AutoMLとは - 期待効果や導入の注意点、各社のサービスを紹介

 AutoMLとは、機械学習におけるモデル生成プロセスを自動化することです。データサイエンティストのような高度な専門知識がない方でも、開発プロセスを自動化することで、AI開発の試行錯誤にかける時間的コストの軽減が可能となります。ただし、AutoMLのサービスを活用して開発したモデルの中身はブラックボックスとなるため、導入を検討している企業は自身のユースケースに適用可能かを事前にチェックすることが重要です。

 本記事では、AutoMLの定義と登場の背景、期待される効果や活用する際の注意点などについて詳しく説明します。

AutoMLとは

 AutoML(Automated Machine Learning)とは、機械学習プロセスの一部を自動化すること、あるいはそれを実現するサービスのことです。

登場の背景

 Gartnerの「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2022年」によると、人工知能(以下 AI)は啓発期に突入しています。これは、AIがビジネスにメリットをもたらすことを実証した事例が増え、AIを業務に用いることへの理解が広まっていることを示しています。
 AIを用いた業務効率化が幅広い業界で求められる一方で、AIのエンジンである「モデル」を生成するためには、機械学習などの専門知識と経験、そして多大な試行錯誤の時間を要するため、自社でのAI開発はハードルが高いと感じる企業は多いです。そのような背景から、AI開発のプロセス(以下、機械学習プロセス)を自動化したいというニーズが高まり、AutoMLが登場しました。AutoMLを導入することで、試行錯誤にかける時間的コストを軽減する効果が期待できます。

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機械学習プロセスにおけるAutoMLの対象範囲

 本記事では、機械学習のプロセスの下図のとおり定義します。


(出所:大和総研作成)

 図で示したように、機械学習プロセスは以下のフェーズに分けられます。AutoMLは「3.モデル生成プロセス」のフェーズにおいて、データサイエンティストの作業を自動化します。

  1. 課題設定や要件定義を行うビジネスプロセス
  2. システムにAIを効果的に組み込む検討を行う設計プロセス
  3. ビジネス要件を満たしたAIを開発するモデル生成プロセス ※AutoMLが対象とする範囲
  4. モデルパフォーマンスの維持管理を行う運用プロセス

AutoMLの期待効果

 モデル生成プロセスにおいては、考えなければいけないことが多くあります。例えばアルゴリズムの選択、ハイパーパラメータと呼ばれるアルゴリズムの動き方を決める変数の調整、適切な評価指標・最適化指標の検討などです。これらは事前に机上でベストなものが推測できるわけではなく、一つ一つを試行したうえでその結果を比較して、そのAIに適したものを選択することになります。さらには一度作ったモデルも、運用していく中での精度劣化、またビジネス的な環境・目標が変わった場合などに再作成しなければいけないことも頻繁に発生します。

 AutoMLはこのような複雑で高度な作業をデータサイエンティストに代わって行います。具体的には、学習用のデータと、そのモデルが予測対象とするターゲットカラム(例:気温、仕入れ量、解約フラグ)を指定するだけで、AIモデルを生成することができます。
 AutoMLを活用してAIを素早く現場に導入して効果を検証することで、「精度ばかり求めてしまう状態」に陥ってしまうリスクを低減し、ビジネス要件とのすり合わせや、上記の機械学習プロセス全体にフォーカスする時間を確保する効果が期待できます。

導入における課題や注意点

 AutoMLサービスを用いた場合、いろいろなパターンを自動で試行してくれるメリットがある一方で、モデルの中身がブラックボックスになってしまうデメリットがあります。
これは、AIがうまく動いていないときにデバッグをする際の利便性が損なわれる可能性があるということです。またリスク計算などの特定のビジネス領域においては、そのモデル・アルゴリズムの中身を説明できる法的要請があるなど、ビジネスの性質によっては利用できないこともあります。AutoMLのモデルを基にチューニングを行うことができないケースもあるので、各サービスごとの仕様を事前にチェックしておく必要があります。

クラウドベンダーが提供するAutoMLサービス

AutoMLが統合された機械学習プラットフォームサービス

 クラウドベンダーのAutoMLサービスをいくつか紹介します。多くのクラウドベンダーは機械学習のための統合開発プラットフォームを提供しています。このプラットフォームには機械学習モデルを円滑に開発するための様々な機能が備えられており、AutoMLも機能の1つに含まれています。

現在、各社が提供するAutoMLは機能に大きな差は無いため、機械学習プロセスを実現する上で都合の良いクラウドベンダー(例えば、データ格納に同社のストレージサービスを利用しているなど)を選択することが一般的です。(製品名をクリックすると各社のページが開きます)

クラウドベンダー 製品名・リンク AutoML サービス
Amazon Web Service Amazon SageMaker Studio Autopilot
Microsoft Azure Azure Machine Learning Automated Machine Learning
Google Cloud Vertex AI AutoML Tables

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AutoMLと人工知能サービス

 AutoMLと混同しやすい概念に人工知能サービスがあります。人工知能サービスとは、ベンダーによって学習済みのAIモデルを利用できるサービスのことです。人工知能サービスはAI開発が不要であり、理論学習や開発、運用・保守にかかるコストをかけずにAIを利用することができます。一方で、提供されるAIモデルはカスタマイズできないことや、自社システムとの連携方法に工夫が必要な点には注意が必要です。(リンクをクリックすると各社のページが開きます)

クラウドベンダー リンク
Amazon Web Service 人工知能サービス
Microsoft Azure Cognitive Services - AI ソリューション向け API | Microsoft Azure
Google Cloud AI & Machine Learning Products & Services  |  Google Cloud

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おわりに

 AutoMLは安定した品質の機械学習モデルを迅速に構築する上で役に立ちます。これまでAIの導入に踏み込めなかった企業においても、AIを本格的に開発する前に、まずはAutoMLを用いて業務への適用性を検討してみるのもよいでしょう。また、AutoMLを利用してAI開発ができる人材が増えれば、データサイエンティストはより高度な課題に注力することができ、企業のAI活用のさらなる加速が期待できます。

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※Gartner®, Press Release, 2022年9月1日 Gartner、「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2022年」を発表
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