アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)フィリピン技術支援(フェーズ5)

  • 地域:フィリピン

  • テーマ:金融資本市場

「アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI:Asian Bond Markets Initiative)」は1990年代後半に起きたアジア通貨危機を教訓に、域内の貯蓄を域内に還流させ、特に現地通貨建て債券市場を発展させることで金融的な安定性を確保するための地域協力の仕組みである(2003年発足)。ASEAN+3(アセアン加盟10か国と日本・中国・韓国)財務大臣・中央銀行総裁会合で具体的なアクションが決定されるこの枠組みにおいて、アジア開発銀行(ADB)主導による法規制、インフラ、債券発行・需要喚起などのタスクに応じた地域単位の支援と、アセアン事務局が所管する国別支援がある。本件はフィリピンの債券市場育成を目的とした技術支援を行う後者の国別支援プログラムである。

当社はこれまでアセアン事務局より「アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)フィリピン技術支援」案件を連続して委託された実績を有する。第5フェーズに当たる本件は2015年10月から2017年3月の期間に実施されたものだ。概要は以下の通り。

フィリピンの債券市場はアセアン諸国の中でも比較的長い歴史を有する一方で、対GDP比の市場規模、上場株式時価総額、銀行貸出残高などの点で、マレーシア、タイ、シンガポールに比べて発展途上段階にあるのが実情である。フィリピンの金融当局は、これまでもABMIの枠組みを通じ、ETFや証券化商品などの開発、債券指数の導入、ペソ建て起債枠組みの強化など債券市場の厚みを増すことを意識したテーマによる技術支援を受けてきたが、当社は本第5フェーズにおいて、以下4テーマを中心とした技術支援を行っている。
(1)社債市場の発展・深化に向けた提言
(2)ETF市場の発展に向けた提言
(3)ペソ建て債券のオフショア起債を巡る法制度の確認
(4)ISINコード付番制度確立に向けた支援

フィリピンの債券市場では、発行体が限られる上に、起債コストの高さや発行に至るまでの期間が長い等の問題が指摘できるほか、投資家層の薄さや投資家にとってのインセンティブ不足、プロモーターとしての仲介役を担う証券会社の脆弱さなどの諸課題も山積している。ETF市場は2013年12月の第1号上場が実現したものの、債券ETFを含めてその後のペソ建て債券市場の広がりにはつながっていないのが現状である。

現地で2回開催したワークショップを通じて、カウンターパートであるフィリピン中銀(BSP)をはじめ金融当局並びに関連機関と以上の諸課題について情報を共有するとともに、今後の債券市場発展のための諸課題解説に関する提言を行っている。また、本技術支援の活動の結果、ISIN等証券識別コードを付番する国家付番機関(NNA:National Numbering Agency)の創設に向け、国際的な登録機関ANNA(Association of National Numbering Agency)が推奨するベストプラクティス準拠の体制構築が開始されている(実務担当は、フィリピンの証券監督委員会(SEC)である)。