「20世紀の予言」は的中したか?

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2022年12月28日

  • 調査本部 副理事長 兼 専務取締役 調査本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸

お正月が近いので、ひとつ明るい話をしよう。

今から120年以上前の1901年の1月2日・3日の報知新聞に「20世紀の予言」という特集記事が掲載された。当時、100年近く先の西暦2000年に実現が期待される、夢のような話についての特集である。

「20世紀の予言」の中で、実際にいくつの項目が実現したのであろうか?

実は、23項目の中で、実現しなかったものが6項目ある。

例えば「人と獣の会話自在」という項目は実現していない。

ただし、筆者がレギュラー・コメンテーターを務めていた、テレビ東京系列の経済番組「ワールドビジネスサテライト」では、「トレンドたまご」というコーナーがある。通称「トレたま」であるが、このコーナーで紹介した商品の中に、ペット(犬)の鳴き声を聞いて、その感情を点滅ランプによって飼い主に伝える商品があった。つまり、完全ではないにせよ、人とペットがコミュニケーションをとる機材は作られ始めているのである。

これに対して、23項目中、17項目は一部、若しくは、全部が実現している。

例えば、「7日間世界一周」という項目がある。

当時、80日間かかった世界一周が、7日でできればよいという夢のような話であったが、20世紀には世界一周するのに7日もかからなくなった。

その他にも、「人声十里に達す」「写真電話」「買物便法」「暑寒知らず」という耳慣れない項目が軒並み実現した。

これらは一体何のことであろうか?

「人声十里に達す」とは電話のことである。「写真電話」はテレビ電話、「買物便法」はネットショッピングのことだ。「暑寒知らず」とは読んで字の通り、エアコンのことである。

つまり、夢のような話であっても、100年経ってみれば当然のことのように実現しているのだ。人類の科学技術の進歩には限界がないということだろう。

特に、わが国は科学技術に関して依然として一定の強みを有している。ダボス会議で有名な世界経済フォーラムのランキングで、日本は「イノベーションの潜在能力(キャパシティ)」という項目で上位組の常連である。

岸田政権は、人への投資、スタートアップ、GⅩ(グリーン・トランスフォーメーション)、DX(デジタル・トランスフォーメーション)などと共に、科学技術・イノベーションを、わが国における重点投資分野に据えている。筆者は、わが国がこうした地道な取り組みを続けていけば、50年先、100年先の未来は、決して暗いものではないと確信している。

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熊谷 亮丸
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