アベノミクスの第4の矢

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2013年06月13日

  • 木村 浩一

アベノミクスの第1の矢、第2の矢は確実に効果を現わしているが、日本経済がデフレや失われた20年から抜け出すには、企業経営者、起業家に投資、起業を促すような、この機会を逃したら成功のチャンスを失ってしまうと思わせるガッツのある第3の矢(構造改革、規制緩和)が必要である。

日本がこれから長く続く超高齢社会を生き抜くには、更に、財政改革、社会保障制度改革となる第4の矢も重要である。

大和総研が2013年5月に発表した長期経済予測「超高齢日本の30年展望」によると、現在の財政制度、社会保障制度が継続すると、政府債務残高は2040年度末には名目ベースで約2700兆円、対GDP比で約280%に達し、日本の財政は実質的には破綻する、と予測している。

これに対し、社会保障制度を改革し、①年金支給開始年齢の65歳から69歳への引上げ、②年金に厳格なマクロ経済スライド制の導入、③70歳以上の医療費自己負担割合の1割から2割への引上げ、④後発医薬品の普及促進、などを実施する「改革シナリオ」の場合は、財政のシステム破綻を回避し、社会保障システムを維持できる、という予測結果となっている。しかし、政治的にタフな決断が必要なこの改革シナリオでも、政府の基礎的財政収支の黒字化は実現せず、政府債務残高の対GDP比は横ばいで推移するに止まる。超高齢社会の到来が、いかにわが国の財政にとって厳しい現実であるかを示している。

基礎的財政収支を構造的に均衡させ、政府債務残高を低下させる「超改革シナリオ」では、①現状60%程度の公的年金の所得代替率の40%への引下げ、②医療保険の自己負担割合を年齢を問わず3割とする、③介護保険における自己負担割合の1割から2割への引上げ、などの最大限の改革が必要となる。

つまり、世界最悪の財政状況を打開するには、日本が世界に誇れる制度である皆年金や皆保険は維持するものの、政府による社会保障支出はナショナルミニマムに限定せざるをえなくなるということだ。高齢化率が21%を超えると超高齢社会と言われるが、日本は2007年に超高齢社会を既に迎え、2024年には高齢比率が30%を上回っていく。わが国は、政権の強いリーダーシップにより第4の矢に早急に取り組むべきだろう。

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