PROJECT
「大和証券生成AIチャット」
開発
開発
プロジェクトメンバー
-
林 亮輔
2015年入社
大和証券システム本部
DXシステム部
MEMBER.01 - システム
-
菅野 祐太郎
2018年入社
フロンティア研究開発センター
デジタルソリューション研究開発部
MEMBER.02 - システム
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及川 大志
2020年入社
フロンティア研究開発センター
デジタルソリューション研究開発部
MEMBER.04 - システム
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臼井 飛翔
2020年入社
フロンティア研究開発センター
デジタルソリューション研究開発部
MEMBER.05 - システム
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太田 雅之
2020年入社
大和証券システム本部
システムインフラ設計部
MEMBER.03 - システム
はじめに
生成AIを活用して、精度の高いアンサーを
「質問はしているのに、答えにたどり着けない」。そんなお客様のもどかしさを、どうにかできないか。そんな想いから生まれたのが「大和証券生成AIチャット」です。
大和証券のWebサイトには、お客様向けの膨大なFAQやマニュアルが公開されています。しかし、従来のチャットでは質問の仕方が少し違うだけで、求める答えが返らないことも多くありました。そこで生成AIを活用し、「質問の意図をくみ取って、必要な情報を組み合わせて回答する」新しいチャット開発に挑戦。高い正確性が求められる金融領域で、前例の少ない技術をどう使いこなしたのか。5人の視点から、その舞台裏を語ります。
QUESTION.01
プロジェクトの概要について教えてください
質問の仕方に縛られず、求められる回答に導く仕組み
大和証券が一般のお客様向けに提供しているFAQチャットを、2025年6月に生成AIを使って刷新しました。従来のチャットはあらかじめ決められた質問と回答を紐づける仕組みだったため、質問の言い回しが少し違うだけで探している答えにたどり着けず、ユーザビリティの観点で課題があったのです。今回はFAQや取引マニュアルなどの情報をまとめて保管し、AIが質問の意味に近い情報を探し出した上で、文章として組み立て直して表示する仕組みを構築しています。
単に検索するのではなく、「お客様は何を知りたいのか」を考えながら答える点がこれまでとの大きな違いです。今回は生成AIを活用した案件ということで、最初から完成形が明確に決まった状態で走り出したわけではありません。実際に動かしてみないと分からない部分も多く、検証と改善を繰り返しながら精度を高めていく必要がありました。特に一般のお客様向けサービスなので、「間違いがないこと」を最優先して開発しました。
このチャットサービスでは1つの質問に対して複数の情報を組み合わせて答えられる点が特徴です。以前は「この質問にはこの答え」という1対1の形でしたが、今回はAIが情報を読み比べて回答に近しい内容をまとめて返すほか、関連度が高いと思われる情報をサジェストする機能も。検索と会話の間のような体験を目指して開発しました。
QUESTION.02
プロジェクトでの役割を聞かせてください
開発チームとAIチーム、それぞれの専門性を掛け合わせた
プロジェクト全体の体制として、プロジェクトマネージャー(PM)のもとに開発チームとAIチームの2つがあり、さらに開発チームの中にはアプリチームとインフラチームがある体制です。その中で私はサブPM兼アプリチームのリーダーとして、全体の推進を担いました。進捗や課題の管理、関係者への説明に加え、アプリの要件定義から開発、テスト、本番リリースまで一通りを担当しています。生成AIや「Azure」というクラウドサービスを活用した開発は初めての経験でしたが、「まず動くものを見せる」ことを意識しながら、アジャイル型でプロジェクトを進めました。
経験値を高めたいという思いから、自ら手を挙げてこのプロジェクトに参加しました。インフラチームのリーダーとして、クラウド基盤の設計・構築・運用を担当。アプリやAIの仕組みはインフラという土台がなければ動きません。そのため、セキュリティや安定性といった守るべき部分を早い段階で固め、他のチームが安心して開発できる環境を整えることを意識しました。
AIチームのリーダーとして、生成AI部分の要件整理や開発方針の決定を担いました。AIは与えるデータや条件次第で結果が変わるため、「どこまでをAIに任せ、どこを制御するか」の判断が重要になります。チーム全体の意思決定を担う立場として、技術とビジネスの両面を意識してプロジェクトに関わりました。今回のプロジェクトは先端技術の活用がテーマなので、AIの知見を持つ若手メンバーが多くアサインされました。
私はAIチームの中でもアプリ側の担当として、AIが利用するデータの前処理や、外部システムとの連携部分など、バックエンドの設計・実装を担当しました。ユーザーからは見えない部分ですが、ここが安定していなければサービスは成り立ちません。全体を支える土台に集中して向き合いました。
