アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)ミャンマー技術支援(フェーズ3)

  • 地域:ミャンマー

  • テーマ:金融資本市場

「アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI:Asian Bond Markets Initiative)」は1990年代後半に起きたアジア通貨危機を教訓に、域内の貯蓄を域内に還流させ、特に現地通貨建て債券市場を発展させることで金融的な安定性を確保するための地域協力の仕組みである(2003年発足)。ASEAN+3(アセアン加盟10か国と日本・中国・韓国)財務大臣・中央銀行総裁会合で具体的なアクションが決定されるこの枠組みにおいて、アジア開発銀行(ADB)主導による法規制、インフラ、債券発行・需要喚起などのタスクに応じた地域単位の支援と、アセアン事務局が所管する国別支援がある。本件はミャンマーの債券市場育成を目的とした技術支援を行う後者の国別支援プログラムである。

当社はこれまで「アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)ミャンマー技術支援」案件を連続してアセアン事務局より委託された実績を有する。第3フェーズの本件は2015年7月から2017年1月の期間に実施されたものである。概要は以下の通り。

ミャンマーでは2011年の民政政権の誕生以降、様々な経済改革が進展してきた。この過程で国債の発行は政府にとって財政上重要な資金調達チャネルの一つになっている。ミャンマーにおける国債は1993年以来20年以上の発行実績があるものの、必要時にその都度発行する形式を採用、すなわち財務予算管理と一体となった計画的な発行は従前に行われてこなかったのが実態だ。また、国債の投資家についても、一部の商業銀行が国債の大半を保有する状況でありその他民間主体への市中消化は進んでこなかった。本フェーズでは、過去2フェーズで実施した債券市場発展の礎となるロードマップや提言を踏まえ、以下の4テーマを中心に技術支援を展開することとなった。
(1)国債発行方法変更の実現
(2)国債流通市場の育成に向けた提言
(3)国債以外の債券発行の実現可能性調査
(4)中銀の国債買い取りプログラムの提言

IMFやADB等他ドナー機関との協働により現地金融当局への支援を進めた結果、技術支援期間中の2016年9月に新しい発行方式の下で国債の発行開始に漕ぎ着けた。一方、国債流通市場の整備や証券会社含む金融仲介機能を有する機関での債券取引、そして機関投資家や個人投資家層の拡大など、更なる発展に必要な諸課題も指摘でき、最終報告書において今後の解決に向けた具体的な提言も行っている。

具体的な支援内容としては、カウンターパートであるミャンマー中央銀行(CBM)、財務計画省(MOPF)及びミャンマー証券監督委員会(SECM)などの金融当局に対して講演を複数回実施したほか、債券市場発展により受益者と想定される民間商業銀行などの金融機関や現地機関投資家を招いてのワークショップも同様に複数回開催された。これらのイベントを通じ、周辺アジア諸国における債券市場発展事例を紹介するとともに、今後ミャンマー金融市場の発展に寄与する政策を含む提言を行っている。

現地金融当局との協議の様子