公正な移行(Just Transition)

  “公正な移行(Just Transition)”とは、気候変動対策を通じて負の影響を受ける労働者に対し、働きがいのある仕事を提供し、生活に必要な収入を確保し続けられるよう配慮することを指します。気候変動への対応として、多くの国が温室効果ガス(GHG)排出量の多い化石燃料(石炭や石油、天然ガスなど)由来のエネルギーから再生可能エネルギーへの転換を促す政策や、ガソリン車から電動車(注)への移行を促進する政策などを掲げています。気候変動への対応として必要な政策であっても、例えば石炭火力発電所が廃止されたり、炭鉱が閉山されたりすると、そこで働いていた労働者は職を失い、生活に必要な収入を得られなくなってしまいます。産業の変化に伴い生活に困窮する労働者が発生しないよう、国や地方政府、関連企業には、負の影響を受け得る労働者に対し、新しい仕事の機会を提供する・職業訓練を行うなどの対応が求められます。

 2015年の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定の前文にも、“Just Transition”を考慮することが盛り込まれています。日本では2023年に制定された脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法)第三条の基本理念の中で「公正な移行の観点」を踏まえることが定められています。

(注)モーターを動力源として使う車のこと。バッテリーに充電した電気でモーターを動かし走行する電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)、エンジンとモーターを両方搭載するハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)が該当する。

レポート・コラム

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