エマージング諸国に投資するヘッジファンド

RSS

2011年03月01日

  • 森 祐司
エマージング諸国に投資するヘッジファンドの特徴のひとつに、株式市場指数のリターンとの連動性が高い(正の高い相関)ことがあげられる。その理由としては、以下のことが挙げられよう。すなわち、(1)多くのヘッジファンドは2003年頃から上昇トレンドにあった株式市場でのロング・ポジションを多くとることで、高いリターンを稼ぎやすかったこと、(2)ヘッジファンド市場の拡大により、参入するヘッジファンドが多くなり、規模の小さな市場や裁定取引でアルファを獲得することが難しくなる一方、(3)流動性の高い株式市場への投資は比較的行いやすかったためにヘッジファンドの株式市場に対するリスク・エクスポージャーが高くなったことである。さらに、東尾・寺田・清水 [2006]は、エマージング市場の特徴に由来する要因もあるという。それは、(4)「新興国市場は、先進国の市場と比べて市場規模が相対的に小さく流動性が低いこと」、(5)「デリバティブ市場が十分に発達していない、もしくは規制による投資制約が存在する場合が多い。このため、ショートポジションの造成やクロスボーダー取引を自由に行えない場合があること」から、株式市場でのロングポジションが高くなりがちだと指摘している。

2008年の金融危機後においては、そのような連動性の高まりは、さらに強くなっていることが窺われる(図表参照)。これは上記の要因のほかに、危機後の株式市場の上昇トレンドはエマージング諸国の方が先進国よりも顕著に高いために、ヘッジファンドはエマージング株式市場でのロング・ポジションをより強める傾向があったことも影響したのではないかと見られる。その結果、高かった連動性がさらに押し上げられたものと考えられる。

しかし、2010年のアジアに投資するヘッジファンドへの資金流入はあまり力強いものではなかった。2010年に入ってからの各月の資金フローはマイナスとプラスが混在し、直近においても10月には資金流入が膨らんだが、11月、12月と流入額が減少している。また、フローの規模は2007年と比較すると2010年は10分の1程度でしかない。

これには2009年の非常に高かったリターンから低下してきたことが背景にあると見られるが、投資家サイドでは、2011年のヘッジファンドには期待する向きが一部ではあるようだ。だが、連動性の高いエマージング株式市場全般で、先行き不透明感が増している状況も考えると、エマージング諸国に投資するヘッジファンドの成長にはまだ紆余曲折があるかもしれない。


(出所)HFRI、MSCIより大和総研資本市場調査部作成

(※注)HFRIの各指数の月次リターン(年率換算)とMSCIの各指数のリターンから、「危機前:2006年12月~2008年8月」と「危機後:2009年4月~2010年12月」の各21個のデータから求めた。

参考文献:東尾直人・寺田泰・清水季子[2006]、「ヘッジファンドの投資行動変化と金融市場への影響」『日銀レビュー』、日本銀行、2006-J-18、2006年11月
 

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。