ベトナム国 新生児黄疸診断機器導入を通じた新生児医療向上案件化調査

  • 地域:ベトナム

  • テーマ:官民連携

ベトナムにおける新生児医療の現状を把握し、医療機器メーカーのベトナムにおけるニーズ調査、対象製品の試験導入を行った。新生児黄疸の検査及び診断の水準向上に役立てるとともに、同製品のベトナムの公的医療システムへの導入可能性を調査し、将来の具体的なODA案件を立案した。

ベトナムにおいては、ドイモイ(刷新)政策導入に基づく市場経済化とその後の高成長に伴い、社会インフラの水準も急速に向上している。保健医療についても、制度改革、日本を含む各国の支援等によって、各種指標が顕著に改善している。しかし、引き続きいくつかの課題が指摘されており、新生児医療を含む母子保健はその一つである。保健医療の中心である公的医療機関は、特に地方・農村部において、施設、医療機器、人材等の不足のため十分なサービスの提供が困難であること、その結果、大規模病院に患者が過度に集中していることも課題である。

黄疸とは、血液中の「ビリルビン」の量の増加によって皮膚が黄染する症状である。新生児の黄疸は多くが生理的な症状であり、生後数日間でビリルビンの量は減少し、黄疸も消失する。しかし、ビリルビン値が高い状態が続いた場合、中枢神経障害を引き起こし、重い後遺症につながるおそれがある。このため、黄疸は新生児の重要な管理項目とされ、現在では診断、治療方法が確立された「治る病気」となっている。しかし、途上国においては、医療水準の問題に加え、診断に不可欠な血液の検査機器が不足しているため、適切な治療が困難であり、依然として新生児黄疸の重症症例が多く発生している。

理化学系・医療系分析機器メーカーである株式会社アペレ(埼玉県川口市)は、途上国の子どもの健やかな成長に役立ちたいとの考えから、自社の強みである光学技術を活用し、小型・軽量かつ価格を抑えた新生児黄疸検査の専用機器を開発、世界各国に販売している。同社は、ベトナムにおいても同機器が活用される可能性があると推測し、以前から準備してきた生産拠点の設立とともに、国内市場の開拓も進めたいと考えた。

そこで、大和総研と共同応募・採択された「案件化調査」(※1)において、ベトナムの新生児医療や黄疸の診断・治療の状況を調査し、地方の公的医療機関への製品紹介・試用等を実施した(調査期間:2013年10月~2014年3月)。同調査を通じて、同機器に対するニーズを確認するとともに、医療関係者から高い評価を獲得し、ベトナム国内市場の開拓、将来の近隣国への展開に向けた大きな一歩を踏み出している。


(※1)平成25年度外務省政府開発援助海外経済協力事業(本邦技術活用等途上国支援推進事業)委託費「案件化調査」