
「生成AIやChatGPTとの違いは?」
このような疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、LLMの基本概念から生成AIやChatGPTとの関係性、導入時の注意点まで、詳しくご紹介します。記事の後半では具体的な活用事例もまとめているので、ぜひお役立てください。
- LLM(大規模言語モデル)とは?
- LLMが注目されている背景
- 生成AIやChatGPTとの違い
- LLMの仕組み
- LLMの具体例
- ビジネスにおけるLLMの活用事例
- ビジネスにおけるLLM導入のポイント
- ビジネスにおけるLLM導入時の注意点
- LLMの将来性
- LLMを活用してビジネスを拡大しよう
LLM(大規模言語モデル)とは?

以下では、LLMの概要を解説します。
LLMの特徴
LLMは基盤モデル(Foundation Model)の一種で、テキストデータに特化しています。基盤モデルは、テキスト、画像、音声などさまざまな処理を行う汎用モデルです。これに対してLLMは、テキストデータを対象とするタスクで高い性能を発揮します。
文脈全体を考慮した自然な応答を生成できるため、ニュース記事の生成やトピック分類、チャットボットなどで活用が進んでいます。
ただし、実際のところLLMという用語が、テキスト以外のデータも扱える基盤モデルとして理解され、利用されていることも多いです。直近では、次世代の大規模言語モデルであるMLLM(マルチモーダルLLM)の用語として使われています。マルチモーダルとは、テキスト以外に画像や音声、動画など複数のデータ形式を統合的に扱うことです。
このような背景から、テキストデータに特化した従来の認識に加えて、入力をマルチモーダルで処理し、出力はテキストで行う基盤モデルと定義することもできます。
代表的なLLMは、OpenAIのGPT、AnthropicのClaude、GoogleのGemini、MetaのLlama、AmazonのNovaなどです。各LLMは頻繁にアップデートされており、近年はマルチモーダルに対応した最新版のLLMを実装したモデルが登場しています。例えば、OpenAI GPT-4oやOpenAI o1、GoogleのGemini1.5/2.0、MetaのLlama 3.2などです。
従来の言語モデルとの比較
LLMは、従来の言語モデルと比較して「計算量」「学習データ」「パラメータ数」が大幅に強化されているのが特徴です。
従来の言語モデルは、与えられたテキストデータから「特定の単語が次に続く可能性を予測する」というアルゴリズムに基づいていました。LLMはこれを超え、数十億以上ものパラメータを用いて深層学習を行い、より複雑かつ多様なタスクを実行できるようになっています。
例えば、従来のモデルでは予測できなかった文章全体の意味や文脈を理解し、応答を生成できます。
LLMが注目されている背景

過去にもAIに関する技術は開発されていましたが、LLMの登場により大きく進歩を遂げました。例えば、 独自に構築した専用LLMが挙げられます。また、検索エンジンとLLMを組み合わせた技術であるRAG(検索拡張生成)を用いることで、既存技術を利用するよりもよりユーザ体験の質を高められます。24時間の対応も可能です。
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さまざまな実務に導入しやすくなり、実際に多くの企業で活用が進んだことで、大きな注目が集まっています。
生成AIやChatGPTとの違い

- LLMと生成AIの違い
- LLMとChatGPTの違い
LLMと生成AIの違い
生成AIとは、テキスト、画像、音声など、さまざまなコンテンツを作成できるAI技術の総称です。
LLM(大規模言語モデル)も生成AIの一種ですが、特に自然言語の生成に特化した生成AIであることが特徴です。LLMは膨大なテキストデータから学習することで、より高度な言語理解を実現しています。
LLMとChatGPTの違い
LLMが技術的な分類における大規模言語モデルを指すのに対し、ChatGPTはOpenAIが提供するAIサービスの名称です。
ChatGPTはLLM技術を基に構築されたAIであり、つまり、LLMを活用した具体的なサービスのことです。
ChatGPTの中で選択できるモデルにも種類があり、GPT-4やGPT-4o、OpenAI o1など、さまざまなモデルが登場しています。
LLMの仕組み

