ICO

ICOの定義

 ICO(Initial Coin Offering:新規暗号資産公開)は、資金調達者が独自の暗号資産(トークン)をブロックチェーン上で発行し、引き換えに投資家から資金を募る資金調達方法です。2017年以降、わずかな時間で巨額の資金調達に成功する案件が急増し、国内でも注目を集めました。たとえば、2017年11月には、QUOINE(現FTX Japan)が暗号資産取引プラットフォームの開発を目的にQASHトークンのICOを行い、約124億円を調達しました。

ICOの仕組み

 ICOは、従来の証券業で行われるIPO(Initial Public Offering)によく似ています。IPOとは、未上場企業が、新規に株式を証券取引所に上場し、投資家に株式を取得させることを指します。成長期にある企業の 資金調達手段という意味で、ICOとIPOは類似点があります。ただし、 ICOを行う企業のほうがよりアーリーステージにある傾向があります。
 図は、ICOの仕組みの概略を示しています。一般的なICO では、投資家はブロックチェーンを通して暗号資産建てで資金を払い込みます。資金調達者は、払い込まれた資金に応じて、ブロックチェーン 上で独自のトークンを発行します。トークンが取引所に上場すれば、投資家は所有するトークンを売買することができます。さらに、トークンは資金調達者が開発するプラットフォームなどで利用することができるケースもあります。


図1. ICOの仕組み

ICOからSTOへ

ICOへの規制とSTOの登場

 ICOは2017年~2018年にかけ活発に行われましたが、当時は投資家を保護するための規制が整っておらず、資金調達者が投資家から集めた資金を持ち逃げしてしまうといった詐欺的な事案も発生しました。このような背景から各国でICOのリスクが問題視され、ICOに対する規制の議論が活発になりました。日本では、2018年に金融庁に「仮想通貨交換業等に関する研究会」が設置され、ICOなどを含む暗号資産(仮想通貨)の規制に関する議論が行われました。
 議論の中で、ICOはその性格によって下表のとおり3つに分類されました。そして、主に投資性を有する「投資型」は金融商品取引法による規制を、投資性のない「その他の権利型」や「無権利型」でも、発行するトークンの内容により資金決済法による規制を適用することとなりました。

表. ICOの分類

分類
概要
投資型 発行者が将来的な事業収益等を分配する責務を負っているとされるもの
その他の権利型 発行者が将来的に物・サービス等を提供するなど、上記以外の責務を負っているとされるもの
無権利型 発行者が何ら債務を負っていないとされるもの

出所:金融庁「仮想通貨交換業等に関する研究会報告書」より大和総研作成
https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20181221.html

 この「投資型」に該当するICOに対し、金融商品取引法による規制を適応したものがSTO(Security Token Offering)に当たります。STO(Security Token Offering)とは、法規制のもとでブロックチェーン等を利用して電子的に発行された有価証券である「セキュリティトークン(ST)」を発行して行う資金調達のことです。

 関連用語:STOの詳しい解説を見る

ICOとSTOの違い

 トークンを発行して資金調達を行うという点で両者は同じですが、元来法的な規制が存在しなかった投資型のICOに対し、STOでは発行体は法規制のもとでトークンを発行します。
 日本では2020年5月に施行された改正金融商品取引法においてSTOが規定されました。これにより、発行体はトークンの発行時に有価証券届出書の提出等の開示規制などが課されることとなり、投資家にとってSTOはICOと比べて安全性の高い金融商品として発行さています。


引用:大和総研フロンティアテクノロジー本部『エンジニアが学ぶ金融システムの「知識」と「技術」』 2019年01月24日 p222-p223
※QUOINEに関する説明のカッコ内、および「ICOからSTOへ」以降を本サイトで追記

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