株価純資産倍率(PBR)

PBRとは?

 PBRとは、Price Book-value(P/BV)RatioまたはPrice to Book(P/B)Ratioの頭文字を取ったもので、1株あたり純資産に対して株価が割安なのか割高なのかを判断するための指標です。日本語では、株価純資産倍率と呼ばれます。

PBRの計算式とその考え方

 PBR(倍)は、「株価÷1株あたり純資産」という計算式で算出されます。分母の1株あたり純資産は、Book-value Per Shareの頭文字を取ってBPSとも呼ばれ、会社の資産から負債を差し引いたものである純資産を、発行済み株式数で割ったものです。純資産は、企業の会計上の解散価値、つまり、会社が解散して資産を分けることになった場合に株主に分配される理論上の金額を表します。1株あたり純資産が大きいほど、株主に分配される資産が多いとみなすことができます。これと分子の株価の比をとることで、理論上の解散価値に対する株価の水準を判断します。

PBRはどのくらいがいいの?

 株価の割安・割高を判断するPBRの基準値は1倍です。1倍を超えるということは、分子が分母よりも大きい値を取る状態、すなわち、解散価値よりも株価が高く評価されていることを意味します。反対に、PBRが1倍を下回る時は、解散価値よりも株価が低いことを意味します。もっとも、株価は投資家の予想や期待を反映して形成されるものであり、PBRが1倍より高い(低い)だけで必ずしも割高(割安)というわけではありません。他の財務指標や他社との比較などを通じた総合的な投資判断が必要です。

問われる日本の上場企業のあり方

 PBRをめぐっては、2023年3月に東京証券取引所(以下、「東証」)が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」と題した資料を公表し、上場会社に対して経営者の意識改革と積極的な対応の実施を要請しました。背景には、プライム市場の約半数、スタンダード市場の約6割の上場企業でPBRが1倍を割る現状に対する問題意識があります。PBRを高める方法として、増配や自社株買いがあります。増配で配当利回りを高めて投資家の関心をひきつけたり、自社株買いで需給面から株価を下支えしたりするアプローチです。しかし、東証の要請の主旨は、持続可能な成長に向けた研究開発投資や人的資本投資、設備投資、事業ポートフォリオの見直しなどにより、日本の上場企業が経営資源の適切な配分を実現することに対する期待にあります。企業経営の改善が市場評価の向上につながり、その結果として分子の株価が引き上げられる。このような好循環の実現が求められていると言えるでしょう。

レポート・コラム

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