データ利活用

 データ利活用とは、様々なデータを収集、蓄積、加工、集計し、ビジネス上の価値を生み出すことです。DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進などを背景に、データ利活用の重要性は増しています。一方で取り組み方がわからず困っている企業も多い現状です。

 本記事では、企業におけるデータ利活用を企画・推進していくために必要な情報を解説していきます。

データ利活用とは

 データ利活用とは、「様々なデータを収集、蓄積、加工、集計し、ビジネス上の価値を生み出すこと」です。このように書くと企業活動の中で取り組んでいることのように聞こえるかもしれません。ですが改めてデータ利活用の高度化、ならびに経営資源の集中化に取り組むことで、より大きな価値を生み出せる時代になっています。

 データ利活用の定義で述べた「様々なデータ」には、①企業内部のデータ(1st Party)だけでなく、②他企業から入手・購入するデータ(3rd Party)や、③インターネット上から収集できるオープンデータなどが含まれます。例えば、①自社の顧客データ、取引データ、Webアクセスログ、工場のセンサーログ、②住所ごとの世帯属性推定データや衛星画像、ポイントカードサイトの顧客属性推定・各種購買データ、③官公庁が発表する統計数値やニュース、SNSの情報などがあげられます。
 これらデータに対する見識を深めるにあたって、まずは2010年ごろに登場した用語の「ビッグデータ」の特徴を理解しましょう。一般的に、ビッグデータはVolume(量)、Variety(多様性)、Velocity(速度)、Veracity(正確性)の4つの観点で評価します。この観点は比較的覚えやすく、またデータが生み出す価値を考える際にも有用です。データ利活用の例として、クレジットカード会社における取引不正検知の仕組み、デジタルマーケティング(Email/Push通知やバナー広告)、ECサイトのレコメンデーション機能などを想起すると、各々において違った特徴が価値を生み出していることがわかるでしょう。

データ利活用がなぜ重要なのか

 「データ利活用」の重要性は既に当たり前のこととして理解されているかもしれませんが、今一度ビジネスにおいて重要とされ続けるのはなぜでしょうか。いくつか理由は考えられますが、ここでは一例として以下の3つの観点から考えてみます。

  • 時代の変化
  • 技術の進化
  • 経営陣のDXに対する意識向上

時代の変化

 まずはデジタルの急速な活用が進んでいる「時代の変化」についてです。新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、非接触決済やリモートワークなどが急激に拡大・浸透したのは記憶に新しいと思います。またECサイトをはじめとするデジタルサービスや、インターネットにいつでもアクセスできるスマートフォンなど、データに深くかかわるプロダクトがコモディティ化・当たり前になったのもこの10年のことです。実際、日本向けにスマートフォンが発売され始めたのは2008年の出来事ですし、サブスクリプション系サービスは2016年ごろから日本でサービス開始されています。データ利活用の恩恵が一消費者としても身近になってきているということです。

図1. 情報通信機器の世帯保有率

(出所)総務省 「令和3年版 情報通信白書のポイント」 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nb000000.html (*1)

技術の進化

 次に「技術の進化」に注目してみましょう。予測分析、ディープラーニングなど、高度なデータ分析タスクの専門職である「データサイエンティスト」が注目されはじめたのは2012年ごろと言われています。また、主要なクラウドサービスが登場したのも2000年台後半です。それから10年以上経過した現在では相応の成熟を遂げています。その結果、AutoML(自動機械学習)やMLPaaS(機械学習のPaaS)のような、高度な専門知識を持たない一般のビジネスユーザでも、AIを作る・使うことができるサービスも登場、普及してきました。またデータ利活用は費用対効果が不透明である、という課題がよくみられ、トライアル案件が効果的なIT領域です。この面でも技術・サービスのコモディティ化による費用減、マイクロサービスの活用による迅速なサービスインなどの周辺環境が整ってきていることは、データ利活用推進の追い風といえるでしょう。

経営陣のDXに対する意識向上

 3つ目として、「DXに対する経営の意識向上」を考えてみましょう。従前より日本企業のIT投資は、欧米各国と比較し、業務効率化やコスト削減を目的としたものが中心となっていました。しかしここ数年でITを攻めに活用すること、すなわち新規事業や売り上げ・顧客基盤拡大などを目的としたIT活用の必要性が取り上げられるようになりました。特にビジネスモデルの変革を伴うデジタル化をデジタル・トランスフォーメーション(DX)とよび、この重要な構成要素の一つがデータ利活用です。

図2. デジタル技術の導入状況
(出所)総務省 「令和3年版 情報通信白書のポイント」 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nb000000.html (*1)

データ利活用を始めるにあたって意識すべきこと

 データ利活用やDXは戦略的な企業活動であり、幅広いビジネスへの理解、新規領域へのチャレンジが求められます。これらを推進するうえで意識するとよいアクションについて、いくつかの例を見てみましょう。

情報収集

 まずは「情報収集」です。一般的な公開情報としての技術知識や業界内外、国内外を問わない事例の収集はもちろん必要ですが、一方で自社の情報を整理することもとても重要です。自社が保有する競争源泉となるデータリスト、見直す余地のある・新しい取り組みが行える業務プロセス候補など、内部情報の収集・整理が第一のアクションとなることがほとんどです。

データ利活用の価値創出シナリオの具体化

 次に「自社でのデータ利活用が価値を生み出すシナリオを具体的に考え抜く」ことです。先述したビッグデータの4Vのような観点や、他社の活用事例などをもとにして、自社独自にカスタマイズされた、かつフィージビリティの高いシナリオをいくつか考えだすことがキーとなります。実際にはそのシナリオ群の中で優先順位付けをして取り組むものを議論・選択することになるため、シナリオがより具体的であるほど、取捨選択・合意形成のプロセスを進めやすくなります。

小さな成功体験を積み重ねる

 そのうえで、「素早く成功体験を積み重ねることを目指すこと」も重要です。先述した通りデータ利活用のプロジェクトは費用対効果が事前に見積りづらく、チャレンジングな領域になりがちです。そのためまずは成功がイメージしやすい、リスクの少ないシナリオから取り組み、成功体験を積み上げることも一策でしょう。このステップを通じて企業内のデータ活用の支持者を増やしつつ、企業としてのデータ活用への意識を高めることで、案件数や規模を拡大させていくことができます。

全社的な組織連携と適材適所のリソース確保

 この過程において「全社的な組織連携」「適材適所のリソース確保」もポイントとなります。効果が大きいデータ利活用シナリオは、しばしば顧客データや営業機密などの重要情報を取り扱うことになります。すると必然的にセキュリティ・コンプライアンス部門の社内規程やさらには各省・各業界のガイドラインとの照合が求められます。これには全社的な連携は必須になるでしょう。その活動の中心となるのがCoE(Center of Excellence)と呼ばれる組織です。この立ち上げにはプロジェクトを円滑にスタートさせるために、分析コンサルなどの外部の専門家の採用や、データ・AI人材教育などのサービス利用も検討するとよいでしょう。

おわりに

 ここまで、データ利活用におけるエッセンスをまとめてきました。今後も引き続き変化の激しい分野である見込みのため、本記事に限らず常に最新情報をキャッチアップすることが成功へのキーファクタとなります。大和総研は経営戦略からITにわたるまで、データ利活用に関するリサーチ情報、ノウハウ、人材を保有しています。各種業界のお客様に対するデータ利活用支援サービスも提供していますので、お気軽にお問い合わせください。

参考文献

(*1) 総務省「令和3年版 情報通信白書のポイント」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nb000000.html

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