失敗しないSalesforce導入 - 事前にやるべき2つのポイントを解説

 Salesforceとは、世界トップシェアを誇るクラウド型CRMです。本記事では、Salesforceの概要と主な機能、導入に失敗しないためにやっておくべき2つのポイント「データモデルの作成」と「業務フローの整理」について解説します。

 なお、本記事は大和総研のITソリューションサービスサイトにて公開しているウェビナーの内容を本サイト向けに再構成したものです。ウェビナーでは実際のSalesforceの画面を操作しながら、Salesforceの機能や導入ポイント具体例などを詳しく解説していますので、以下のリンクからぜひご覧ください。
 【失敗しないSalesforce導入】導入前に絶対やるべきデータモデル作成・業務フロー整理のポイント

Salesforceとは

 Salesforceは、世界トップシェアのクラウド型CRMプラットフォームです。営業・マーケティング・コマースなど多数の分野で製品を提供しています。
 中でも中核を担っているのが以下の3製品です。これらのことを指して「Salesforce」と呼ぶ場合もあります。

  • Sales Cloud: 営業支援系の機能を取りそろえたSaaS製品
  • Service Cloud: カスタマーサポート系の機能を取りそろえたSaaS製品
  • Salesforce Platform: Sales Cloud、Service Cloudの中の基本的な機能を提供するPaaS製品

 上記の他にもマーケティングツールやBIツール、コミュニケーションツールなども提供されています。

図. Salesforceの機能イメージ
出所:大和総研作成

 本記事では、上記の3製品をまとめて「Salesforce」として、次章より機能などを解説していきます。
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主な機能

システム利用者向け機能

 システム利用者は、業務遂行に必要となるデータをSalesforceに登録し、登録されたデータを照会することができます。また、Salesforce内で管理しているデータ同士を関連づけたり、レポートやダッシュボード機能を用いて各種データをグラフ等でわかりやすく可視化したりすることも可能です。これらの多様な機能により、商談状況などを一目で把握することが可能です。

※「データ同士を関連づける機能」の具体例について、以下のウェビナーでSalesforceの画面操作をしながら動画で解説しています。
【失敗しないSalesforce導入】導入前に絶対やるべきデータモデル作成・業務フロー整理のポイント
 05:37 Salesforceとはどんなものか? Salesforceの利用イメージ

システム管理者向け機能

 システム管理者の視点で見ると、Salesforceにはノーコードまたはローコードで設定できる標準機能と、Salesforce独自の言語でコーディングを行うことで柔軟なカスタマイズができる環境が提供されています。

 標準機能の中で中核となるのが「標準オブジェクト」です。
 Salesforceにおける「オブジェクト」とは、一般的なデータベースにおける「テーブル」に該当します。たとえば取引先、商談、契約など、営業業務で通常利用されるデータは「標準オブジェクト」として、初期状態で格納先が用意されています。
 また、自社業務に合わせて独自オブジェクトを定義することも可能です。これを「カスタムオブジェクト」と言います。
 さらに、レポートやダッシュボード、アクセス権限の管理、セキュリティ機能など、オブジェクトに付随する多くの機能も用意されています。

 これらの機能は基本的にノーコードで設定することができますが、さらに複雑な要件を実現するためのカスタマイズ機能として「ビルダー」があります、ビルダーを利用すれば、画面やアプリケーションをニーズに合わせてローコードで作りこむことも可能です。また、Salesforceの独自言語である「Apex」や「LWC Lightning Web Component」という言語を利用すれば、本格的に追加機能の開発を行うこともできます。

 Salesforceを組織に浸透させるためには、自社の業務に合わせてSalesforceの多様な機能を組み合わせ、使いこなす必要があります。

Salesforceの導入でよくある失敗

 ここまで、Salesforceの概要と主な機能について説明しました。
 本章からはSalesforceの導入に関するポイントを説明していきます。

 お客様とお話ししている中で、Salesforce導入にあたってのイメージとしてよく聞く話に、以下があります。

  • Salesforceを導入すれば営業がうまくいく
  • SaaSだから設定は簡単
  • カスタマイズをするほど使いやすくなる

 これらのイメージに共通するのは、製品・機能の全体像を把握せず、断片的な理解のみで安易に判断してしまっていることです。製品を正しく理解しないまま導入を進めると、それぞれ以下のような失敗につながるリスクがあります。

導入さえすれば営業がうまくいく

 Salesforceは、導入すれば成功する、という魔法の杖ではありません。あくまで業務のための道具であり、導入しても自社の業務にマッチせず現場社員が十分に活用することができなければ、営業業務の生産性向上にはつながりません。

