DeSci(ディサイ)とはDecentralized Scienceの略で、日本語では分散型科学と訳されます。DeSciはブロックチェーンの技術を活用して、科学研究活動が抱える問題を解決し、民主的な科学研究を実践しようという取り組みのことを指します。2022年2月にアメリカのベンチャーキャピタルであるAH Capital Management, LLC(一般にAndreessen Horowitzもしくはa16zとして知られている)がDeSciについて紹介したことがきっかけとなり、新たな科学研究活動のアプローチ方法として注目されるようになりました(※1)。
DeSciの取り組みにはさまざまなものがあります。以下にその一部を紹介します。
- DAOによる分散型の資金調達
通常の研究活動における資金の調達は政府や企業、学術機関から行うことが多いですが、そういった調達方法は資金の調達までに時間がかかることが多いです。DeSciではDAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)を使ったコミュニティ駆動型の研究活動の中でガバナンストークンなどの暗号資産を発行し、コミュニティのメンバーから直接資金を調達することができます。また、資金を提供したメンバーはDAOの活動を通して研究活動に参加することができ、ガバナンストークンを使って研究活動の方向性や資金の用途などの意思決定にかかわる機会を得られます。 - IP(Intellectual Property:知的財産)のNFT化
特許などのIPや研究データなどの研究成果とNFTを紐づけて管理することで、研究成果をオープン化し、取引が可能になります。研究成果をオープン化することで知識の共有を促進するとともに、ブロックチェーンならではの透明性と改ざん耐性を活かすことで研究成果の売買を追跡し、元の研究者への報酬を適切に配分するための仕組みを構築することも可能になります。 - インセンティブメカニズムによる研究活動の促進
研究活動は研究者だけではなく、論文の査読者や研究に必要なデータの提供者などさまざまな人が関わる活動です。研究者だけでなく研究活動を支える人々の貢献度を可視化し、貢献度に応じて報酬としてトークンを配分することで、研究活動をより促進させる可能性があります。
参考文献
(※1)Andreessen Horowitz 「A Guide to DeSci, the Latest Web3 Movement」
https://a16zcrypto.com/posts/article/what-is-decentralized-science-aka-desci/