「DIR30年プロジェクト」レポートを発表

持続可能な社会保障システムを目指し挑戦する日本

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2013年05月14日

  • 株式会社大和総研

超高齢化を突き進む日本が改めて目指すべきであるのは、骨太な日本経済の再構築です。そのためには、給付削減と負担増を組み合わせた社会保障制度改革の議論も避けることはできないと考えられます。こうした問題意識のもと、大和総研では理事長監修の下、日本の長期的課題を調査研究する「DIR30年プロジェクト」を2010年から進めてまいりました。


このたび、民間シンクタンクの立場から情報発信を行うべく、当該プロジェクトにおける直近の研究成果を発表させていただくこととなりました。レポートは大きく二部構成となっています。第Ⅰ部では日本の長期的な成長力や、賃金・物価・金利などについての見通し、また、未曽有の少子高齢化によって経常収支の黒字を維持しうるのかなどについて、今後30年間の世界経済と日本経済を展望しています。日本経済を長期に見通すと、実質GDP成長率は2010年代1.5%、2020年代1.5%、2030年代1.0%と見込まれます。


マクロ経済の見通しを踏まえて、第Ⅱ部では持続可能な超高齢社会を実現するために社会保障と財政についてどのような改革を急ぐべきであるのか、シミュレーションを交えて具体的な議論を行っています。超高齢化の中においても日本は成長を続けることが可能ですが、それを阻む大きな問題は社会保障と財政の持続性が欠如していることです。潤沢な高齢者向け給付をこれまでのように続ければ、実質的な財政破綻を招くと見込まれます。


社会保障と財政のシステム破綻を回避するには、超高齢社会に相応しい制度を構築する必要があります。DIR30年プロジェクトは、マクロ経済との相互作用を考慮したシミュレーションを示しつつ、年金や医療保険の制度改革、成長戦略の展開、国民負担増を組み合わせた「改革シナリオ」を提案します。破綻を回避するためにどのような改革が必要なのか、具体的な数値を示しつつ明らかにします。


ただし、破綻を回避できたとしても政府の基礎的財政収支を構造的に黒字化させることは難しく、それほど高齢化問題は厳しい課題です。政府からの給付を抑制せざるを得ないとすれば、社会保障分野にも民間の知恵と活力を導入し、人々が直面する様々なリスクを官民双方でコントロールしていく努力も不可欠になるでしょう。それは新しいビジネスでもあり、政府の役割は番号制度や自助努力を促す税制等の整備へシフトするものと考えられます。改革シナリオの延長線上ではない、こうした発想による「超改革シナリオ」も提示します。


2013年は、年央の成長戦略や財政健全化目標の策定、7月の参議院選挙、8月の社会保障制度改革国民会議のとりまとめが、政策面での注目点です。グローバル経済だけでなく国内経済にも明るさがみられてきた現在は、先送りされがちな構造改革を前進させる好機です。成長志向の強い安倍政権の政策のさらなる展開が期待されます。こうした中、DIR30年プロジェクトが、政策議論を深めることに多少なりとも貢献できるとしたら大きな喜びです。

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