私はAIチームのインフラ側で、クラウド上の分析環境や検索インデックスの仕組みづくりを担当しました。短期間で検証と改善を回すためには、すぐに試せる環境が不可欠です。技術面だけでなく、タスクの見える化や進め方の整理など、チームを動きやすくするベースづくりも役割の一つでした。
QUESTION.03
どのような取り組みや苦労がありましたか
前例の少ない開発だからこそ、試行錯誤の連続
一番の苦労は、人手と時間の制約です。開発期間は6ヶ月。会議や調整をしながら自分自身でも開発を進める必要があり、正直に言うと余裕はありませんでした。それでもすべてを抱え込まず、任せられる部分は周囲に頼ることで何とか乗り切りました。また、今回はコーディングにもAIを活用。その中では課題にもぶつかりましたが、おかげで開発期間を大幅に短縮することができました。
今回の生成AIチャットは、「表や画像」も用いた回答ができる点が他のチャットサービスと比べた時の大きな違いであり、苦労したポイントでもあります。画像は前処理として「Azure Storage Accounts」上に保存した上で、回答のもととなるインデックス内のテキストにファイルパスと画像タイトルを埋め込んでいます。そのため、LLM(大規模言語モデル)で回答を生成する際に、画像タイトルの意味をとらえた上で、必要に応じてテキスト以外の情報を出力できます。リンクや表・画像を用いたUIを実現することで、お客様に分かりやすい回答を意識しました。
表や画像を用いた回答の一例


要件が途中で変わることも多く、手戻りが発生する場面もありました。ただ、その都度チームで話し合い、「どうすれば良くなるか」に集中できたことが救いでしたね。ちなみに、私と太田くん・臼井くんは同期で全員入社6年目ですが、このクラスの若手メンバーが重要な役割を任されていたこともチャレンジングな部分でした。最近はこうした若手中心のプロジェクトがどんどん増えています。
私も初めはインフラチームのリーダーを任されると聞いて驚きましたし、少し不安でした。けれど、挑戦したからこそ普通なら数年がかりで吸収する知見をこの半年間で一気に習得できたと感じています。今回のプロジェクトでは、特定のクラウドサービスやRAG(Retrieval-Augmented Generation=外部データベースや文書から関連情報を検索・取得して活用するAI技術)といった未経験の技術を短期間で理解し、設計に落とし込む必要がありました。社内の有識者に積極的に相談しながら、「分からないまま進めない」ことを徹底したことが印象に残っています。
QUESTION.04
関係者とはどのように連携して進めましたか
部門の垣根を越えてタスクを分担
今回のプロジェクトでは、アプリ、インフラ、AIといった役割の垣根を意識的に低くしました。例えば「このタスクはアプリの担当」と決めつけず、チーム全体の余力を見て柔軟に分担。また、通常は要件をドキュメントに落とし、順番に受け渡していく形になりますが、今回は生成AIという特性上、事前にすべてを決め切ることができません。そこで「まずつくって、見せて、直す」という進め方を採用しました。誰かに丸投げするのではなく、その場で一緒に考え、判断する。この距離感の近さがスピードにつながりました。
インフラは後から大きく変えることが難しい領域です。そのため初期段階からアプリ・AIチームと密に話し合い、「何を最優先で作るべきか」を共有しました。例えば、すべてを完璧に整えてから渡すのではなく、まず必要な最低限の基盤を用意し、開発を先に進めてもらう。その代わり、将来の拡張を見据えた設計だけは外さない。こうした認識合わせを早い段階で行えたことで、全体のリードタイムを短縮できたと感じています。
AI部分は技術的な柔軟性が求められる一方で、金融サービスとしての制約も強く受けます。そのため、開発チームが得意とする堅牢な設計と、私たちAIチームが担う素早い検証・改善のサイクルをどう噛み合わせるかが重要でした。定例の場だけでなく、日常的に細かな相談を重ねることで、「どこまで試してよいか」「どこは慎重に進めるべきか」の認識を揃えながら進められました。
チーム内ではタスクや課題を可視化し、「誰が何で詰まっているか」がすぐ分かる状態を作りました。問題が起きた時も、特定の人に責任を押し付けるのではなく、「どうすれば前に進めるか」を自然に話し合える雰囲気がありました。この心理的な距離の近さも、連携を支える大きな要素だったと思います。
QUESTION.05
どのような部分にやりがいを感じましたか
社内外の自分たちの仕事が、お客様やユーザーに貢献する実感
生成AI技術を活用して、一般のお客様向けのサービスを形にできたことに大きなやりがいを感じました。AI案件は「これをつくれば必ずうまくいく」という確かな答えがない分、判断の一つひとつに責任が伴います。どこまで精度を高めるのか、どこから先は割り切るのか。その判断を任され、プロジェクト全体に影響を与える立場だったことは、プレッシャーでもあり、同時に大きなモチベーションでもありました。また、PoCや研究で終わることの多いAIの取り組みの中で、実際に多くのお客様に使われるサービスとして世に出せた点も印象に残っています。最先端技術を「試す」だけでなく、「社会に届く形にする」経験ができたことは、今後のキャリアにおいても大きな財産になったと感じています。
