サステナビリティ、ダイバーシティは高校の教科書に学べ!

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2018年04月19日

  • 河口 真理子

4月は異動の季節。新たにCSRやESG担当になった方もいるだろう。このいわゆるサステナビリティ業界は、CSR、ESGをはじめPRICDPなど略語であふれており、初心者には迷路のような未知の世界。私は通常会話ができるようになるには3ヶ月かかると慰めているが、たまたまこの基本コンセプトを学ぶオススメの教材をみつけた。高校の家庭科の教科書である。

手元にある東京書籍の教科書『家庭基礎』(※1)には「自立・共生・創造」という副題がついている。どのような社会人を育成したいかという哲学を感じる。ページをめくると「家庭科(※2)を学んで持続可能な社会をつくる暮らしの担い手になろう」と3つの柱「家庭経済を営む」「社会を形成する」「環境を考える」がかかげられている。
第一章「自分らしい人生をつくる」では、ライフスタイルとして(1)人生90年時代を生きる、(2)一人で暮らす、(3)パートナーと生きる、(4)子どもと暮らす・親をささえる、(5)多様なライフスタイルを考える、となっており昭和のデファクト「家族=お父さんと専業主婦のお母さんと子どもたち」を前提とした家事テクニックを教える枠組みは消えたことがわかる。「男女で担う家庭生活」の項では、人生には職業労働と家庭労働もどちらも欠かせないこと、一方で家事時間や有名なM字カーブのグラフにより女性に家事が偏っている現実が示され、現在性的役割分担が見直されていることを教わる。この世代には社会人・経営層むけダイバーシティやワークライフバランスセミナーは必要ないのは明らかだ。

食生活の章では、日本の食品ロスが世界全体の食糧援助量の2倍にあたること、食品のトレーサビリティやフードマイレージ、カーボンフットプリントの用語解説があり、持続可能な食生活の在り方について考え、郷土料理の大切さも学び、実践することが奨励される。
衣生活の章では、衣料品の再利用・再資源化についての説明に加え、高校生が主体となったエシカルファッションショーの紹介も出てくる。住生活では日本の住宅寿命が先進諸国と比べて極端に低い事も教えられ、これからの住まい方として、シェアハウジングや、コーポラティブハウジングなどの解説がある。

消費生活と環境の章では循環型社会、低炭素社会、自然共生社会、持続可能な社会づくりの必要性が最初に記載されている。消費行動は個人のライフスタイルを決めるだけでなく、経済、社会、環境になどにも影響を及ぼすことが説明され、大量消費や、大量廃棄の問題点が指摘されて意思決定の際に本当に必要か、持っているものを有効利用できないか、消費行動を見直すことを勧められる。消費者が持続可能な社会の形成に積極的に参画する消費者市民社会の重要性が述べられ、グリーンコンシューマーやフェアトレード、CSR、の解説があり、「地球市民の一員として、地球規模で物事を考え、環境問題や社会課題の解決に向けて積極的に行動しよう」というメッセージで締めくくられる。

これを学んできた高校生大学生・新入社員たちに、恥ずかしくない大人でありたい。

(※1)平成29年度 改訂
(※2)太字は原文どおり

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