平成28年度エネルギー使用合理化促進基盤整備委託費(EV・PHVの充電インフラに関する調査)

  • 地域:中国

  • テーマ:産業調査

EV・PHVの普及促進のため、充電事業インフラに関するビジネスモデル及びその海外市場への展開についての調査を実施。

2016年10月から2017年3月の期間に実施された「平成28年度エネルギー使用合理化促進基盤整備委託費(EV・PHVの充電インフラに関する調査)」(調査委託元:経済産業省)に関する調査業務の目的と内容は以下の通り。

EV・PHVの普及を促すために、政府は平成24年度から充電器の設置に対する補助を実施している。経路充電においては一部地域を除き十分な数の充電器が整備されたが、今後は充電器の維持管理が重要で、政府や自動車メーカーの支援に依存することのない充電ネットワークの確立が課題である。また基礎充電においては共同住宅に住む潜在的ユーザーの掘り起こしも重要である。これらの課題に関するビジネスモデル及びその海外市場への展開に関して調査を実施することが目的である。

充電事業のビジネスモデルについては、①経路充電に関する充電カード料金体系のあり方、②充電器の設置者の負担軽減を図るための取組み、について、基礎充電に関しては、①基礎充電設置の成功事例の収集、②ガイドライン策定に向けた関係者への報告・検討会の実施が主なものである。また、海外市場への展開については、中国との充電インフラ普及に係る共同研究として、平成28年11月に北京にて開催の日中省エネ環境総合フォーラムに向け、中国側との電話会議及び付随する関係者会議を開催、また同フォーラムにて発表予定の日中共同研究のとりまとめを実施することである。

ビジネスモデルにかかる調査(経路充電):
急速充電器の施設数は2017年1月現在で6,935カ所(基数では7,204基)であり計算上平均26.5kmにつき一か所の設置となっている。一般財団法人電力中央研究所による電欠回避シミュレーションによれば約30km毎の充電器設置により電欠は起きないとされ、全体として日本では電欠が発生しづらい状況であることが確認できる。しかし実際の設置個所にはバラつきがあり30kmを超える地域では電欠不安を払拭できず、これら空白地帯解消に向けた充電施設の最適配置が必要な状況である。さらに課題として事業収益性の確保、稼働率の平準化、充電マナーの遵守が指摘でき、これら課題への対応及び航続距離伸長に向けた搭載電池の大容量化見通し、対応する充電器の超高速充電化への動きなどを整理した。

ビジネスモデルにかかる調査(基礎充電):
マンションおよび戸建て住宅の基礎充電の設置状況について、関係者(自動車メーカー、ハウスメーカー、ディベロッパー、管理組合、自動車販売店等)との研究会(※1)を開催して報告・検討を行った。マンションへの設備導入では、区分所有者の合意形成の難易度が高いことが課題となっており、充電設備導入の検討体制整備の必要性が指摘される。研究会等で挙げられた課題を①入居者の認知度、②ルール・体制の整備、③コスト低減・経済性の確保、④設置スペースの視点から整理し、それに対する方策を取りまとめた。特に新築マンションでの設置が期待されるところである。

戸建住宅では新築時に設備が標準設置されるほど基礎充電の必要性が浸透しておらず、今後の設置推進が期待される。一方課題として、新築時設置では設置コストが安いため経済的メリット訴求による認知度向上や、他用途に利用可能な充電コンセント開発の必要性、さらに設置工事の標準化に向けた技術的課題などが挙げられている。また既築の戸建住宅特有の課題として、高い設置コストや追加的工事に関する顧客理解のために工事事業者による具体的な情報提供推進の必要性が挙げられていた。

海外市場への展開:
2014年12月、北京で開催された第8回日中省エネルギー環境総合フォーラムにおいて、経済産業省や中国国家発展改革委員会、中国国家エネルギー局の支持を得て、日本自動車研究所(以下、JARI)と中国自動車技術研究センター(以下、CATARC)が覚書に署名した。そこでは、2015年初から2016年末までの2年間に充電インフラ整備および運営モデル(以下、充電インフラ研究)、電気自動車と充電インフラの互換性(以下、互換性研究)等の分野で共同研究を行うことが謳われていた。

その後、日中双方は複数回にわたり研究課題に関し現場での交流を重ね、電話会議の開催、専門家へのインタビュー、モデル都市の調査などの活動を行い、両国の充電インフラ整備に関する相互理解が可能となった。特に共同住宅における基礎充電は両国ともに大きな課題であることが確認され、共通課題に対する意見交換などを含め、改めて北京で開催された第10回日中省エネルギー・環境総合フォーラム(2016年11月26日)で最終報告が行われた。


(※1)本報告書2.2.3参照