大和総研
上場企業の「健康経営度」調査結果を発表

社員の健康管理の重要性は認識している、 しかし、健康情報の活用や健康増進対策には課題が残る

2014年9月25日

株式会社大和総研

株式会社大和総研(代表取締役社長:深井崇史、本社:東京都江東区)では、企業経営コンサルティングの一環として、組織設計や業務改善、人事制度など人材に関わるソリューションを提供してきました。労働生産性に大きく影響する社員の健康については、労務管理として捉えるのではなく、むしろ生産性向上にむけた投資戦略として取り組むべき課題になっており、経営戦略において欠かすことのできないテーマといえます。

少子高齢化により将来的な労働力の減少が懸念されるなか、企業の生産性や収益性を高める目的から、職場のダイバーシティ、女性の活躍推進、ワークライフバランス等、「働き方」を見直す様々な施策が検討・導入されつつあります。過去に経験したことのない社会環境の変化を前に、それぞれの企業が効果的・効率的な対策を模索している段階といえるのではないでしょうか。

このたび、大和総研では「健康経営度」に関するアンケート調査を実施しました。「健康経営度」とは、従業員の健康増進に向けて積極的な取り組みを進めることにより、労働生産性の向上や医療費の抑制を図り、企業価値の向上を目指すという考えのもとに展開される、一連の施策の実施状況を評価するものです。

本調査は、「健康経営度」に関する各社の取り組み状況を把握・分析することを目的として、東証1部・2部上場企業2,353社を対象に、2014年6月から7月にかけて実施したものです(有効回答数251社、回収率10.7%)。大和総研では、回答結果から上場企業全体の「健康経営度」分析に加え、業種別、規模別、平均年収別に傾向分析を試みました。

【調査結果(抜粋)】

  1. 96.8%が社員の健康状況を把握していたが、対策の実施が不十分または未実施である企業が62.1%にのぼった。
  2. 90.6%の企業で経営側は社員の健康を意識していた。一方、従業員側は「健康増進に対する意識が高い」と回答した企業が58.6%であった。また、従業員の意識が部署や年齢により温度差がある企業が82.4%にのぼった。
  3. 健康増進に関して情報(勤怠や健診データ等)は共有されているが、生産性向上に役立っていないと回答した企業が53.0%と過半を占めた。
  4. 業種別の比較では、総合得点は金融業が最も高く、次に製造、非製造業の順であった。
  5. 企業の規模(従業員数)別及び人件費(平均年収)別の比較では、規模が大きいほど、また平均年収が高いほど得点率が高い傾向が見られた。

【調査結果の概要】

1.健康経営度の全体分析について

本調査では、各社の健康経営度について25の質問項目にご回答いただいた。25の質問項目は、内容から以下の7領域(因子)に分類している。

<健康経営に関する7つの因子>

  1. 運営全般:社員の健康状況の把握、健康増進のための取り組み状況など
  2. 役割分担:管理職や一般社員などの健康増進に対する意識、責任分担など
  3. 体制:健康診断データや健康増進に関する情報の共有・活用体制
  4. 長時間労働対策:時間管理、長時間労働対策の実施状況
  5. メンタルヘルス対策:メンタルヘルスに関する対策の実施状況
  6. 健康増進に対する意識:経営者、管理職、社員それぞれの健康増進に対する意識
  7. 企業独自の取り組み:健康増進に関する独自の取り組みの実施状況

全体の最高点は100点(1社)、最低点は32点(1社)であり、平均点は68.6点であった。

運営全般について

  • 全体の68.5%の企業が「社員の健康増進のための組織」が設置されていた(図表1)。
  • 全体の94.8%の企業が「社員の健康状況を把握」していたが、「医療費の傾向分析を行い、課題が明確になっている」企業は15.9%にとどまった(図表2)。
図表1 社員の健康増進を行うための、取り組み体制(組織)と施策はありますか?
図表2 社員の健康状況を、どの程度把握されていますか?

役割分担について

  • 「所属長が健康増進担当者(※1)として、自らの役割を認識している」と回答した企業の割合は78.1%、役割の認識が不十分と回答した企業は21.9%であった(図表3)。
  • 「所属長に対して、健康増進活動の重要性が周知されている」企業は63.3%であり、「所属長の労務管理の評価にも反映している」企業は13.5%にとどまった(図表4)。
図表3 所属長は健康増進担当者として、自らの役割を認識していますか?
図表4 所属長に対して健康増進活動の重要性の周知と、労務管理の評価への反映はされていますか?

体制について

  • 組織的に情報を共有する仕組みがどの程度整備されているかについて、「健康増進担当者間で情報は共有されているが、社員の生産性向上には役立っていない」と回答した企業が53.0%と過半数を超えていた(図表5)。
図表5 組織的に情報(勤怠や健診データ等)を共有する仕組みが、どの程度整備されていますか?