ここからは、LLMがどのようにテキストを生成しているのか、具体的な仕組みをご紹介します。以下のステップに分けて見ていきましょう。
- トークン化
- 埋め込み層での数値化
- トランスフォーマーによる処理
1. トークン化
LLMが最初に行うのは、テキストデータを「トークン」と呼ばれる小さな単位に分割することです。トークンはテキストの中で意味を持つ最小単位の要素であり、単語や記号、句読点などのことを指します。
コンピュータはテキストをそのまま処理することはできないため、数値データに変換する前のステップとしてトークン化が行われます。
2. 埋め込み層での数値化
トークン化されたデータは、埋め込み層(Embedding Layer)を通じて数値のベクトルに変換されます。トークンがコンピュータが扱える数値データに変換されることで、以降の処理が可能になります。
3. トランスフォーマーによる処理
トランスフォーマーとは、テキストデータを効率的かつ効果的に処理するためのアーキテクチャの一種です。トランスフォーマーはエンコーダー・デコーダーモデルをベースとしており、以下の3種類があります。
- Encoder-Onlyモデル(エンコーダーのみのモデル)
- Decoder-Onlyモデル(デコーダーのみのモデル)
- Encoder-Decoderモデル(エンコーダー・デコーダーモデル)
なお、上記のうち、多くのLLMではトランスフォーマーのデコーダーオンリーモデルが採用されています。それぞれに処理が異なるため、ここではモデル別に解説します。
Encoder-Onlyモデル
エンコーダーとは、入力されたテキストを処理するアーキテクチャです。エンコーダーオンリーモデルは入力されたテキストデータを理解し、特徴を抽出することに特化しています。
エンコーダーは複数のレイヤーで構成され、入力情報を各レイヤーが次のレイヤーに伝達することでテキストの全体像を捉えます。デコーダーがないため複雑な文章の生成はできませんが、特徴量を用いて「入力した文章を分類する」といったタスクに活用できます。
Decoder-Onlyモデル
デコーダーとは、入力テキストを処理するアーキテクチャのことをいいます。デコーダーオンリーモデルは主にテキスト生成を目的とするモデルで、現在のLLMでの主流モデルとなっています。
エンコーダが存在しないため、膨大な文章の理解には本来不向きです。しかし、GPT-4oのような大きなモデルサイズのものでは、さまざまなタスクに対応できるようになっています。
デコーダーオンリーモデルでは、デコーダーにより与えられた情報から生成するべきトークンを予測します。生成されたトークンをもとに、次々とその後のトークンを推測してテキストを生成します。テキストの入力を受けて、継続的にテキストを出力し続けることが特徴です。
Encoder-Decoderモデル
エンコーダー・デコーダーモデルでは、エンコーダーとデコーダーの両方を備えたアーキテクチャです。主に文章要約や翻訳、質問回答などのタスクに使用されます。
エンコーダーにより入力されたテキストを符号化(エンコード)し、そのデータをもとにデコーダによって回答が生成されます。
LLMの具体例

