デフレ懸念の終焉

2011年3月9日

全米のガソリン平均小売価格はここ2週間で約1割上昇し、08年9月末以来、2年5ヶ月ぶりの高値をつけた(3/7にEIAが3.52ドル/ガロンと発表)。

3/2にFRBが発表した(2/18までの情報に基づいて作成された)ベージュブックによると、ほとんどの地区の製造業や小売業者が、原材料などの投入コストの上昇を報告している。同時に、顧客にコスト転嫁する余地が大きくなっており、値上げを実施あるいは予定しているという指摘もみられる。前回1月の時点では、業者はコスト圧力が高まっていると感じていても、競争が激しいために、最終価格にはごくわずかしか転嫁できなかったと報告されており、大きな状況の変化といえる。このような価格転嫁の動きをインフレの兆しとして注視する見方も出てこよう。

CPIの約6割はサービス価格であり、コアベースに限れば7割以上と一段と比重が高まる。そのサービス価格は、サービス業が労働集約的であるが故に、賃金の影響を受けやすい。注目される賃金動向について、ベージュブックでは、上昇圧力はほとんどみられないと言及され、2月分の雇用統計でも時間当たり賃金上昇率は前月比横ばいと、ベージュブックの記述を確認した。従って、FRBが本格的にインフレを警戒する状況に至るのはしばらく先の話だろう。

確かに金融当局の立場からすればそうだろうが、消費者からすると、賃金が上がらないなかで、モノの値段は上昇基調にあることから、実質的な生活レベルは厳しくなっていると感じていよう。また、食料品やガソリンは生活必需品であるために、低所得者層ほどこのイメージは強いとみられる。実際、所得階層別の下位20%の場合、支出の2割以上を食費とガソリン代に費やしている。そのコストが膨らめば、贅沢品などその他の支出に振り分けられる余裕が小さくなっていくわけだ。仮にガソリン価格が3ドルから08年央につけた高値4ドルに上昇すれば、米国の消費者は約1200億ドルの負担増に直面する(但し、消費量一定の場合)。これは、昨年12月に成立した景気対策のなかの、給与税率2%ポイント引下げの減税額に匹敵する規模である。つまり、せっかくの減税もガソリン代として右から左に消えてしまい、消費者心理を冷やすことになろう。

インフレに対するより強い不満は、中東・北アフリカにおける混乱の原因の一つになったと考えられるが、ドミノ倒し現象の結果、原油価格の高騰に結び付くという悪循環につながっている。ただ、バーナンキFRB議長は、QE2などの米国の金融緩和措置がガソリンを含むコモディティ価格の高騰を誘発しているとの因果関係については、引き続き反論。だが、年後半以降、量的緩和措置QE3を実施する理由付けが難しくなりつつある点は認識しているはずだ。

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