知的財産

知的財産とは

 知的財産とは、知的活動により生み出された価値あるもの(財産)です。アイデア、技術、デザイン、ブランド、著作物、ノウハウなど幅広い内容を含み、権利として認識されたものを知的財産権といいます。知的財産権には、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権などがあり、産業発展の促進や信用を保護する仕組みなどが整備されています。知的財産権を保護する法律は、基本的には国ごとに定められた法律に従う「属地主義」という考え方に従いますが、国際的な共通ルールづくりも進められています。
 「知的財産」と「知的財産権」の定義について、日本では2003年3月施行の「知的財産基本法」で、以下の通り定義されています。

【知的財産基本法】第2条
 この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。
 この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。

 知的財産権のうち、特許権、実用新案権、意匠権及び商標権の4つは「産業財産権」と呼ばれています。産業財産権は、特許庁に出願し登録することで、独占的に実施できる権利が一定期間付与されます。
 知的財産には、産業財産権以外にも文化的な創作物を保護する「著作権」があります。日本では創作日の証明のため一部登録する仕組みもありますが、国際的には著作物が創られた時点で自動的に付与されます。急速に発展する生成AI技術の登場により著作権のルールの見直しも議論され始めています。

 時代の技術トレンドの影響を受けてその知的財産権のテーマも変遷を遂げてきました。1970年代から1980年代は、自動車や電子機器などの産業分野で技術革新が進み、特許取得による「モノづくり」がテーマとなっていました。1990年代から2000年代は、インターネットや情報通信技術の急速な発展にともない、ソフトウェア特許やITを絡めたビジネスモデル特許なども議論になると同時に、コンテンツビジネスに絡む著作権ビジネスなどのテーマが注目されました。2010年代以降は、AI(人工知能)ビッグデータなどの技術が急速に発展し、デジタルトランスフォーメーションがテーマとなっています。

知的財産戦略とは

 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権などの権利を活用して、ビジネスを競争上優位に展開していくための戦略のことを知的財産戦略といいますが、国家戦略としての位置付けで用いられる場合と、企業経営上で用いられる場合では、それぞれ意味が異なります。国家戦略上の知的財産戦略は、2003年3月に「知的財産基本法」の施行と同時に設置された「知的財産戦略本部」が、「知的財産推進計画」を毎年公表しており、わが国の知的財産戦略の政策指針を示しています。主な目的は、日本が強みを持つ技術やコンテンツなどの知的財産権を活用し、国際競争力を高めることを狙いとしています。
 企業経営上で用いられる知的財産戦略は、広義には経営戦略上の「研究開発・イノベーション戦略」にあたり、狭義には「新商品・新サービス開発に伴う技術やブランドの権利化(著作権ビジネスが含まれる場合もあります)」として、重要戦略に位置付けられます。知的財産戦略を策定する際には、IPランドスケープといわれる知的財産情報と経営的分析をあわせた手法を用いるケースが増えています。具体的な活用例としては、市場動向、技術トレンド、個別企業分析、市場シェア、アライアンス情報など、競争力強化のための経営資源(ヒト・モノ・カネ)の投資配分や、有望な知的財産を保有している企業との共同研究やM&Aなどを検討する際にも活用されます。

レポート・コラム

2023年09月07日
AI技術の進化で変わる知的財産戦略 2023年09月07日 | 大和総研 | 耒本 一茂