中国での福祉用具レンタル制度構築事業実施に関する調査

  • 地域:中国

  • テーマ:産業調査

2014年末時点で、中国では65歳以上の人口が1億3,755万人であり、既に日本の総人口を上回っている。一人っ子政策の影響で高齢化比率が急速に高まる反面、急激な経済発展によって貧富の格差は拡大し、介護福祉政策も未整備といった現状である。中国では高齢化社会対策が待ったなしの状況となっているが、同時に65歳以上の人口規模が示すように同国においては介護福祉市場の巨大化も見込まれている。そこで、福祉用具のビジネス展開を中心に、日本の介護産業の中国への進出可能性を主たるテーマとした調査を実施した。

中国の介護社会は、

(1)在宅介護比率が90%と高く、親の面倒は子供が見るものという「親情介護」の概念が強い

(2)経済発展により貧富の格差が拡大する中で高齢化社会を迎えている

(3)介護福祉に関する法制度が十分に整備されておらず、日本のような介護保険制度がない

といった特徴を有している。結果的に介護福祉産業が発達しておらず、優秀な人材も流入しづらいため、益々介護福祉産業が発達しない悪循環が生じている。

一方、いち早く高齢化社会を迎えた日本は、長年に亘り介護福祉への諸課題に対峙してきており、介護サービス、福祉用具製造販売といった介護福祉産業が高度に発展している。中国にはこの先巨大な介護福祉市場の形成が見込まれており、日本の同産業界にとって大きな商機が潜んでいると考えられる。中国ではホスピタリティの高い日本の介護スタイルに学ぶ姿勢が強いと言われており、日本の介護福祉関係者によるさらなる中国進出が期待されるところである。

そこで、本調査ではあらためて①中国の社会背景、②中国の介護福祉政策の歴史、③中国における介護福祉産業の経緯をそれぞれ調査し、介護福祉に関する日中比較を通じて、中国で発展余地のある介護福祉産業と日本の介護福祉産業の進出可能性について取りまとめた。さらにそれらを基に、日本ではレンタルが一般的となっている福祉用具の展開可能性について詳しい検証を行った。そして、本調査のまとめとして、「中国での介護福祉分野の発展に向けて期待されること」および「中国での介護福祉産業の市場成長を日本が取り込むためのアクション(=官民それぞれが執り得る施策等)」について整理した。

「中国での介護・福祉分野の発展に向けて期待されること」については、1. 土台となる介護保険制度の整備、2. 外国資本の積極的な呼び込み、3. 介護人材の育成システムの構築について論じた。「中国での介護福祉産業の市場成長を日本が取り込むためのアクション」については、1. 介護保険制度の制度設計支援、2. 福祉用具の展開(販売)、3.福祉用具輸出の諸課題に対する支援策、4. 福祉用具レンタル事業、5.介護関連サービスの展開、6. 福祉用具の専門人材育成の仕組み作り、7. 介護・福祉産業のインフラ輸出パッケージの基礎作りについて論じた。

尚、2015年11月北京にて「中日介護産業セミナー」と題し、中国の同業界関係者に対して本調査の調査結果の発表を行った。
(委託元:経済産業省 調査期間:2015年7月より2016年1月)