
カスタマージャーニーとは、顧客が商品・サービスを「認知」してから「購入」、さらに「継続利用」や「推奨」に至るまでの行動や心理の変化の流れを時系列と各タッチポイントに沿って可視化する分析手法です。 顧客体験(CX:Customer Experience)の全体像を把握し、体験価値の最適化を図ることで、企業の競争力を強化します。
背景にある考え方
カスタマージャーニーは、顧客体験(CX)の向上を目指す取り組みの一環として発展してきました。従来の「企業視点による販売プロセスの最適化」から、「顧客視点に立った体験価値の設計」へと発想が転換される中、企業活動のあらゆる局面で顧客の期待や感情を捉えることが重要視されています。このような背景のもと、カスタマージャーニーは顧客中心のアプローチを具体化するための有効なフレームワークとして注目されています。
分析における4つの基本要素
- タッチポイント(Touch Point) 顧客が企業と接点を持つ場面を指し、ウェブサイト、SNS、実店舗、問い合わせ窓口などが含まれます。各接点において、顧客にとって適切な情報提供や体験がなされているかを確認することが重要です。
- 顧客行動(Behavior) 顧客が各段階で実際に取る行動(例:情報収集、比較検討、購入、問い合わせなど)を指します。スムーズに次のステップへ進めているか、途中で離脱する要因がないかを検討します。
- 感情の変化(Emotion) 各段階で顧客が抱く感情(期待、不安、満足、不満など)を捉える要素です。不安や不満が生じている場面、ポジティブな体験が創出されている場面を把握することで、顧客体験の質を高める手掛かりとなります。
- 改善機会(Pain Points & Opportunities) 行動や感情の変化をもとに、改善が必要なポイントや強化すべき価値提供の機会を抽出します。顧客の離脱を引き起こしている接点や行動を特定し、顧客ロイヤルティーやLTV(顧客生涯価値:Life Time Value)の向上につながる打ち手を検討します。
分析プロセスと得られる成果
カスタマージャーニーの分析は、顧客体験の現状を可視化し、改善につなげるための以下三つのステップで構成されます。
- マッピング 顧客の行動や感情の変化を時系列で整理し、各フェーズでのタッチポイントや心理状態を図式(ジャーニーマップ)化します。これにより、顧客体験の全体像と主な流れを視覚的に把握できます。
- 評価 可視化されたジャーニーマップをもとに、各タッチポイントが顧客の期待に応えているか、適切な情報や体験を提供できているかを分析し、課題や改善機会を明らかにします。
- 施策化 評価結果を踏まえ、顧客の離脱を防止し、体験価値を向上させるための具体的な改善施策を検討・立案します。施策には、CXの改善、情報提供の最適化、感情面への配慮など、多面的なアプローチが求められます。
実務上の注意点と活用のヒント
カスタマージャーニーは顧客視点を取り入れた有効なフレームワークですが、実務で効果的に活用するためには、以下の三点を踏まえる必要があります。
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ジャーニーはあくまで仮説であることを理解する
ペルソナ分析と同様に、ジャーニーは仮説に基づいて設計されるため、実際の顧客行動や感情が必ずしも想定通りに進むとは限りません。特に複数のサービスが絡む場合、顧客の動線や心理の流れは複雑化し、単一の流れでは捉えきれないこともあります。 -
顧客の声を反映する
カスタマージャーニーを実態に近づけるには、顧客インタビューなどを通じて「生の声」を取り入れることが重要です。例えば、「FAQを見たが解決できなかった」「購入後のフォローがなく不安だった」といった声は、改善のヒントになります。 -
関係者との認識を共有する
ジャーニーマップは、顧客体験を社内で共有するための有効なコミュニケーションツールです。部門間での認識のズレを埋めることで、施策の精度や実行力が高まります。
これらの取り組みによって、単なる一時的な対応ではなく、継続的な顧客関係の構築が可能となります。結果として、コンバージョン率の向上やLTVの最大化といった中長期的な成果へとつながります。