欧州問題と株価

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2010年07月29日

  • 野間口 毅

前回(3/2付け)の当コラムで「目先の日経平均は4月にかけて11500円程度まで上昇するが、その後は調整する可能性がある」と記した。実際に日経平均は4/5に11339円の年初来高値を付けた後に反落したが、反落した理由は前回のコラムで記した「米国の利上げが現実味を帯びること」ではなく、ギリシャ問題の深刻化だった。

NYダウは4/26に11205ドルの昨年来高値をつけ、4/27~28に開かれたFOMCの声明文でFRBが景気判断を上方修正しながらも政策金利について「今後も長期間、異例の低水準とすることが正当化される可能性が高い」との表現を維持した時点では、NYダウは目先一段高の可能性すらあると予想した。

しかし、その後ギリシャ国内で財政緊縮策に反対するストライキが激化するなど欧州問題が深刻化し、日経平均やNYダウは値を下げ始めた。そして財政悪化の懸念がギリシャ以外の周辺国にも飛び火し始めたことから、日本がGWの連休中にEU各国の首脳は国際会議を開き、日本のGWが明けた5/10、IMFと共同で総額7500億ユーロの緊急融資枠の創設を決めた。しかし、結果的に日経平均やNYダウの下落は止まらず、7月にかけて下値を切り下げる展開となった。

なぜ巨額の緊急融資枠の創設が決まったにも関わらずに株安は続いたのか?その背景は、欧州問題の焦点が国の財政悪化から金融機関の資産悪化にシフトしたことである。そもそも7500億ユーロの緊急融資枠はEU各国の国債償還に対するセーフティネットであり、EU各国が発行した国債を保有する金融機関の資産悪化に対処するためのものではなかった。

6/21付けのニュースではECB政策委員会のメンバーでもあるフランス中銀のノワイエ総裁が「一部の市中銀行が資金調達難に直面している」との認識を示し、6/23には投資家のジョージ・ソロス氏が「現在の危機は財政危機というよりも銀行危機だ」と指摘した。

そして、6/22~23に開かれたFOMCの声明文でFRBは「主に海外の出来事を反映して経済成長を支える力が弱まった」との表現で、欧州の財政不安に伴う金融市場の混乱の影響を初めて指摘した。それからちょうど1カ月後の7/23、欧州域内の金融機関を対象とした資産査定(ストレステスト)の結果が発表された。その評価は4月以降連日で上昇し続けた欧州銀行間取引金利が下がるか否かで明らかになると見ている。

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