クリスマスより重要な3月8日の国際女性デー

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2018年03月14日

3月8日に祝う国際女性デー(International Women’s Day)をご存知であろうか?

日本では馴染みが薄いが、欧州では全ての女性を応援するかなり重要な記念日である。

20世紀初頭に行われた米国で女性参政権を要求したデモが起源とされている。女性の政治的自由や、これまで達成してきた成果をたたえる日であり、1975年には国連が正式に3月8日を記念日と定めている。英国よりも大陸欧州、特にイタリアやロシアで大規模にお祝いすることで有名である。

ロシアでは、この日を忘れて酒でも飲んで帰ろうものなら、当分の間、妻からの食事の用意はなくなるであろう(少なくともこの日は男性が食事を用意するものだ)。日本の感覚でいうと、女性にとってこの日はクリスマスより重要で、パートナーが他の友達と用事でもあろうものなら、そのままお別れになる可能性すらある(日本でクリスマスに恋人が不在のようなものだ)。英国ではイースター休暇の3週間前に行われる母の日(Mother’s Day)も重要だが、これとは全く別のイベントである。

この日ばかりは、全ての女性に対して、感謝と応援を義務付けられている。ロシアでは小学校低学年の男子ですら、クラスの女子全員に花を一輪ずつプレゼントすることも多いという(当日、ロシアは休日なので、前日が多いとのこと)。この日の重要性をあまり理解していなかった頃、ロシア人の知人男性が、職場の女性全員に花を渡していたことに驚いたことがある。当時は、“私はこの日を当然忘れていませんよ、全ての女性に感謝しています”という、鬼気迫る必死のアピールに笑いそうになったが、後日、この日の大変さを、身を持って知るようなった。とにかく、この日を忘れると社会からも女性軽視のレッテルを張られる可能性があるため、馴染みが薄い日本人男性は要注意である。

今年は、同日に開催された欧州中央銀行(ECB)の定例理事会後のドラギ総裁の記者会見で、女性記者から“本日は国際女性デーです。副総裁に就任予定のデ・ギンドス氏について尊重するものの、理事会メンバーに女性が少ないのは悲しい結果ではありませんか?”との質問があった。中銀経験のないスペイン人のデ・ギンドス氏の副総裁就任は、少し政治的な決定で、ドイツ人のワイトマン氏の次期ECB総裁就任の布石ともいわれている。ドラギ総裁が、(ドイツ人のワイトマン氏の就任で)ECBがタカ派に舵を切る可能性に対し反応すると思いきや、急に真剣な眼差しになり、詳細データを用いてECBが女性登用の取り組みに対して、これでもかと強調し始めた。それまで来年10月に迫る自身の任期満了に対し冗談を飛ばすなど、終始和やかな雰囲気の会見から、態度が一変したことを多くの人は気がついたはずである。

恐らく、イタリア人であるドラギ総裁は、国際女性デーという言葉に過剰に反応したに違いない。この質問に真摯に答えないと、家に帰った後、妻に何を言われるかわからないと思ったのだろう。私も当日、この会見を見ていたが、“イタリア人男性も大変そうだな”と妙に同情してしまった。我が家にはロシア人の妻と娘の2人の女性がいるため、プレゼントや花や食事の用意をどうするか何日も悩んでいたので、同総裁に親近感がわいたことは言うまでもない。

欧米では2月14日のバレンタインデーも男性から女性にチョコレートを渡す習慣のため、この時期はひたすら妻や娘にプレゼントを渡しているような気もする(今年の英国の母の日は3月11日でもあった)。外国人女性と結婚すると、記念日や家族の祝いの大変さに相当覚悟が必要であるが、この日の準備はやり過ぎぐらいが丁度良い印象だ。ただ働く女性を応援する意味でも、ぜひ日本でも浸透してほしい記念日である。

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菅野 泰夫
執筆者紹介

金融調査部

主席研究員 菅野 泰夫