メインフレームをAPI化するソリューション「OpenLegacy」とは

 OpenLegacyとは、米国のOpenLegacy社が提供する、メインフレーム内の業務プログラムをAPI化するソフトウェア製品であり、国内外の金融機関でも採用されるなど関心が高まっています。大和総研ではOpenLegacyのPoC(Proof of Concept:概念実証)を行い、実際にメインフレーム内のプログラムをAPI化するまでの作業工程、所要時間、作成したAPIの性能などを確認しました。
 本記事では、PoCによって得られた知見の中から、API化の作業工程や所要時間を中心に紹介します。

OpenLegacyとは

 OpenLegacyは、米国のOpenLegacy社が提供する、メインフレーム内の業務プログラムをAPI化するソフトウェア製品です。COBOLなどで開発された業務プログラムをOpenLegacyに読み込ませることで、プログラムを自動解析し、「APIの呼び出し元のシステム」と「メインフレーム内のプログラム」を結びつけるアプリケーション(以下、OpenLegacyアプリケーション)を自動生成します。また、OpenLegacyアプリケーションには、「呼び出し元のシステム」と「メインフレーム内のプログラム」を単純に結びつける処理だけでなく、業務プログラムの実行結果を整形・加工する処理や、業務プログラムに無いロジックを追加することも可能です。
 Legacy Integration for Core Legacy Systems | OpenLegacy

メインフレームのAPI化が注目される背景

 大規模データを高速処理できる性能、信頼性/堅牢性、マイグレーションの費用対効果やリスクなどの面から、メインフレームは今後も大なり小なり利用され続けることが予想されます。リサーチ会社のアイ・ティ・アールが2022年8月に行った調査では、国内の各産業分野において25%~40%の企業が将来も活用するとしており、導入率が最も高い金融・保険の企業もレガシーマイグレーションを進めながらも、メインフレームを活用しつづける旨をアナウンスしています。

図 1 業界別にみるメインフレームの活用動向
出所:ITR「IT投資動向調査2023」業種別に見るインフラ/デバイス分野への投資意欲を基に大和総研が作成

 近年はデジタルトランスフォーメーション(DX)が強力に推進されており、メインフレームで構築されたシステムであっても、急速に変化するビジネスの流れに対し、遅滞することなく対応することが求められるようになりました。このような状況下において、メインフレーム内の業務プログラムを迅速にAPI化し、さまざまなシステムから呼び出せるソリューションに関心が高まるようになりました。

OpenLegacy社の紹介

 OpenLegacyは、米国に本社を置くOpenLegacy社の製品です。同社は、2013年にIBM出身の技術者2名によってイスラエルで設立され、2015年にはGartnerより、“インテグレーション”の分野における「Cool Vendor」として採用されるなど注目されています。現在、「OpenLegacy」はメインフレームの導入率が高い金融業界を中心に100社以上の導入実績を有しています。

メインフレーム内の業務プログラムをAPI化 

 メインフレームをAPI化する製品として注目されているOpenLegacyですが、どのようにAPI化を行うのでしょうか? また、APIを公開する際は、流量管理やアクセス管理などを行う必要がありますが、OpenLegacyではどこまで対応しているのでしょうか? 大和総研ではPoCを実施し、実際にAPIを作成することで、これらの観点について確認を行いました。

API化の方法と所要時間

 メインフレーム内のプログラムを外部から呼び出せるようにするためには、外部通信と内部プログラムをリンクさせるOpenLegacyアプリケーションを開発する必要があります。OpenLegacy社からは、開発支援ツールであるローコードツール「OpenLegacy Hub」とSDK(Software Development Kit)が提供されています。複雑なロジックを実装したい、といったケースを除き、基本的にはローコードツールで開発を行います。
 ローコードツールを活用した場合、以下6つの工程でメインフレーム内のプログラムをAPI化できました。

「OpenLegacy Hub」を用いた際のAPI化工程

  1. IPアドレス、ポート番号といった接続先(メインフレーム)情報を「OpenLegacy Hub」に登録
  2. メインフレーム内に配置されているプログラム群を「OpenLegacy Hub」にインポートし、解析
  3. 解析結果をもとにプログラムの実行順序、データの整形・加工といった処理を、「OpenLegacy Hub」の画面上で設定(OpenLegacyアプリケーションの開発)
  4. 「OpenLegacy Hub」からOpenLegacyアプリケーションをエクスポートし、Javaがインストールされている端末でビルド
  5. APIサーバへ、OpenLegacyアプリケーションをデプロイ
    (デプロイすることによって、外部からの呼び出しが可能となる)
  6. APIマネジメントツールと連携させ、セキュリティやアクセス権などを設定

 検証用の簡易なCOBOLプログラムを題材にAPI化を行ったところ、上記1~3の工程をGUI(Graphical User Interface)で行えたこともあり、外部からメインフレーム内のプログラムを呼び出せるようになるまでに要した時間は数時間程度でした。
※上記開発時間から工程4と5で必要となるサーバの調達や設定作業に係る時間は除外しています。

API化に必要なスキル

 GUI(Graphical User Interface)での開発が可能なため、コーディング経験が十分でないエンジニアでもAPI化は可能です。ただし、複雑な業務フローを実装したいケースなどではJava言語でプログラミングを行う必要があること、開発成果物はJavaアプリケーションであることから、Java言語のスキルがあるエンジニアが参画することが望ましいです。

API管理機能の有無

 APIを外部に公開する場合、セキュリティ、アクセス管理、API管理、といったAPI自身を運用管理する機能も重要です。OpenLegacyの場合、上記機能を自社製品に組み込むのではなく、管理機能を有している他社製品と連携する方式をとっています。そのため、APIの公開時は、別途、「RED HAT 3SCALE API MANAGEMENT」、「IBM API Connect」、といったAPIマネジメントツールを導入する必要があります。

まとめ

 「OpenLegacy」とは、メインフレーム内に配置されているプログラムをAPI化するソフトウェア製品であり、メインフレームの導入率が高い金融業、情報・通信業を中心に、100社以上の企業で導入実績があります。APIの開発は、基本的にはローコードツールを用いてGUI(Graphical User Interface)で行います。ただし、複雑なフローを実装するケースなど、GUIでの開発が難しい場合は、Java言語で開発します。当社で行った検証用のCOBOLプログラムのAPI化においては、ローコードツールのみで完結しました。その際コーディング作業が発生しなかったこともあり、開発の所要時間は数時間でした。ローコードツールに基本的な機能が備わっていることもあり、多くのケースにおいてGUIのみでAPI化は可能と推察します。従って、コーディング経験が十分でないエンジニアでも対応可能であり、要員調達の面でメリットがある製品といえます。
 ただし、OpenLegacyにはAPI管理などの機能は備わっていません。開発したAPIを公開する際は、別途、APIマネジメントツールなどと組み合わせる必要があります。

 大和総研ではメインフレームから分散系、クラウドまで幅広くシステムの開発・運用/保守を行っています。今回紹介したメインフレームのAPI化以外にも、さまざまなレガシーマイグレーションのソリューションを有しています。ご要望・ご不明点などがありましたら、ITソリューションサービスサイトよりお問い合わせください。

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