長時間労働について

  • 99.2%とほぼ全ての企業が「時間管理を徹底」していると回答した。しかしながら、「長時間労働の対策の実施が不十分」と回答した企業が52.2%と過半数に達していた(図表6)。
  • 長時間労働対策の目標設定とフィードバックについて、「目標設定とフィードバックを行っている」と回答した企業が44.2%だった(図表7)。
図表6 長時間労働対策を適切に実施していますか?
図表7 長時間労働対策の目標設定とフィードバックをどの程度行っていますか?

メンタルヘルスについて

  • メンタルヘルス対策の実施について、96.0%の企業が「社員の健康状況を把握」していると回答した。しかしながら、「メンタルヘルス対策の実施が不十分」もしくは「メンタルヘルス対策を実施していない」と回答した企業が57.8%にのぼった(図表8)。
図表8 メンタルヘルス対策を適切に実施していますか?

健康増進に対する意識について

  • 90.6%の企業で「経営側が社員の健康を意識している」ことが分かった。「意識をしているが不十分」と回答した企業は36.3%であり、より高い意識が必要と考えていることがうかがえる。
  • 従業員側は「健康増進に対する意識が高い」企業が58.6%であった。また、「意識はあるものの、部署や年齢によって温度差がある」と回答した企業が82.1%にのぼった(図表10)。
図表9 経営側は社員の健康に関する意識は高いですか?
図表10 健康増進に対する社員の意識はどうですか?

企業独自の取り組みについて

  • 生活習慣病対策の実施について、全体の96.8%の企業が「社員の健康状況を把握」していたが、「生活習慣病対策の実施が不十分である」もしくは「生活習慣病対策を実施していない」と回答した企業が62.1%にのぼった(図表11)。
図表11 生活習慣病対策を適切に実施していますか?

2.業種別、規模(従業員数)別、人件費(平均年収)別の特徴について

企業の業種、規模(従業員数)、人件費(平均年収)の側面から、健康増進に対する取り組み状況を分析した。

2.1 業種別(製造業、非製造業、金融)分析

  • 回答企業を製造業、非製造業、金融の3つに分類し、結果を比較した。
  • 総合得点は、金融業が最も高く、次に製造業、非製造業の順であった(図表12)。
  • 製造業は、労働安全衛生に関する意識が高く、安全管理という側面から健康増進を促す企業文化が醸成されることが多いことが、高得点の一要因と推察される。
  • 3業種それぞれにおける得点率(※2)を比較したところ、非製造業は7要素いずれにおいても3業種の中でもっとも得点率が低く、健康増進に対する意識、責任の明確化、対策の実施状況などの面で課題が多い状況がうかがえる。
図表12  業種別の得点比較(単位:ポイント)

2.2 企業規模(従業員数)別分析

  • 企業規模(従業員数)別では、従業員数(連結)が多いほど得点率が高い傾向が見られた(図表13)。7つの領域すべてにおいて、従業員数1万人超の大企業の得点率が最も高かった。
図表13 従業員数(連結)別の得点比較(単位:ポイント)

2.3 人件費(平均年収)別分析

  • 企業の人件費(平均年収)別で比較したところ、平均年収が高い企業ほど得点率が高い傾向がみられた(図表14)。
  • 7因子のうち、運営全般、役割分担、体制は、平均年収別での差が大きい傾向があったが、長時間労働対策およびメンタルヘルス対策については、平均年収別での差が比較的小さかった。社員の平均年収の高い企業では、より充実した健康増進施策の導入が進んでいると推測される。
図表14 人件費別の得点率比較(単位:ポイント)

3.おわりに

今回のアンケートから、大多数の企業が社員の健康管理の重要性を認識していることが分かった。加えて、「社員の健康状況(身体、メンタル)に関する情報を把握・共有しているが、健康増進に向けた対策は不十分」と考える企業の割合が多く、対策に関する課題が少なくないことが浮き彫りとなった。対策を策定するにあたっては、個人の健康情報をどのような観点から分析し、問題とその原因を特定した上で、どのように組織としての対策に結び付けるかが重要となる。そのプロセスが確立していない現状においては、各社とも試行錯誤の段階であることが推察される。

他方、健康増進に対する意識の高さは役職・年齢や部署によってバラツキが大きい傾向がみられ、改善の余地が大きいことが伺えた。社内の意識・行動を変えるには、まずは経営トップが高い意識で臨むことが重要であり、そのうえで所属長や社員一人ひとりの意識と行動を変えていくことが必要であろう。そのために、効果的・効率的な施策を職種や部署など、様々な条件をふまえて策定することが重要といえる。

【健康経営度調査 実施概要】

  • 調査対象社数:東証1部・2部上場企業 全2,353社 (2014年3月末現在/外国企業除く)
  • 有効回答数:251社(製造業115社、非製造業118社、金融業18社)
  • 調査方法:郵送調査
  • 質問数:全25問
  • 調査期間:2014年6月11日(水)~2014年7月31日(木)
  • 調査主体:株式会社大和総研

(※1)ここでは「健康増進担当者」を、人事部、産業医、所属長等と定義している。
(※2)7つの因子別の分析においては、各因子に含まれる設問数が異なるため、因子ごとに満点を100ポイントとした得点率で表している。

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