上海に住んでいてよく思うのが、人が多いということである。地下鉄3路線が乗り入れる人民広場(黄浦区)や大型商業ビルが集まる徐家匯・中山公園(それぞれ徐匯区、長寧区)、観光地の豫園・外灘・南京東路(いずれも黄浦区)、浦東新区の商業ビルである正大広場などは、いつ行っても人混みに出かけるようなものだ。はたして上海はどのくらい混んでいる場所なのか、統計を調べてみた。

上海は昔から大都市として知られているが、上海人に聞くと、以前に比べて人が増えた実感があるという。実際、1999年に1313万人だった上海市の人口は2009年には1921万人まで増えている。過去10年間の人口増は30%に達しており、省別ランキングでは北京の40%、広東省の33%に次いで高い伸びである。

人口増加に伴い、上海市の人口密度は1999年から2009年の期間に2,071人から3,030人に増えた。これは東京都(2010年9月時点で5,977人)よりもまだ低いものの、上海市の面積は東京都の3倍あり、中心部と郊外の人口密度は大きく異なる。そこで区別の人口密度を比較したのが以下の表である。東京の区では人口密度は多くても2万人程度だが、上海は黄浦区の42,869人を筆頭に盧湾区・虹口区・静安区で3万人を超えている。場所によっては上海の人口密度は東京の2倍ということだが、これは戸建ての多い東京と違って上海はマンションが多いためだろう。なお、再開発の結果、上海中心部の人口密度は実はこれでも以前よりも低下しており、10年前には5万人を超える区もあった。

街の混雑度をよりよく表すと考えられる昼間人口は公式統計に見当たらないが、上海市の中心3区(黄浦区・盧湾区・静安区)については夜間人口の3倍程度との推計があるようだ。居住人口の3倍とみなすと、km2あたり11万人という計算になる。東京の昼間人口は千代田区がkm2あたり7万人、中央区が6万人である。やはり上海は東京よりも混雑しているといえそうだ。

2010年については万博の開催が街の混雑に拍車をかけている面もあるだろう。1日あたりの平均入場者数は約40万人だが、夕方以降の入場者数が概ね全体の5%程度に過ぎないことから察するに、入場者の9割程度が上海市外からの来訪ではないだろうか。そして市外からの来場者の多くが上海の代表的な観光地や商業地区を訪れているはずである。

地下鉄利用者数にも今年の上海の混雑ぶりが現われている。2010年5-9月の地下鉄利用者数は1日あたり平均で前年同期を約200万人も上回る570万人とのことである。10月22日には755万人という過去最高の利用者数を記録している。7号線・10号線・11号線・13号線の開通や2号線の延伸が利用者数増加の主因なのだが、営業路線距離が変わっていない既存路線でも対前年比で1割程度の利用者増となっているようだ。

図1上海と東京の区別人口密度

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