個人も企業も災害等予期せぬ事態への事前対策が重要

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2010年03月30日

  • 清水 克哉
個人も企業も、災害等予期せぬ事態への事前対策をしておくことが重要である。

先日、休日のニューヨークを暴風雨が襲った。複数の場所で倒木があり電線を切断したため、周辺の50万世帯以上が停電に見舞われた。筆者は幸いにして被害を免れたが、この状況から実感したのは、災害等への事前対策の重要性である。

後日被災者の体験談が新聞に掲載された。当初はすぐに電気が復旧すると見込んでいたがなかなか復旧せず、暖が取れず暗く寒い夜を数日間過ごしたという。結局、電気が回復するまで早い場所ですら3、4日間を要した。
この様な場合備蓄品の準備が必要だが、筆者の家には電池の切れた懐中電灯があるだけであった。事前対策ができていない典型例である。一方で、自家発電機を保有している被災者もいた。災害による公共インフラ(電気、ガス、水道)の喪失も考えた、定期的な事前対策の準備・見直しは個人でも必要だろう。

これを企業に当てはめるとどうだろうか。米国では、様々な状況(災害、テロ、疫病など)を想定したBCP(※1)の導入が多くの企業で進んでいる。米国大手企業を対象としたBCPに関する調査(※2)によると、約80%の企業がBCPを用意している。企業の視点からは、手順の確立、データバックアップセンターの設置、バックアップオフィスの設置、要員確保などがBCPの内容として挙げられる。社員の視点からは、在宅勤務の手法やオフィスまでの移動手段の確保などが挙げられる。米国大手企業の約75%は在宅勤務の環境又はバックアップオフィスなど有事の勤務場所を確保している。

米国の公共サービスは、サービス品質がとても低いと言われている。電車やバスはほとんど時刻通りに運行せずよく故障もする。今回電力がすぐに復旧しなかったのも同様の話にみえる。米国大手企業は公共サービスをさほど信頼しておらず、自己防衛のためにもBCPを積極的に策定し定期的な見直しを行っているのだと考えられる。

一方で日本では、大手企業の約13%がBCPを策定しており、約22%が策定の途中にあり(※3)、米国と比較してかなり低い数値である。その理由の一つとして、企業は日本の公共サービスに高い信頼を寄せていることがあると思われる。

しかしながら日本でも、公共サービスが信頼できない場合にもしばしば遭遇する。つい先日、架線障害により首都圏を走る電車に運休や数時間の遅れが生じた。その少し前には新幹線の部品の破損により運転が停止する事故が起きたばかりである。こういった場合、社員を在宅勤務させるなどBCPを活用することも考えられる。日本の企業は、様々な状況を想定したBCPを事前に策定しておくことが必要だろう。そしてBCPを臨機応変に使用することで、効率的な企業運営につなげることができるのではないだろうか。

(※1):事業継続計画(Business Continuity Plan)。企業が災害等による被害を受けた場合でも、重要な事業を中断せず継続するための基本計画。
(※2):AT&T社による調査結果(2009年6月)。
(※3):日本政策投資銀行による調査結果(2009年8月)。

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