ASEANデジタルエコノミー政策動向調査

  • 地域:シンガポール・インドネシア

  • テーマ:産業調査

ASEANで今後さらに進展すると期待されるデジタルエコノミーに関わる政策動向や市場概況について、ASEAN大における状況に加え、電子商取引分野を中心に発展する各国別の調査を実施した。調査を踏まえ、ASEANにおける政策的課題と目指すべき方向性について検証を行った。

2017年10月から2018年2月の期間に実施された「平成29年度アジア産業基盤強化等事業(ASEANにおけるデジタルエコノミーにかかる政策動向調査)」(調査委託元:経済産業省)に関する調査業務の目的と内容は以下の通りである。

近年、ASEANにおいては中間所得層の増加やスマートフォンなどネット接続媒体の普及により、電子商取引(EC:E-commerce)をはじめとしたデジタルエコノミーが成長期を迎えている。ASEANにおけるEC市場規模は向こう5年間で2017年時の2倍(338億米ドル)になる見通しで、既にECプラットフォームなどを通じて同地域において影響力を増しているアリババグループのような中国企業のみならず、欧米諸国などからもIoTや産業のデジタル化などの分野を含めその潜在性が注目されている。

折しも、2018年はASEAN議長国に就任したシンガポール政府が「デジタル及びイノベーション分野の推進」を標榜しており、ASEAN大でデジタルエコノミーが進展する可能性が高まっている。また、新しい域内の発展戦略(AEC Blueprint 2025)の下、2016年末にはASEAN電子商取引調整委員会(ACCEC)の設立がメンバー間で合意されるなど、今後さらにASEAN大でECに関する事業環境の整備や推進策の拡充が予測される。

このような状況下で、大和総研はASEAN大と各国におけるデジタルエコノミーの政策動向を調査することになった。本調査においては各種文献資料に加え、期間中2回にわたって実施した現地調査や関連する事業を行う本邦企業への国内ヒアリングを基に情報収集を行った。現地調査では、ASEAN内で最もデジタル化が進展するシンガポールと、域内最大の人口を抱えEC市場の成長が著しいインドネシアの2か国に注力し、ASEAN事務局及び貿易円滑化合同諮問委員会(ATF-JCC)とASEAN電子商取引調整委員会(ACCEC)や公的機関のほか、各種業界団体(ビジネスカウンシル)並びに企業を訪問し、多くの有益な意見収集が実現した。

また、2018年にシンガポールが議長を務めるASEAN-BAC(ASEAN Business Advisory Council)主催の“ASEAN Outlook Conference ”会合にてシンガポール政府関係者をはじめアセアンを代表する業界団体・事業者を目前に、本件を通じた調査内容を披露する機会にも恵まれた。これらの活動を通じて得られた情報を基に政策動向を整理し、ASEANにおける政策的課題と目指すべき方向性について検証を行った。