ワシントン条約

 ワシントン条約は、輸出国と輸入国が協力して国際取引規制を実施することで、野生動植物の過度な利用による絶滅を防止し、種を保全することを目的とした国際条約です。正式名称は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)」ですが、1973年に米国のワシントンD.C.で採択(1975年に発効)されたことから、「ワシントン条約」と呼ばれます。英語名称の頭文字から「CITES」(サイテス)と呼ばれることもあります。

 ワシントン条約では、国際取引に規制が必要と考えられる野生動植物の種を「附属書」に掲載します。附属書は、絶滅のおそれの程度が大きい順に「附属書Ⅰ」「附属書Ⅱ」「附属書Ⅲ」の3つに分かれています。附属書Ⅰに掲載された動植物については、商業目的の国際取引が原則として禁止されます。学術目的等の取引は可能とされますが、輸出入国双方の政府による許可が必要となります。

 附属書Ⅱには、現在は必ずしも絶滅のおそれはなくとも、厳重な取引規制がなければ絶滅のおそれが生じると考えられる種が掲載されます。附属書Ⅲは、締約国が自国内での取引規制のため、他の締約国にも協力を求める動植物種を掲載するものです。附属書Ⅱ、Ⅲのいずれも、条件を満たせば商業目的の国際取引も可能とされます。なお、ワシントン条約では、生きている動植物だけでなく、はく製や、加工製品(毛皮、皮革、象牙等を用いた洋服やバッグ、美術品等)も規制対象となります。

 締約国は、附属書に掲載された種に留保を付けることが認められています。留保すると、その種に関しては締約国でない国として扱われ、他の非締約国との国際取引も可能となります。日本は1980年にワシントン条約の締約国となりましたが、条約の締結時には、国内産業保護等の理由からウミガメやタイマイ等について留保していました。国内産業保護を理由として留保していたこれらの種については、1994年のタイマイを最後に留保が撤回されましたが、クジラやサメ、タツノオトシゴ、熱帯ナマコ等のいくつかの種については留保しています。

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