履けないスニーカーとDX
2022年03月28日
近年スニーカーがブームだ。
一部の熱狂的なスニーカー好きの中では、スニーカーのリセール市場が賑わいをみせている。スニーカーの取引は、スニーカーショップや一般的なフリマアプリでも見られるが、スニーカーリセールを専門とするプラットフォームを好んで利用しているスニーカー好きは多い。
スニーカーのリセールプラットフォームは株式市場と良く似ている。モデル・サイズ別に売りと買いの情報が株式の板のように表示され、値決めされる。利用者は過去の取引推移や取引数などのデータから、買い時・売り時を見極める。
リセール市場では、ナイキやアディダスといったスポーツブランドのスニーカーが取引されているが、人気ブランドやアーティストとコラボレーションした希少性の高いスニーカーは定価の数倍〜数十倍で取引されることもよく見られる。
これだけ高額で取引されると偽造品も横行するが、これらのスニーカープラットフォームでは取引の間に専門家が入り、真贋鑑定が行われているため安心して利用できる。これがスニーカーのリセールプラットフォームが支持される理由の一つである。
最近では、スニーカーの細部を撮った写真データをアップロードすることでAIが鑑定してくれるサービスも始まっている。AIの鑑定精度はまだ発展途中であることは否めないが、今後データの蓄積によって精度は高まり、専門家の鑑定精度を超える可能性も高い。
リセール市場でスニーカーを買い漁るコレクターの中には、やっとの思いで入手した高額なスニーカーはもったいなくて履けない、なんてこともよくある話だ。
履けないスニーカーの究極がバーチャル・スニーカーだろう。バーチャル・スニーカーとは、ブロックチェーンの技術が用いられたNFT(Non-Fungible Token)と呼ばれる複製・偽造のできない本物の保証のついたデジタルデータである。1点もののバーチャル・スニーカーの中には百万円を超える価格で取引されているものもあり、NFTはスニーカーに限らずデジタルアート作品等でも高額取引が話題になっている。この盛り上がりに多くの企業も参戦しつつあり、昨年の12月にはナイキ社がバーチャル・スニーカーなどのNFTを制作するRTFKT(アーティファクト)を買収したことがリリースされた。(※1)
実物のスニーカーもバーチャル・スニーカーもAIやブロックチェーンなどの高度な技術によって本物であることが保証される時代になった。DXの流れがさらに加速していけば、希少で履けないスニーカーの入手自慢は、近い将来SNSからメタバース(仮想空間)へと舞台が変わる、かもしれない。
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コーポレート・アドバイザリー部
主任コンサルタント 内山 和紀
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