いよいよ始まる新NISA

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2023年11月24日

筆者は米国駐在を終え、久しぶりに日本での生活を始めたところである。日本に戻り、税法上の居住者となった今、やりたいことの一つが少額投資非課税制度(NISA)の利用だ。

NISAは、日本国内の居住者(正確には、国内に恒久的施設を有する非居住者も含む)であれば非課税口座を開設することができるが、海外在住で非居住者である間は、NISA口座で投資をすることはできない。米国には、我が国の企業型確定拠出年金のモデルとなった401(K)プランなどの企業年金や個人退職勘定(IRA:Individual Retirement Account)などの税制優遇措置を伴う退職貯蓄制度や、高等教育資金を準備するための資産形成制度である529プランなどはある。しかしながら、NISAのように、使途を限定することなく、一般的な投資の運用益に対する課税が免除される制度はない。

NISAがまだ「日本版ISA」と呼ばれ、筆者がこの制度の調査を始めた2009年度税制改正大綱から十数年間のNISA制度の変遷を見ると、「国民の資産形成を支援するための制度」として、当時は想定していなかったほど大きく拡充されている。同制度の普及を願っていた一研究員にとっては、とても感慨深い。

制度開始当初の非課税投資限度額は最大で500万円であったが、2024年1月から始まる新NISAでは、これが1,800万円にまで拡大される。制度実施期間も当初は2023年末までの時限措置とされていたが、2024年から始まる新NISAにおいては、制度実施期間に期限はなくなる。非課税保有期間も無制限となり、制度が作られた当初から市場関係者より望まれていた制度の恒久化が実現された。

NISA制度は、元々、英国のISA制度をモデルとして導入された。英国では1999年にISA制度が導入され、当初は10年の時限措置だったが、制度が評価され10年を経て恒久化された。我が国でもまさに同じく10年を経て恒久化され、同じ道を辿ることになった。なお、報道によれば、英国ではISA制度の簡素化など大規模な見直しがなされる模様である。

新NISAの政府目標である、5年間でのNISA口座数及びNISAでの累計買付額の倍増に大いに期待する一方で、研究員としては、数年後に制度の効果を検証する必要があり、制度の利用状況次第では改善の提言をする可能性もあるだろう。自身の資産所得の倍増も目指しつつ、制度の行方も見守っていきたい。

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執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 鳥毛 拓馬