生物多様性と情報開示

 生物多様性の喪失は、気候変動と同様、地球規模で深刻な危機につながる問題であるとの認識が高まっています。生物多様性が失われると、それまで生物間で保たれてきたバランスが崩れて様々な生物が絶滅、それが生態系に影響を及ぼし、これまで人類が享受してきた自然の恵みが消失するリスクが高まります。
 一部の先進的な企業は生物多様性との関わりについて踏み込んだ情報開示を始めており、注目を集めています。その他の企業に関しても、社会から求められるサステナビリティ情報開示の内容がますます幅広く、かつ深くなる中、生物多様性の重要性を認識し対応の検討を開始している企業が増えています。
 近年では、サステナビリティに関する情報開示基準において、生物多様性に関する開示内容の拡充、義務化に向けた動きが加速しています。これらの基準は企業にとって、情報開示にとどまらず、生物多様性に関する取り組みを整理し戦略を立案するプロセスにおいて非常に有用なガイダンスにもなります。足元ではTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の提言が、生物多様性に関する問題の把握や分析に係る具体的な手法を提示する基準として、強い関心を集めています。
 企業の事業活動に対する持続可能性が強く求められる中、気候変動がそうであるように、生物多様性についても近い将来、真摯に取り組んでいる企業が社会から選ばれるようになると思われます。その上で、生物多様性の情報開示は社会との重要なコミュニケーションツールとなるでしょう。

レポート・コラム

2023年11月10日
生物多様性の開示が本格化 2023年11月10日 | 大和総研 | 中川 葉子

2023年10月25日
TNFDの基準が確定、内容を概説 2023年10月25日 | 大和総研 | 藤野 大輝