私がこれまでに携わった多くの案件は、社内や限られたユーザー向けのものが中心でした。今回は一般のお客様が使うサービスで、自分が関わった仕組みがたくさんの人々に届く喜びを初めて経験し、大きなやりがいを感じました。技術を通じて誰かの困りごとを解決できていると実感できたことが強く印象に残っています。開発中は忙しさに追われることもありましたが、使われている様子を知った時、「大変だったけどやってよかった」と素直に感じました。
インフラは「うまくいっていて当たり前」という世界。何も起きないこと自体が成果です。だからこそ、今回のように一般のお客様が使うサービスを支え、「止まらずに動き続けている」状態を作れたことには大きな達成感がありました。トラブルなくサービスが稼働し続けているのを見るたびに、「この基盤を任されてよかった」と静かに実感しています。
リリース後、コンタクトセンターの方から「問い合わせ対応の負担軽減につながった」と聞いた時は、正直ほっとしました。今回のプロジェクトは生成AIやAzureを用いた開発など初めて尽くしで、困難に直面する場面も少なくありませんでした。それでも、自分たちが作った仕組みが実際に使われ、誰かの役に立っていると分かった瞬間に、その苦労が報われた感覚があります。技術的な挑戦だけでなく、「社会の中できちんと機能するものを届けられた」という実感を持てたことが何よりのやりがいでした。
QUESTION.06
プロジェクトの社会的意義はどのような部分にありますか
「分からない」を減らすことで、お客様が安心して判断を行える環境を整備
金融サービスでは、「分からない」が不安につながります。そんな中、今回リリースした生成AIチャットは平均課題解決率87%※という高い成果を達成しており、お客様の不安軽減に大きく寄与できたと言えるでしょう。不安を減らすことでお客様が落ち着いてご自身で判断できる環境を支えることができた点に、社会的な意義を感じています。これが、大和証券グループが掲げる「お客様の資産価値最大化」の実現につながるはずです。
※2025年8~9月の集計による
生成AIを使った顧客向けサービスは実際に動かしてみないと分からないことが多く、要件が固まりきらない中で判断を重ねる必要がありました。特に金融サービスでは、想定外の入力や挙動がそのままリスクにつながります。検証を通して技術的に動くかどうかだけでなく、「どこまでを許容し、どこを制御するか」を慎重に考える必要があると実感しました。一般のお客様に使われるサービスだからこそ、改善のスピードと同時に、安全性や安心感を意識して設計する経験ができたことは、私にとって大きな学びだったと感じています。
生成AIは使い方を誤るとリスクにもなり得ます。そんな中、高い正確性が求められる金融分野でも、適切に設計すれば価値を生み出せることを示せたのは大きな成果です。この経験は今後のAI活用プロジェクトの土台になるはずで、より利便性の高いシステムを社会に提供していくための足掛かりになったのではないでしょうか。
QUESTION.07
プロジェクトの今後の展望をお聞かせください
更なるユーザビリティ向上を目指し、進化を続ける
今後は現状のシステム改善と並行して、エージェントAIの導入なども検討しています。これによってさらにユーザビリティを向上させることが狙いです。生成AIの領域ではアウトプットの良し悪しを数値だけで判断することが難しく、最終的には人が責任を持って決める必要があります。技術的な正解だけでなく、「お客様にとってどうか」「社会に出して問題ないか」を考え続けた経験は、今後どのようなAI案件に携わる上でも軸になると感じています。
生成AIやクラウドといった新しい技術を実サービスの中で使い切れたことは、エンジニアとしての自信につながりました。今後もAIを活用するプロジェクトがいくつも立ち上がる予定なので、継続的に携われたらと考えています。私は大和総研内でクラウド技術のエキスパート認定を受けていますが、今後はAI開発のスペシャリストにもなれるように取り組んでいきたいです。
インフラリーダーとして、技術だけでなく「優先順位を決める力」が大きく鍛えられました。限られた期間の中で、何を先に作るべきか、どこを将来に残すか。その判断一つでプロジェクト全体のスピードが変わります。初めこそ大役に不安を感じていましたが、この経験を通じて、設計の正しさだけでなくタイミングを見極める視点も身につけられたことは、大きな成長だと感じています。
これまで以上にシステム全体を俯瞰して見る視点が身につきました。自分の担当領域だけでなく、「この処理はどこにつながっているのか」「ここでの判断が全体にどう影響するのか」を考えながら開発できたことは、大きな学びです。技術力だけでなくプロジェクト全体を支える意識が芽生えたことが、今回得られた成長だと感じています。
要件が固まりきらない中でも、まず動くものを作り、フィードバックを受けて改善する。そのサイクルを回し続けたことで、不確実な状況への耐性がつきました。「最初から完璧でなくていい」という感覚を、実体験として身につけられたのは大きいです。また、常に冷静な菅野さんや林さんの姿を間近に見る中で、将来的にチームを率いるようになった時のヒントももらえました。今後の拡張開発も楽しみです。
記載された写真および原稿は2026年1月時点のものです。




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