第216回日本経済予測を発表

少子化対策と金融政策の「次元」は変わるか①少子化対策、②賃上げ、③日銀金融政策、を検証 実質GDP: 2022年度+1.4%、2023年度+1.6%、2024年度+1.0%(暦年ベース 2023年+1.8%、2024年+1.1%)名目GDP: 2022年度+1.9%、2023年度+3.6%、2024年度+1.8%

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2023年02月20日

改訂レポートのお知らせ

第216回日本経済予測は、2023年3月9日に第216回日本経済予測(改訂版)を発表しております。


  1. 実質GDP成長率見通し:22年度+1.4%、23年度+1.6%、24年度+1.0%:本予測のメインシナリオにおける実質GDP成長率は22年度+1.4%、23年度+1.6%、24年度+1.0%(暦年ベースでは23年+1.8%、24年+1.1%)と見込む。経済活動の正常化や緩和的な財政・金融政策などが景気を下支えし、米欧経済が減速する中でも23年度を中心に高めのプラス成長となるだろう。低迷する中国人訪日客は23年春頃から本格回復し、実質インバウンド消費は23暦年に約3兆円増加する見込みである。自動車の供給制約の解消により約1.6兆円のペントアップ需要の発現も期待される。ただし、米国の深刻な景気後退入りなど海外を中心にリスクが山積しており注意が必要だ。
  2. 論点①:「次元の異なる少子化対策」として何を実施すべきか:日本の合計特殊出生率(TFR)を保険者別の被保険者と被扶養者に分けて分析し、少子化対策の効果を試算した。その結果、「妻が被保険者」の世帯に有効な両立支援・働き方改革と、「妻が被扶養者」の世帯に有効な在宅育児支援の導入は出生率引き上げの起爆剤となる。両者を合わせて、現状1.3程度のTFRを1.7程度まで引き上げることが期待される。他の施策と合わせれば、希望出生率1.8は実現可能な目標だ。出生率が上昇すれば、その恩恵は経済成長や年金給付の増加などを通じ広く国民に及ぶ。政府は、出生率や経済効果を明示した上で少子化対策やこども・子育て支援の具体策を提示し、国民的議論を経て財源や負担の社会的合意を目指すべきだ。
  3. 論点②:高水準の賃上げ継続の条件とは?:足元のインフレは「コストプッシュ・インフレ」の側面が大きいが、このところ家計の消費行動と企業の価格改定行動には変化が見られる。仮にこうした変化が継続し、23年春闘で3%の賃上げが実現すると、「ディマンドプル・インフレ」の進展もあって24年の賃上げ率は前年並みになる。高水準の賃上げの持続性を確保するには生産性向上が欠かせない。この点、付加価値シェア上位20業種のうち16業種で人材投資GDP比が欧米主要国の最低水準を下回る。米国に比べ、各業種の労働生産性上昇率はおおむね低く、生産性が低下した業種に多くの労働量が投入されている。日本は非製造業で課題が多く、保健衛生や宿泊飲食、電気ガス水道など6業種における生産性向上が特に求められる。
  4. 論点③:新たな局面を迎える金融政策の課題と展望:日本銀行(日銀)は大規模緩和策を継続しつつ、金融市場の不均衡の是正を図るという難しい政策運営を行っている。仮にイールドカーブ・コントロールが撤廃され、長期金利が2%程度まで上昇する場合、実質GDPは0.6%程度減少すると試算される。金融緩和の中長期的な副作用として、①低金利と低生産性の罠、②財政規律の弛緩、に注意が必要だ。さらに、これらに共通して、「短期的な景気拡張」と「中長期的な経済成長」のトレードオフという困難な課題が浮かび上がる。今後、物価と賃金の循環的な上昇が加速する局面では、政府と日銀の政策連携が改めて問われることになる。共同声明を見直すのであれば、中長期的な課題の解決に向けて、金融政策・成長戦略・財政運営の相互関係を明記することは一案となろう。
  5. 日銀の政策:22年度で前年比+2.9%と見込まれるコアCPIは、政府による物価高対策の影響等で23年度に同+1.8%に低下しよう。24年度には同+1.4%を見込む。日銀は現在の金融緩和策の枠組みを維持するとみているが、市場機能の改善を目的とした措置が実施される可能性はある。

【主な前提条件】
(1)名目公共投資:22年度+0.9%、23年度+2.8%、24年度+2.5%
(2)為替レート:22年度135.4円/㌦、23年度133.9円/㌦、24年度133.9円/㌦
(3)原油価格(WTI):22年度90.2ドル/バレル、23年度78.5ドル/バレル、24年度78.5ドル/バレル
(4)米国実質GDP成長率(暦年):22年+2.1%、23年+1.0%、24年+1.1%