ミャンマー人間ドック等予防医療普及促進事業

  • 地域:ミャンマー

  • テーマ:官民連携

本調査は、ミャンマーに於いて予防医療事業を実施するにあたり、予防医療の概念を普及させ、定期健康診断を実施することによって、病気の重篤化を防ぎ、医療費の抑制も図ることを目的としている。

2014年10月から2015年7月の期間に実施された「ミャンマー人間ドック等予防医療普及促進事業」の背景と概要は以下の通りである。

ミャンマーの医療体制の現状は極めて脆弱で、治療困難な重篤患者に対応するトップ水準の病院(国立病院)でJICAが医療機器援助を行うなどの施策を行っているものの、医療水準の改善は大きな課題となっている。富裕層や外国企業の駐在員の場合は、手術を伴うような高度治療は、タイやシンガポールへ患者を移送し施術しているのが実状である。

一方、医療制度を含む社会保険制度では、雇用者と企業とが給与の一定額を政府に支払って医療費に充てる義務があるが、保険制度による指定病院の医療水準があまりに低いことから、実際はほとんど機能していないのが現状である。このため、家族の一人がひとたび重篤な病気に罹患すると、家族全体が貧困層に落ち込んでしまうとも言われている。

本案件では、JICAの支援を得て、ミャンマーにおいて予防医療の概念を普及させ、定期健康診断を実施することによって、病気の重篤化を防ぎ、医療費の抑制も図ることを目的としている。その具体的な方策として、社会医療法人社団三思会が運営する神奈川県の病院がミャンマー最大都市のヤンゴンに健診所を開設して、ミャンマー企業の従業員に対して日本と同品質の定期健診を低コストで実施するほか、日本人駐在員や富裕層に対しては、人間ドックの提供を図ることを想定する。

本案件では、ミャンマー保健省の協力を得て、具体的には、(1)同省職員および国立総合病院(ヤンゴン、マンダレー、首都ネピドー)の医師・看護師向けに予防医療についてセミナーを開催、(2)ヤンゴン総合病院および保健省幹部職員を日本に招聘して、定期健康診断実施に関する実務を講義、(3)ミャンマーにおける医療保険制度の調査、(4)ヤンゴンにおける健診所開設のフィージビリティスタディ、を行った。

大和総研では、JICA・三思会およびミャンマー保健省と緊密な連絡を取りながら、本案件全体のコーディネイトを行った。本件調査を通じて、在ヤンゴンの日系企業をはじめ、ミャンマー現地企業からも、現地の健康診断の信頼性が極めて低いことから、日本品質での医療診断ができる健診所の開設に強い期待感が示された。