げ、緩和的な財政・金融政策などが景気を下支えし、世界経済が減速する中でも日本経済の回復が続くとみている。約8兆円の回復余地があるサービス消費や、中国人訪日客の本格回復で23暦年に約3兆円増加するとみられるインバウンド消費、半導体不足の解消による1.7兆円の乗用車の繰越需要の発現などを見込む。日本経済の下振れリスクは主に海外にあり、中でも銀行不安が高まった米国の当面の経済動向には注意が必要だ。
  2. 論点①:「次元の異なる少子化対策」実現への道筋:2023年3月末に政府が取りまとめた異次元の少子化対策の「たたき台」の各施策を全て実施すると、出生率は0.35~0.49程度上昇する可能性がある。両立支援・働き方関連施策の費用対効果は特に大きく、女性就業の「L字カーブ」が解消すれば出生率は0.24上昇する見込み。両立支援・働き方関連施策および、保育・幼児教育については所要財源あたりの出生率上昇効果が大きく、かつ、既存の社会保険制度からの財源調達が可能であることから、早急に実施すべきだ。一方、児童手当の拡充は費用対効果が小さい。特に、児童手当の多子加算を実施する場合は巨額の財源を要することから、消費税率の引き上げは避けて通れず、丁寧に社会的合意を形成する必要がある。
  3. 論点②:「L字カーブ」解消による経済効果と課題:女性の正規雇用率は20代後半がピークであり、仕事と家庭の両立の難しさから、中高齢で低くなる「L字カーブ」を描いている。子育て期の女性が正規雇用で就業継続できるようになることでL字カーブが解消に向かえば、女性の賃金は今後20年間で61兆円増加すると試算される。そのための課題の1つとして、男性の働き方改革を通じて女性に偏る家事・育児の負担を軽減する必要がある。当社の個票分析によると、1カ月以上の育休取得は男性の家事・育児の時間を週4時間程度増加させる効果を持つ。政府は男性の育休取得を促すため、育休給付額を引き上げる方針だが、両親学級の受講を給付増額の条件とするなど、男性の意識改革を促す工夫を行うとよいだろう。
  4. 論点③:米国の銀行不安をどうみるか:米国では、複数の中堅銀行の破綻や銀行の融資態度の厳格化などの動きが見られ、景気下振れリスクが強まっている。米国の金融環境は2000年代半ばほどには過熱しておらず、リーマン・ショック級の危機が発生する可能性は低いとみられるが、警戒は必要だ。今後の動向をみるにあたっては、①銀行からの多額の預金流出、②銀行の保有証券の含み損、③中堅・中小銀行を中心とした商業用不動産向け融資、④高インフレと労働需給のひっ迫が依然として続く中での金融政策、などがポイントとなろう。仮に大規模な銀行危機に発展すれば、米国の実質GDP成長率は4%pt以上押し下げられる可能性がある。日本の実質GDP成長率も3%pt押し下げられ、マイナス成長は避けられないだろう。
  5. 日銀の政策:コアCPIは23年度に前年比+2.4%、24年度には同+1.7%を見込む。賃金と物価が循環的に上昇し始めているが、予測期間を通して基調的なインフレ率は2%に届かない。このため、日銀は現在の金融緩和策の枠組みを維持するとみている。

【主な前提条件】
(1)名目公共投資:23年度+4.1%、24年度+2.0%
(2)為替レート:23年度138.2円/㌦、24年度138.7円/㌦
(3)原油価格(WTI):23年度72.4ドル/バレル、24年度71.9ドル/バレル
(4)米国実質GDP成長率(暦年):23年+1.2%、24年+0.8%