子供たちには、平和なサマーキャンプを
2022年06月15日
ロシアの小学校は夏休みがとにかく長い。丸三か月間まではいかないとしても、6月下旬から8月末まではほとんどの学校が休みとなるため、共働きが主流であるロシアの家庭は、子供たちを二ヶ月間どこに預けるかでいつも頭を悩ませている。そこで役に立つのは子供のサマーキャンプだ。一つのスロットは4週間で、そこで子供たちは年齢や学年別に集団生活を送る。このようなチャイルドケアーは値段も手ごろで、普段街で生活する子供にとっても自然の中で過ごす時間が与えられる他、集団生活や親離れも少しだけ経験し、成長していく機会になる。多くの大手企業には自前のサマーキャンプ施設があり、従業員を対象に料金も補助している。ロシアにはどこの地域にもこのような子供向けのキャンプ施設がある。私は子供のころ両親とモスクワ郊外に住んでいたため、ほぼ毎年一か月間は家から電車で一時間ほどの森の中にあったスプトニックというサマーキャンプ施設で過ごした。時々、父の職場で黒海にある豪華なサマーキャンプにも抽選でチケットが手に入ったため、二回ほど行ったことがある。小学生にとってサマーキャンプは親と離れホームシックにかかる一方で新しい友達との出会いの場となることから、一か月間の共同生活は甘酸っぱい思い出として一生残るものであった。
私が平和に満ちた自分の小学生時代の夏を思い出すきっかけとなったのは、ロシア版のFT新聞にあたるヴェドモスチ紙のウェブサイトに掲載された記事を目にしたことである。記事の見出しは「今年の夏、子供向けキャンプ施設の一部は避難民に開放される」だ。その記事によると、ウクライナのドンバス地域から避難した人たちには子供キャンプが仮住まいとして割り当てられている。避難民に割り振られたのはロシア全体で38,000もある子供向けのキャンプ施設のうちの124か所にすぎない。今年は5百万人の子供がサマーキャンプで夏休みを過ごすことになり、昨年と比較して30万人多い。昨年よりも多くの子供たちがサマーキャンプを利用できる背景には、1,000以上の新しいキャンプ施設ができたことや、新型コロナウイルス関連の制限が撤廃され既存のキャンプが100%の人数を受け入れることが再び可能になったことがある。ヴェドモスチ紙の記事は、下院教育委員会のヤナ・ラントラトワ第一副委員長が「ロシアの子供たちは絶対に(夏休みを)奪われることはないだろう」と語った、と締めくくっている。
しかし、はたしてそうだろうか。戦争を知らないで育った私は、今の子供たちにもイチゴの香り、新しい友達との出会いと時々淡いホームシックの涙がこぼれる退屈なほど平和なサマーキャンプを、何も心配せず過ごしてもらいたいと切に願っている。
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