ピンクウォッシング(pinkwashing)とは、「真実を覆い隠し、悪いことを良く見せかけること」という意味の「ホワイトウォッシング(whitewashing)」と、同性愛者のシンボルとされる色、ピンクを組み合わせた言葉です。
当初は、国家などがLGBTQ+などの性的マイノリティの包摂や権利保障の面で他国よりも先進的であることを対外的にアピールすることで、その他のマイノリティの排除や人権侵害から目をそらそうとしていることを批判するために生まれた表現です。具体的には、イスラエルの国際的な広報宣伝キャンペーンにおいて「LGBTQ+フレンドリーな」イメージが喧伝されることで、同国のパレスチナに対する抑圧や実効支配が覆い隠されている、という批判から生み出されました。
近年では、これが転じて、行政や企業によるLGBTQ+に関連した施策や取組みの問題点を指摘する際にも用いられるようになっています。企業行動としてのピンクウォッシングの例には、さまざまなものが考えられます。例えば、LGBTQ+コミュニティへの支援をうたってレインボーに彩られた製品を販売しながら、サプライチェーン上では労働者の人権侵害が生じているといった事例です。あるいは、LGBTQ+の人々向けのサービスがあることを宣伝していながら、実際にサービスを提供する際にはLGBTQ+の人々にとって差別的と感じられるような対応をしてしまうといった事例も、ピンクウォッシングではないかと批判の対象となり得ます。
日本においても、LGBTQ+に関する取組みを行う企業の数は増加しています。取組み内容がLGBTQ+コミュニティへの支援につながっているか、バリューチェーンのどこかで別の人権侵害が生じていないか、より厳しく精査していく必要があると考えられます。
レポート・コラム
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