チャットボットとは - 定義や導入時のメリットについて解説

 チャットボットとは、ロボットが人間の質問に対して適切な返答を行う対話システムのことです。過去の質問とそれに対応する回答を学習データとして活用することで、企業の業務に特化したチャットボットを構築することができます。

 本記事では、チャットボットの定義と実用化までの背景、導入時のメリットや必要な対応について説明します。

チャットボットとは 定義と顧客接点の変遷

 チャットボットとは、自然言語を用いてロボットが人間と対話するシステムの総称です。人間と対話するロボットを開発する試みは古くから行われており、最初の対話システムは1966年に開発された「ELIZA」とされています。

 国内で電話が普及した1970年代以降、電話は顧客とコンタクトをとる上での重要なチャネルとなり、1980年代には日本初のコールセンターが誕生しました。
 1990年代に入るとインターネットが誕生し、これに伴いメール、Web、SNSなどの様々なサービスが生まれ、企業はこれらのテクノロジーを積極的に活用し、顧客とのチャネルを大幅に増やしました。
 代表的なものとしては、ホームページを活用した情報発信、よくある問合せをまとめたFAQサイトの提供、メールやチャットを活用した問合せ対応、などが挙げられます。 このような電話に限らないあらゆるチャネルを通じて顧客と接点をもつ窓口や拠点はコンタクトセンターと呼ばれ、2000年代以降、多くの企業で導入が進みました。

 2010年代になると、機械学習をはじめとしたAIの技術が進展し、自然言語処理/音声認識/画像認識といった技術が飛躍的に進化を遂げました。
 これに伴って、人間の意図をロボットが読み取り自動応答するシステム(対話システム)が実用に耐えうるレベルに進化し、テキスト経由で人間とロボットが対話を行う「チャットボット」、さらには音声経由で対話を行う「ボイスボット」が多くの企業で採用されるようになりました。

チャットボットの分類とメリット

 世の中に普及しているチャットボットは主に2つのタイプに分類されます。
 一つは“口座開設の手続き方法を教えて”といった問合せに適切な回答を返す「QA型」、もう一つは自然言語でシステムに指示を行うと特定のタスクを実行する「タスク型」です。
 現在、チャットボットの製品で主流なタイプは「QA型」で、主にFAQシステムの代替として利用されるのが一般的です。よくある利用シーンとして、お客様向けに問合せの窓口として企業Webサイト等に導入するケース、従業員向けに社内の問合せツールとして導入するケースがあります。それぞれにおけるメリットとして、下記が挙げられます。

導入のメリット

お客様向け

  • 問合せに24時間365日対応できる
  • 休日や夜間に問合せ対応を行う人員のコストを削減できる
  • コンタクトセンターなどでは基本的な問合せをチャットボットが対応することで、オペレータはお客様との会話や高度な問合せに注力できるため、オペレータ業務の品質向上につながる

従業員向け

  • 社内の問合せ業務が効率化できる
  • 組織内のよくある問合せを集約できるため、ナレッジ共有や社員教育のツールとして活用できる

 上記のほか、相手はロボットであるため気軽に問合せができることもチャットボットの良い点です。

チャットボット導入時に必要な対応

 チャットボット導入するにあたって必要な準備として、まずはロボットに回答させたい質問と応答文章のセットを用意し、システムにインプット(学習)します。さらに、様々な言い回しにも意図する応答ができるように、類似表現や専門用語などを追加で学習させていきます。
 導入初期から全ての問合せに対応できる万能チャットボットを目指すと、膨大な学習データを用意しなければならないため、まずは過去の問合せ履歴などを確認し、問合せ件数が多い内容から優先的に学習させ、徐々にチャットボットが対応できる問合せを増やしていくのとよいでしょう。

代表的な製品

 代表的なチャットボット製品を紹介します。(リンクをクリックすると各社の製品ページが開きます)

Dialogflow

 Google Cloud の対話システムであり、QA型とタスク型の両方に対応しています。 また、音声を介して対話を行うVoiceBot、日本語、英語を初めとした複数言語対応が標準で搭載されています。
Dialogflow  |  Google Cloud

Azure Bot Service / Azure Cognitive Service for Language / LUIS

 マイクロソフト社が提供している対話システムであり、チャットの対話フローはAzure Bot Service、QA型チャットボットの自然言語処理はAzure Cognitive Service for Language、タスク型チャットボットの自然言語処理は LUISが担当します。利用者はこれらパーツを組合せてチャットボットを構築します。
 対話フロー作成時はプログラミングの知識が必要となりますが、その反面、自由度は非常に高く、利用者のニーズに沿ったフローの作成が可能です。
Azure AI サービスのドキュメント | Microsoft Learn

MOBI BOT(モビボット)

 チャットシステムやVisual IVRといった、様々なコンタクトセンター向けSaaSプロダクト(モビシリーズ)を提供しているモビルス株式会社が提供するチャットボットです。 同社のチャットボットは、AIやその他システムと柔軟に連携できること、問い合わせ対応の自動化だけでなく手続き処理の自動化もできることなどから、大手企業を中心に金融・メーカーから自治体まで、幅広い業種で導入されています。
MOBI BOT|シェアNo.1 顧客サポート向けチャットボット

おわりに

 数年前まで、チャットボットは問合せに対して限定的な応答しかできませんでしたが、自然言語解析やディープラーニングなどAIの技術がチャットボットのエンジンに用いられることが当たり前となり、利用者の意図を正しく理解し、より自然な応答ができるようになりました。今後はより自然な対話を目指し、音声で対話するボイスボットの製品も増えていくと予想されます。チャットボットは業界を問わず導入しやすく、また成功事例が多いテクノロジーでもあるので、今後も継続して注目される分野の一つです。

関連するウェビナー

ウェビナー|大和証券グループで"ChatGPT"を使ってみた

関連するITソリューション

営業デジタル化・デジタルマーケティング | 大和総研


※Google CloudおよびDialogflowは Google LLC の商標です。
※マイクロソフト、Azure Bot Service、Azure Cognitive Service for Language、LUIS は、米国 Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。