- BERT
- GPTシリーズ
- Gemini
- Claude
- Llama
- AmazonNova
- tsuzumi
BERT
BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)はEncoder-Onlyモデルで、Googleが2018年に発表した自然言語処理モデルです。
出力がテキストではないことから、LLMとは見なされないことも多くあります。ただし、LLMの定義は時代によって変化します。LLMにつながる基礎技術を有するため、ここではLLMの一例として挙げています。
BERTはテキストを新しく生成することよりも、既存のテキストを深く理解することに優れています。
また、BERTは文脈を「双方向的」に理解することで単語の意味をより正確に捉えます。事前トレーニング済みのBERTモデルでは、出力レイヤーを追加するだけで微調整できることも特徴です。
GPTシリーズ
GPTシリーズは、OpenAIが開発したDecoder-OnlyモデルのLLMです。自然言語処理において、テキスト生成や翻訳、要約、質問応答などを行います。
GPTは「トランスフォーマー」というニューラルネットワークのアーキテクチャを基にしています。大量のテキストデータで事前学習を行い、文脈に基づいて次の単語を予測することで文章を生成します。
GPTにはさまざまなモデルがあります。2024年5月には、テキストだけでなく画像や音声などのデータを処理できるGPT-4oが公開されました。同年9月には、複雑なタスクの推論に優れたOpenAI o1がリリースされています。
Gemini
GeminiはGoogleが開発した、Decoder-Onlyモデルの対話型LLMです。2024年12月にGemini 2.0がリリースされています。マルチモーダル機能を備えており、ビデオやオブジェクトの理解、Maps API による関数の呼び出しなども可能です。複雑なタスクの実行や高度な推論を要する課題、1,000,000トークンの長文脈処理に対応できるため、さまざまな分野での活用が期待されています。
Claude
Claudeは、Anthropicが開発したDecoder-OnlyモデルのLLMです。2024年3月に発表されたClaude3シリーズでは、テキストと画像を処理するマルチモーダル機能を備えています。
また、同年10月にアップグレードされたClaude 3.5 Sonnetでは、コンピュータの操作も可能です。キーストロークやマウスクリックなどのアクションを生成できます。コーディングや複雑な推論、データ分析など、高度なタスクにも対応可能です。
Llama
Llamaは、Metaが開発したDecoder-OnlyモデルのLLMです。2024年4月にLlama 3が発表され、2025年1月時点でLlama3.1、3.2、3.3のバージョンがあります。
Llamaでは、推論やツールの呼び出し、多言語翻訳など、多彩なタスクへの対応が可能。オープンソースで公開されており、研究だけでなく商用利用も可能なため、さまざまなプラットフォームで利用できます。
AmazonNova
AmazonNovaは、Amazon Bedrockと呼ばれる、LLMアクセス用のフルマネージドなサービスを活用したLLMです。Amazonが2024年12月に発表しました。
高度な自然言語処理が可能でありながら、マルチモーダルの機能も搭載していることが特徴です。テキストだけでなく、画像や動画入力を受けてテキストを出力することもできます。
また、画像を生成するAmazon Nova Canvasや、動画を生成するAmazon Nova Reelもリリースされています。
tsuzumi
tsuzumiはNTTグループが提供する日本発のLLMで、日本語と英語に対応しています。軽量モデルでありながら、日本語処理に優れた性能を持つことが特徴です。
また、NTTが開発した汎用画像エンコーダーと軽量なアダプターを組み合わせることで、テキスト理解を保ちながら視覚理解の機能を拡張をしました。
日本市場向けのソリューションとして企業や研究機関での利用が進んでおり、2024年3月には商用サービスとしての提供が開始されています。
ビジネスにおけるLLMの活用事例

- テキストの作成・校正
- 市場調査
- プログラミングの補助
- カスタマーサポート
テキストの作成・校正
テキストの作成や校正、要約などはLLMの得意分野です。例えば、メールの返信やレポートの作成、文章の文法チェック、翻訳など幅広く活用できます。
ただし、LLMによるコンテンツ制作では、事実に反する内容が生成されてしまう現象「ハルシネーション」に注意が必要です。
市場調査
LLMは膨大な情報を素早く処理できるため、市場トレンドや競合動向の分析にも役立ちます。例えば、SNSやウェブサイト、報告書などの情報からリアルタイムの市場動向を抽出することで、最新のトレンドを分析できます。
LLMによって得た情報を基に企画を立てれば、より効果的なマーケティング戦略を立案しやすくなります。
プログラミングの補助
条件を指定することで、プログラミングの補助にも利用できます。コードの生成だけでなく、作成済みのコードのバグのチェックや、エラー箇所の特定、修正案の提示なども可能です。コーディングスキルに乏しい場合でも的確な指示さえできれば効率的にコードを生成できるため、開発の速度が向上します。
カスタマーサポート
LLMはカスタマーサポートの分野でも広く活用されています。AIなら24時間365日休まずに対応可能なため、従業員の負担軽減やコスト削減を実現できます。
自然言語処理技術を活用すれば複雑な質問にも回答できるため、より迅速に解決策を提示できるようになります。さらに、多言語への対応も可能で、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。実際に多くの企業がAIのチャットボットを導入しています。
ビジネスにおけるLLM導入のポイント

