日本からの電子商取引(EC)を用いた農林水産物・食品の輸出に関する調査

  • 地域:全世界

  • テーマ:産業調査

農林水産省より「平成29年度 日本からの電子商取引(EC)を用いた農林水産物・食品の輸出に関する調査」を受託し、実施した。本調査はECでの食品の輸出、即ち越境ECにおける食品を対象とした市場調査である。

【目的】
平成29年(2017年)の我が国の農作物、林産物、水産物の輸出総額は速報値で8,073億円となっている。政府は、平成31年(2019年)の日本産農林水産物・食品の輸出額の目標を1兆円と設定し、目標達成に向け平成28年(2016年)5月に策定された「農林水産業の輸出力強化戦略」等に基づき、輸出促進のための各種施策に精力的に取り組んでいるところである。
具体的な輸出形態として、近年越境ECの市場規模が拡大している。そこで、ECを活用した輸出促進を検討するにあたり、日本から全世界向けにECで輸出される農林水産物・食品の実態を把握し、もってECを活用した日本産農林水産物・食品の輸出促進を図るための施策の素地とすることが本調査の目的である。

【調査のポイント】
越境ECに関する市場調査は経済産業省による調査案件として数年前より既に取り組まれているところ、個別のカテゴリーに焦点を当てた調査はこれまでになされていない。本調査は、我が国の輸出品目として潜在的可能性が高い「食品」を題材にしており、個別のカテゴリーにフォーカスした初の越境EC市場調査である。
また、市場規模推計だけにとどまらず、越境EC販売に適する商品特性、越境EC事業推進にかかるビジネス戦略上の課題・留意点、越境ECにかかるコスト構造、法規制面での留意点、商品の販売拡大のためのプロモーション等の工夫といった、多面的な調査を実施している点もポイントである。

【調査結果】
越境ECを通じた我が国の食品の輸出に関する市場規模は1,574億円となった。市場規模が大きい順に、健康食品(613億円)、菓子(404億円)、その他加工食品全般(173億円)、調味料(113億円)、緑茶(103億円)、となった。健康食品の市場規模は大きく、全体の39%を占める。また、菓子も全体の26%を占める大きな市場規模である。

地域別の市場規模では、アジア大洋州が1,299.8億円と、全世界の市場規模の83%を占める。これは、中国が占める比率が非常に高いことに起因している。中国の消費者に向けた我が国からの越境ECによる食品の輸出は、約1,200億円と推計される。よって地域毎に分割するとアジア大洋州の市場規模の比率が高い結果となっている。

また、事業者ヒアリング等を通じて、越境EC販売に適する商品特性は(1)重量の軽重、(2)体積の大小、(3)温度/鮮度管理の必要性の有無、(4)賞味期限の長短の4要素であることが分かった。