- 用語の概要
- テレワークの諸形態
- テレワークのメリット・デメリット
- テレワークを実現するICTツール
- テレワークとセキュリティ
- 参考文献
- 関連するウェビナー
- 関連する事業・ソリューション
- レポート・コラム
用語の概要
テレワーク(Telework)とは、総務省や厚生労働省の定義によれば、「情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)を活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」のことです。テレ(tele)は離れていることを意味し、ワーク(work)と組み合わせた造語です。
テレワークと類似の言葉にリモートワーク(Remote Work)がありますが、リモートワークは、「オフィスから離れた場所で働く」という「場所」に着目した概念であるのに対し、テレワークは場所だけでなく時間的にも柔軟な働き方を意味し、より多くを包含する概念とされています。(*1)
テレワークの諸形態
テレワークが包含する代表的な概念として、在宅勤務やモバイルワーク等が挙げられますが、総務省はテレワークを以下のように雇用型と自営型に分類した上で、さらにそれぞれを細分化した諸形態を示しています。(*2)
雇用型:企業に勤務する被雇用者が行うテレワーク
- 在宅勤務:自宅を就業場所とするもの
- モバイルワーク:施設に依存せず、いつでも、どこでも仕事が可能な状態なもの
- 施設利用型勤務:サテライトオフィス、テレワークセンター、スポットオフィス等を就業場所とするもの
自営型:個人事業者・小規模事業者等が行うテレワーク
- SOHO:主に専業性が高い仕事を行い、独立自営の度合いが高いもの
- 内職副業型勤務:主に他のものが代わって行うことが容易な仕事を行い、独立自営の度合いが薄いもの
また、観光庁や環境省、地方自治体等が推進するワーケーション(ワーク=Workとバケーション=Vacationを合わせた造語)もテレワークの1形態と考えられます。
テレワークのメリット・デメリット
日本政府は2010年代後半から働き方改革に伴ってテレワークを推進してきましたが、2020年2月以降の新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業で急速にテレワークの導入が進みました。これにより、これまで以上にテレワークについてのメリットやデメリットの調査や議論が盛んになってきました。主に以下のような点です。(*2)(*3)(*4) (*5)(*6)(*7)
テレワークのメリット
- 業務効率化
- 生産性の向上
- 人材確保
- 離職防止
- 事業継続性の確保(BCP対策)
- ワーク・ライフ・バランスの向上
- コスト削減
- 地域活性化
- 多様な人材確保
テレワークのデメリット
- テレワーク環境の確保が必要
- セキュリティリスクの増加
- 社員間のコミュニケーション減少
- タスク管理、チーム管理の難易度が上昇
- 自己管理の不徹底によるサボり(生産性低下)
- 公私の境界が曖昧になることによる働き過ぎ
- メンタルヘルスの低下
しかし、このようなデメリットを解消もしくは低減させるようなICTツールも多く存在し、実際にそのようなツールを導入するためのガイドラインや手引きも容易に入手可能です。
例えば、一般社団法人 日本テレワーク協会(*8)が『テレワーク関連ツール一覧』を作成して公表していますし、総務省もテレワークにおけるセキュリティ確保の手引書『テレワークセキュリティガイドライン』(*9)を策定して公開しています。
テレワークを実現するICTツール
最初に記載したテレワークの定義からしてもテレワークを実現するためにはICTツールの活用が必須であり、またテレワークのデメリットを緩和し、メリットをより多く享受するためにも、様々なICTツールを活用することが重要なポイントと言えます。
中でもテレワークを実現するために必ず検討が必要となるのがテレワークシステムの構成方式です。
前述の総務省『テレワークセキュリティガイドライン』(*9)では、基本的なテレワーク方式(システム構成方式)として7つの分類を示し、そのメリット・デメリットや選択する上でのポイントが簡潔に記載されています。
- VPN方式
- リモートデスクトップ方式
- 仮想デスクトップ(VDI)方式
- セキュアコンテナ方式
- セキュアブラウザ方式
- クラウドサービス方式
- スタンドアロン方式
ただ、ICTツールやサービスの進化は速いので、自社の業務要件やセキュリティ要件に照らし、最適なソリューションは何かを常にウォッチしておくことが大切です。例えば、高度なセキュリティが実現できる反面、大がかりなシステム構成が必要で初期投資が大きいと言われている「VDI方式」ですが、近年はこれをサービスとして提供するDaaS(Desktop as a Serviceの略)が登場し、大きく成長してきています。
例えば、現在、大手クラウドサービス事業者が以下のようなDaaSを提供しており、大きな初期投資が不要でスモールスタートが可能です。
上記は一例ですが、他のICTツールも同様に次々と新しいサービスや製品が登場しているので、自社のテレワーク環境をより良いものにするためにも日頃の情報収集が欠かせないと言えます。
テレワークとセキュリティ
2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大により日本だけでなく世界中でテレワークの実施率が高まった結果、脆弱なテレワーク環境を狙うサイバー攻撃が非常に活発化していることも事実です。こうした中で注目を集めているセキュリティの潮流が「ゼロトラストセキュリティ」です。
従来の一般的な企業におけるセキュリティ対策は、インターネットと企業内ネットワークを区別し、その境界を強固に保つことによって企業内ネットワークのセキュリティを確保しようとする「境界型セキュリティ」でした。この考え方では企業内ネットワークのアクセス制御は比較的甘くなりがちです。それに対して、近年注目されている「ゼロトラストセキュリティ」は、インターネットと企業内ネットワークを区別せず、常に(=企業内ネットワークであっても)厳密にアクセスの正当性(=不正アクセスでないこと)を検証します。これは、自宅からクラウドサービスを利用したり企業内ネットワークにアクセスしたりするテレワークとの親和性が高く、かつ、企業内ネットワークへの侵入に成功したマルウェアに対しても有効なセキュリティ対策と言えます。
しかし、従来の境界型セキュリティからゼロトラストセキュリティへの移行は高度なセキュリティ知識と運用ノウハウを要するため、ITベンダーやセキュリティベンダーに相談することを検討しても良いでしょう。
(出所:大和総研作成)
※Microsoft, Azure, Windows 365は、米国 Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
参考文献
(*1) 総務省 2021年8月「提言書 ポストコロナの働き方『日本型テレワーク』の実現 ~個人・企業・社会全体のウェルビーイングを目指して~」 p2
https://www.soumu.go.jp/main_content/000763090.pdf
(*2) 総務省「テレワークの意義・効果」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/telework/18028_01.html
(*3) 厚生労働省「テレワーク総合ポータルサイト」
https://telework.mhlw.go.jp/
(*4) 厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト『テレワーク推進の効果』」
https://work-holiday.mhlw.go.jp/telework/effect.html
(*5) 内閣府 2021年6月4日「第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」 p7
https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/pdf/result3_covid.pdf
(*6) 総務省情報流通振興課 2021年4月30日「ポストコロナ」時代におけるテレワークの在り方検討タスクフォース(第1回)資料2-2「総務省 情報流通振興課におけるテレワークの実施状況」p4
https://www.soumu.go.jp/main_content/000748247.pdf
(*7) 国土交通省 2021年3月「テレワーク人口実態調査-調査結果-」 pp34-37
https://www.mlit.go.jp/toshi/daisei/content/001471979.pdf
(*8) 一般社団法人 日本テレワーク協会
https://japan-telework.or.jp/
(*9) 総務省「テレワークセキュリティガイドライン」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/cybersecurity/telework/
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