SaaSだから設定は簡単だろう

 SaaSはインフラからアプリケーションまですべて用意された状態で提供されるサービスであるため、契約さえ完了すれば、手軽に使い始めることも可能です。
 しかし、Salesforceは非常に多くの機能を備えており、設定項目も多岐にわたるため、十分な知識を持って事前の設定を行わないとデータの重複やつぎはぎが発生し、組織内でのデータ利活用が進まない状態となります。また、権限の設定やセキュリティの設定が不十分だと、情報漏洩等のセキュリティリスクにもつながります。

カスタマイズするほど使いやすくなる

 Salesforceは基本的にSaaSとして提供されますが、PaaS(インフラ・ミドルウェアをクラウドベンダが管理・提供し、利用者はその上でアプリケーションのみを開発・管理・利用すればよいクラウドサービス)としても利用できるため、柔軟なカスタマイズが可能です。しかし、カスタマイズに頼りすぎるとメンテナンス性が低下し、属人化を招くリスクも拡大します。

 これらの失敗を回避するためには、Salesforceの特性をよく理解し、後述する「データモデルの作成」と「業務フローの整理」を事前に行うことが重要です。

導入前にやるべき2つのポイント

 ここまでの内容を踏まえて、導入前に準備しておくとよいポイントについて解説します。やっておくべきは以下の2点です。

  • データモデルを作成する
  • 業務フローを整備する

 それぞれについて次節より説明していきます。

データモデルを作成する

 データモデルとは、業務遂行のために登録する必要があるデータとその関係性を表現する図のことで、システム設計の骨格を成す要素です。
 ※データモデルについては、用語解説「概念データモデル」で詳しく説明しています。

 データモデルの作成がSalesforceの導入時に重要である理由は、Salesforceがデータモデルを忠実に表現するデータ登録・照会画面を自動的に提供するアプリケーションであるためです。
 前述の「主な機能」にて、データ同士を関連づける機能について説明しました。事前にデータモデルの設計ができていなければ、関連づけるべきデータに考慮漏れが発生するなど、ほしいデータにたどり着くための適切な関連づけができず、使い勝手の悪いシステムになってしまいます。

 一般的なシステム開発ではデータモデルの作成は必ず行われるものですが、SalesforceはSaaSとしてサービス提供されている側面があるため、通常のシステム開発と同様にはじめにデータモデルを作成するべきであるということがあまり知られていない、または重視されていないケースが多く見られます。

データモデルの作成方法

 データモデルの作成方法や、Salesforceにデータモデルを適用する際のポイントについては、ウェビナーにて詳しく解説しています。

【失敗しないSalesforce導入】導入前に絶対やるべきデータモデル作成・業務フロー整理のポイント
 11:09 具体的に何をしておけばよいか? データモデル作成

業務フローの整理

 データモデルを固めたら、次は業務フローの整理を行います。

 業務フローとは、業務の流れをフロー形式で可視化したものです。
 一般的に、パッケージソフトやクラウドサービスを導入する場合、業務をツールに合わせて変えることが効果的であると言われています。確かにその通りではありますが、日本企業の場合、システムをフルカスタマイズで構築し、できるだけ既存業務に合わせることに慣れているため、多くの企業は業務自体を積極的に変えていくことを苦手としています。

 Salesforceは豊富な標準機能と柔軟なカスタマイズ性を持つため、業務をSalesforceに合わせて変えていくというアプローチだけでなく、Salesforceを業務に合わせてカスタマイズするということも可能であり、使い方の選択肢が広いことが特徴です。ただし、Salesforceが持つ豊富な標準機能を使わず、Salesforce独自言語のコーディングによるカスタマイズを闇雲に進めてしまうと、属人化やメンテナンス性の低下につながるため、可能な限り標準機能を使い倒すことが理想です。

 Salesforceをどのように実装して業務に適用するかを検討する上で重要になるのが業務フローです。きちんと業務フローを整理しておくことで、Salesforceを効果的に利用することが可能となります。

業務フローを整理する方法

 業務フローを整理する方法や、Salesforceを業務に適用することを想定した場合の業務フロー整理のポイントについては、ウェビナーにて詳しく解説しています。以下のリンクからご覧ください。

【失敗しないSalesforce導入】導入前に絶対やるべきデータモデル作成・業務フロー整理のポイント
 20:38 具体的に何をしたらよいか? 業務フローの整理

おわりに

 Salesforceは多様な標準機能と高いカスタマイズ性を持つため使い方の選択肢が広く、特性を正しく理解して利用することで組織の情報連携・データ利活用の促進に寄与します。Salesforceの導入に失敗しないためには、事前にデータモデルの作成と業務フローの整理を行い、各業務のやり方を紐解き、Salesforceの適用方法を十分に検討する必要があります。また、Salesforceの標準機能を意識しながらあるべき業務フローを描くことが重要です。

 大和総研ではSalesforceを活用したソリューションとして、コンサルティング・導入支援などのサービスを提供しています。大和総研でも業務効率化のためにSalesforceを利用しており、社内で蓄積したノウハウを活かし、お客様の課題解決のご支援ができれば幸いです。
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