新興国経済の実情及び成長方向性にかかる調査・分析(対象19ヵ国)

  • テーマ:投資環境

ラオス、カンボジアなどの新興国19ヵ国に対して、文献調査、マクロ統計分析、ヒアリング等を通じて、新興国各国経済の構造、経済及び貿易投資の政策・制度、今後予測される成長の方向性を分析した。

2013年12月から2014年3月の期間に実施された「平成25年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(新興国経済の実情及び成長方向性にかかる調査・分析)」(委託元:経済産業省)の目的と内容は以下の2点である。

① 新興国市場が年々その規模を拡大させている中、我が国企業にとっても同市場の重要性は増してきている。その中で企業が進出を検討していくにあたっては、各々の国・地域の経済実情及び成長方向性等の情報をしっかりと把握する必要がある。これを踏まえ、指定された19の新興国(ラオス、カンボジア、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ロシア、カザフスタン、ウクライナ、エジプト、トルコ、オマーン、イラン、モロッコ、ナイジェリア、エチオピア、アンゴラ、ガーナ、ジンバブエ、モザンビーク)について、経済及び貿易投資の政策・制度の変遷、構造改革等の効果、第三国との関係(外交・企業活動両面)、潜在的成長力及び成長方向性を分析した。

各々の国の経済実情と成長方向性の把握にあたっては、調査対象19ヵ国を一括比較する「概要編」、個別国について記述する「各国編」の2つに分けた調査報告を行った。「概要編」においては、人口動態、経済指標、世帯購買力、産業構造、貿易構造などに関する一次データをUS Census、IMF、Euromonitor、世界銀行、UNCTADなどから取得の上、比較分析を行った。主要点は下記のとおり。

【人口動態】 新興国の間でも、大きな差が存在。人口ピラミッド上、ロシアやウクライナは少子高齢化が進展し、アジア諸国でも今後は出生数拡大が落ち着く一方、アフリカ諸国は長期的に三角形型の多産構造が維持される見通し。

【世帯購買力】 1人あたりGDPが3,000ドルに迫ると、中間層(世帯可処分所得7,500ドル超)がボリュームゾーンとなり、購買力の拡大が期待される。

【貿易構造】 機械類や輸送用機器を輸入に頼る構造は多くの新興国で共通するが、輸出面においては東南~南アジア諸国に見られる軽工業品主体の構造と、資源輸出に頼る国々との間に明確な分化が生じている。

「各国編」においては、主要なデータは他国との比較も行いやすいよう整理する一方、産業構造や投資誘致政策の概説、近年の動きに関しては定性的な記載も交えることで個別事情の調査報告にも重点をおいた。

② ①で得られた結果は、平成26年版通商白書などへの掲載を通じて、的確な経済政策及び通商政策の企画・立案に資することが期待された。そのため、特に重要と考えられた(1)上記の新興諸国と中国との関係、(2)中央アジア・中東・アフリカ拠点(カザフスタン・トルコ・モロッコ)からの周辺国への事業展開可能性、の2点についてはトピックスとしての追加整理を行い、現状や課題のとりまとめを行った。(1)の中国との関係においては、近接する東南アジア諸国や資源を有するアフリカ諸国では中国への貿易依存度が高まりつつあるのに対し、ウクライナ・エジプト・トルコ・モロッコなどヨーロッパ経済圏との結びつきが強い地域では比較的変化が小さいといえる。また、(2)においては、カザフスタンの物流拠点としての可能性、トルコ・モロッコの地域拠点としての可能性が示唆された。