- 柔軟な改善サイクルを構築する
- 最新モデルへの追従戦略を立てる
柔軟な改善サイクルを構築する
LLMは自然言語でのプロンプト入力により、多様なタスクに柔軟に対応できることが特長です。この特性を最大限に活かすために、柔軟な改善サイクルの構築が欠かせません。自社での利用パターンや現場のニーズを調査し、頻繁に使用されるタスクに対してプロンプトの改善を実施しましょう。
最新モデルへの追従戦略を立てる
LLM分野は発展が著しく、新しいモデルや機能が頻繁にリリースされる環境にあります。そのため、定期的にLLMの市場動向を調査し、新しいモデルの特徴や性能を評価することが大切です。
また、複数のLLMを並行して評価・運用し、最適なモデルを柔軟に選択できる体制を整えることも効果的です。常に最適なLLMを活用することで、自社の競争力を維持しましょう。
ビジネスにおけるLLM導入時の注意点

- セキュリティとプライバシー
- ハルシネーション
- 法的・倫理的リスク
セキュリティとプライバシー
LLMで顧客データや個人情報を扱う場合、セキュリティやプライバシーのリスクに注意しましょう。外部のLLMサービスに機密情報を含んだプロンプトを入力してしまうと、インシデントにつながります。誤入力した内容がLLMの学習に使用された場合、第三者に対する回答に使用されるリスクもあります。
セキュリティとプライバシーのインシデントを防ぐには、以下のような対策を行いましょう。
- 機密情報を入力しない
- プロンプトの内容を学習しないことが明記されたAPI・LLM・サービスを選定・利用する
- プライバシー保護が可能なサービスを利用する
ハルシネーション
ハルシネーション(Hallucination:幻覚)とは、LLMが事実に基づかない情報を生成してしまう現象のことを指します。まるでAIが幻覚を見ているかのようにもっともらしい嘘をつくことから、幻覚(ハルシネーション)と名付けられました。
LLMは、文章や単語の意味そのものを理解しているわけではありません。また、学習する情報の正誤を判定できないため、古い情報や誤情報などを学習してしまうとハルシネーションが起こります。
現状LLMのハルシネーションを避けることは難しいとされていますが、以下のような対策はできるでしょう。
- LLMが生成した情報を人の目でチェックする
- 事実確認に必要な情報や特定のコンテキストをプロンプトに含める
- RAGを組み合わせることで虚偽の回答を防ぐ
法的・倫理的リスク
LLMが生成するコンテンツには、著作権で保護された情報や不適切な内容が含まれる可能性があります。例えば、著作権のある文章や画像をLLMが不正に再利用して生成した場合、著作権侵害のリスクが発生します。
また、生成された内容が社会的に不適切であったり、誤解を招く表現を含んでいたりする場合、倫理的な問題が生じる可能性も否めません。法的・倫理的リスクを回避するために、以下のような対策を講じましょう。
- 新しいモデルやツールを導入する際は必ず利用規約を確認する
- LLMの利用に際して自社向けにガイドラインを設定する
LLMの将来性

また、マルチモーダル機能の発展や公平性の高いモデルの開発もますます進んでいます。
すでにAIを活用している企業はたくさんありますが、今後はさらに広い分野において利用が進むでしょう。 AIは将来的に、現在よりもさらに人間に近い形で考え、感情を理解するようになる可能性があります。また、より自律的かつ自然にやり取りできるシステムに進化することが予想されています。AIによってルーティンワークが自動化されれば、人間はより重要で複雑な意思決定に集中できるようになるでしょう。
LLMを効果的に活用していくためには、自社の業務システムに合った生成AIを見極め、選択していくことが重要となります。
LLMを活用してビジネスを拡大しよう

LLMの導入を検討する際は、セキュリティやプライバシー、ハルシネーション(虚偽情報の生成)への対策が重要です。しかし、自社にノウハウがない場合「どのように取り入れて良いのかわからない」というケースも少なくありません。
大和総研では、社内への金融品質の高セキュリティLLMの利用環境構築および導入を強力にサポートする「環境構築サービス」を提供しています。LLMの導入にお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。