電子契約とは - 定義やメリット、種類について解説

 電子契約とは、紙文書と押印で締結していた契約書に代わり、電子ファイルと電子署名(もしくは電子サイン)で締結する契約のことです。電子契約の活用はコスト削減や業務効率化など多くのメリットがあり、自社のDX化を進める施策として有効とされています。

 本記事では、電子契約の定義や注目されるようになった背景、種類、電子契約サービス導入時の注意点について解説していきます。

電子契約とは

 電子契約とは「紙文書と押印」で締結していた契約書に代わり、「電子ファイルと電子署名(もしくは電子サイン)」で締結する契約です。電子契約を活用することで、以下のようなメリットがあるとされています。

  • コストの削減(切手、印紙、紙代と作業費を大幅に削減)
  • ペーパーレスによる業務のスピードアップ(印刷、押印、封入、投函などの作業を削減)
  • コンプライアンス(取引書類、証憑が「見える化」され、いつでも検索・閲覧することが可能)
  • BCP対策の強化(洪水、火事などで原本が消失してしまうリスクを排除)

 電子契約を採用することで上記のような多くのメリットを享受でき、自社のDXを推し進めることが可能です。

電子契約が注目される背景

 日本に色濃く残り続ける「ハンコ文化」は、今まさに変わろうとしています。 印鑑を用いて契約をする文化は、日本のみに残存しています。欧米諸国ではもともとサインが用いられていましたが、その後電子契約が主流になっています。日本では2001年4月1日に電子署名法が施行され、電子署名が印鑑と同等に通用する法的基盤が整備されましたが、それでも ハンコ文化は根強く、無くなることはありませんでした。
 それがコロナ禍をきっかけに、大きく変わろうとしているのです。コロナ禍により急速にリモートワークが定着し、会社に出社せず仕事をする人が増加しました。ほとんどの業務がリモートで行えることに気づいた、以前よりも効率があがったという声もあります。そんな中「ハンコを押すために出社する」という事象が起きました。出社しなければならない唯一の理由が契約書への押印となってしまったのです。
 このような状況を機に、電子契約の利用が各段に進んでいきました。

電子契約の種類

 電子契約は大きく「電子署名型」と「立会人型(電子サイン型)」の2つに分類されます。以下では各分類について概要を説明していきます。

電子署名型

 契約当事者がそれぞれ電子証明書を取得し、電子署名する方法です。
 電子認証局が本人確認を行うもので、証拠能力が高く、真正に成立したことが推定されます。(電子署名法第3条)
 契約の証拠能力は高いのですが、電子証明書の取得にコストがかかることがデメリットです。

立会人型(電子サイン型)

 コロナ禍で大きくシェアを伸ばしたのが立会人型(電子サイン型)と呼ばれる電子契約です。
 契約当事者は電子署名を行わず、電子契約ソリューションを提供するクラウド事業者が本人確認を行い、契約の成立を確認する方法で、海外では広く普及している電子契約サービスです。電子証明書を取得しないためコストを抑えることができ、導入しやすいことでシェアが広がっています。なりすましのリスクがゼロではない点で、法的効力は電子署名型と比べて劣りますが、多要素認証などを用いリスクを極力排除したサービスが多く存在します。

導入における課題や注意点

 導入にあたり、まずは自社で必要な電子契約の種類を決定することが必要です。ただし企業には様々な契約が存在するため、場合によっては両方の種類を契約内容毎に使い分けることも視野に入れなければなりません。
 契約には相手が必ず存在します。相手先の企業が電子署名型での契約しか受け入れていない場合、立会人型だけのサービスを選んでいるとその時点で電子契約での契約は行えなくなってしまいます。契約方法のカバー範囲とコストを天秤にかけ、意思決定を行う必要があります。
 また、電子帳簿保存法を意識することも重要となります。電子帳簿保存法は1998年7月に制定された法律で、それまで紙での保存が義務づけられていた会計帳簿や決算書およびその証憑(契約書、請求書など)の国税関係帳簿書類について電子データによる保存を認めた法律です。電子帳簿保存法に準拠した状態で電子データを保存できなければ、電子データを印刷し保管しなければなりません。日本の電子帳簿保存法に対応しているサービスとそうでないものがありますので、検討時には注意が必要です。

ベンダー製品の紹介

 代表的な電子契約サービスをご紹介します。(リンクをクリックすると各企業の製品ページが開きます)

DocuSign eSignature

 180カ国以上の100万社を超える企業に選ばれ、10億人以上のユーザーがドキュサインのプラットフォームを活用しています。
DocuSign|No.1の電子署名と契約ライフサイクル管理システム - ドキュサイン

CONTRACTHUB

 電子署名型、立会人型両方に対応しています。電子帳簿保存法にも対応が容易で、日本国内で広く利用されています。
電子取引・契約サービスCONTRACTHUB|NSSOLのデジタルテクノロジー&ソリューション

クラウドサイン

 日本最大級の法律相談ポータルサイトを運営する弁護士ドットコムがサービスを提供している導入実績130万社を超える電子契約サービスです。豊富な外部サービスとの連携により、スムーズに業務に適用することが可能で、契約書の保管・管理にも利用できます。
クラウドサイン | 国内シェアNo.1の電子契約サービス

おわりに

 電子契約が広く使われるようになったことで電子署名法に関する議論が進み、より導入しやすいものとなってきています。電子契約の種類や外部サービスとの連携、セキュリティレベル等、製品により特徴が異なるため、自社の業務に合わせて適切な製品を選択する必要があります。そうすれば、コスト削減や業務効率化等、多くのメリットを享受することができるはずです。

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